更新日: 2022.01.01 厚生年金

65歳以上の遺族厚生年金は差額支給! どれくらい差し引かれる?

65歳以上の遺族厚生年金は差額支給! どれくらい差し引かれる?
会社員等で厚生年金加入期間のある人が亡くなった場合に、遺(のこ)された家族に支給される遺族厚生年金。原則、亡くなった人の老齢厚生年金(報酬比例部分)の4分の3の額とされています。
 
しかし、65歳以降に遺族厚生年金を受給する場合、自身の老齢基礎年金や老齢厚生年金と併せて受給できますが、遺族厚生年金は全額受け取れず調整されます。実際どの程度まで調整されるのでしょうか。
井内義典

執筆者:井内義典(いのうち よしのり)

1級ファイナンシャル・プランニング技能士、CFP(R)認定者、特定社会保険労務士、1級DCプランナー

専門は公的年金で、活動拠点は横浜。これまで公的年金についてのFP個別相談、金融機関での相談などに従事してきたほか、社労士向け・FP向け・地方自治体職員向けの教育研修や、専門誌等での執筆も行ってきています。

日本年金学会会員、㈱服部年金企画講師、FP相談ねっと認定FP(https://fpsdn.net/fp/yinouchi/)。

65歳以上は差額支給となる遺族厚生年金

老齢年金と遺族年金では年金の種類が異なるため、両者を一緒に受けることができず、どちらかを選択して受給することが原則です。
 
しかし、65歳以降については例外があり、遺族厚生年金は老齢基礎年金や老齢厚生年金と併せて受けることができます。ただし、遺族厚生年金についてはその全額は受給できず、自身の老齢厚生年金を差し引いた差額分の支給です(【図表1】)。
 
もし、本来の遺族厚生年金が100万円で、老齢厚生年金が30万円の場合であれば、100万円から30万円を差し引いた70万円が実際の遺族厚生年金として支給されます。
 

 
遺族厚生年金は、死亡した人の厚生年金加入記録から計算されます。会社員で厚生年金被保険者期間が長かった夫が亡くなって、その妻が遺族厚生年金を受ける場合、妻に厚生年金被保険者期間が短いと妻の老齢厚生年金も少ないため、結果、差し引かれる老齢厚生年金の額は少なくなり、遺族厚生年金の支給額は多くなります。
 
一方、夫婦共働きで、妻の老齢厚生年金が高くなると、その分差額支給の遺族厚生年金が少なくなります。
 
なお、妻の老齢厚生年金(報酬比例部分)に厚生年金基金からの基金代行部分がある場合は、基金代行部分も含めた額で遺族厚生年金が支給停止され、そして差額支給となります。
 

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在老停止される分も差し引かれる!

65歳以降働いていて厚生年金被保険者となり、もし給与等が高い場合は在職老齢年金制度によって老齢厚生年金が調整されます。月額の老齢厚生年金(報酬比例部分)、月額の給与(標準報酬月額)、直近1年の賞与(標準賞与額)の12分の1を合計して47万円(2021年度の場合)を超える場合に、その超えた額の2分の1ずつが支給停止される仕組みとなっています。
 
老齢厚生年金相当額の遺族厚生年金が支給停止となるのは、【図表1】のとおりですが、65歳以降遺族厚生年金の受給がある人の老齢厚生年金が、この在老の仕組みで支給停止される場合、在老支給停止分が受けられなくなったからといって、その分の遺族厚生年金が支給されるようになるわけではありません。在老支給停止分も含めた老齢厚生年金相当額の遺族厚生年金が引き続き支給停止となります(【図表2】)。
 

 
遺族厚生年金を受けている人で、65歳以降に働くこともあるかと考えられます。厚生年金被保険者となって給与がある程度高い場合については、老齢厚生年金が在老支給停止の対象になりえますので、その点も含めて受給合計額を確認しておきたいところです。
 
また、65歳以降厚生年金に加入すると、退職時(※2022年からは在職中も毎年)や70歳到達時に、老齢厚生年金の再計算がされます。再計算で老齢厚生年金が増えると、その分の遺族厚生年金が減ることにもなるため、その点もあらかじめ把握しておきたいところです。
 
執筆者:井内義典
1級ファイナンシャル・プランニング技能士、CFP(R)認定者、特定社会保険労務士、1級DCプランナー

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