【事例解説】厚生年金の納付保険料と受給年金額の総額はいくら?
配信日: 2022.01.18
今回は、厚生年金の納付保険料と受け取る年金の総額について、20歳から60歳まで被保険者であった方を例に解説します。
執筆者:辻章嗣(つじ のりつぐ)
ウィングFP相談室 代表
CFP(R)認定者、社会保険労務士
元航空自衛隊の戦闘機パイロット。在職中にCFP(R)、社会保険労務士の資格を取得。退官後は、保険会社で防衛省向けライフプラン・セミナー、社会保険労務士法人で介護離職防止セミナー等の講師を担当。現在は、独立系FP事務所「ウィングFP相談室」を開業し、「あなたの夢を実現し不安を軽減するための資金計画や家計の見直しをお手伝いする家計のホームドクター(R)」をモットーに個別相談やセミナー講師を務めている。
https://www.wing-fp.com/
厚生年金保険料を計算
厚生年金保険料
厚生年金の保険料は、毎月の給与(標準報酬月額)と賞与(標準賞与額)に共通の保険料率18.3%をかけて計算され、事業主と被保険者とが折半して負担します(※1)。
毎月の保険料額の計算で使用する標準報酬月額は、被保険者が受け取る給与(基本給のほか、残業手当や通勤手当などを含めた税引き前の給与)を一定の幅で区分した報酬月額によって決まり、令和2年9月分(令和2年10月分納付分)からは下表のように1等級(月額8万8000円)から32等級(65万円)に区分されています(※1、2)。
従って、報酬月額が63万5000円以上の方の保険料は、11万8950円で定額となりますが、年金額に反映される標準報酬額も65万円が上限となります。
一方、賞与(労働の対償として受けるもののうち、年3回以下の回数で支給されるもの)の保険料額の計算で使用する標準賞与額とは、税引き前の賞与の額から千円未満の端数を切り捨てた額に保険料率を掛けたもので、支給1回(同じ月に2回以上支給されたときは合算)につき、150万円が上限となります。
国民年金保険料
令和3年度の国民年金保険料は月額1万6610円ですが、厚生年金の被保険者(国民年金の第2号被保険者)と、その被扶養配偶者(国民年金の第3号被保険者)の国民年金保険料は、厚生年金保険料に含まれます(※3、4)。
年収から厚生年金保険料を概算
厚生年金の被保険者が、1年間に納める厚生年金保険料の総額(毎月の報酬額が65万円以下、1回の賞与額が150万円以下の場合)は、年収から以下のとおり概算することができます。
1年間に被保険者が支払う保険料の総額=年収(税引き前)×18.3%×1/2
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老齢年金額を計算
老齢厚生年金額
原則として65歳から受給する老齢厚生年金の額は、以下の計算式で求められます(※5)。
年金額=報酬比例年金額+経過的加算+加給年金額
報酬比例年金額は、被保険者期間の各月の標準報酬月額と標準賞与額の総額を、被保険者期間の月数で除して得た額である平均標準報酬額を用いて以下の式で算出されます。
報酬比例年金額=平均標準報酬額×5.481/1000(注1)×被保険者期間の月数
なお、平成15年3月までの被保険者期間の年金額の計算は、賞与を含まない標準報酬月額を用いて計算しますが、ここでは全期間の平均標準報酬額を基にした計算としています。
(注1)昭和21年4月1日以前に生まれた方の乗率は異なります。
経過的加算額は以下の式で計算されますが、20歳から60歳まで厚生年金に加入していた場合は540円となります。
経過的加算=1628円×1.00(注2)×被保険者期間の月数-78万900円×20歳以上60歳未満の厚生年金被保険者期間の月数(注3)/480月
(注2)昭和21年4月1日以前に生まれた方の乗率は異なります。
(注3)昭和36年4月以降の期間に限ります。
加給年金は、厚生年金の被保険者期間が20年以上の方が65歳に到達した時点で、その方に生計を維持されている65歳未満の配偶者、または条件を満たした子がいるときに加算されますが、ここでは説明を省略します。
老齢基礎年金額
20歳から60歳まで厚生年金の被保険者であった方が受給できる老齢基礎年金の額は、78万900円(令和3年度)になります(※6)。
納付保険料と受給年金額の総額を比較
20歳から60歳まで会社員として働いた方が、65歳から受給する老齢年金の総額を独身と夫婦のケースで比較します。保険料は年収を基に概算し、老齢厚生年金の報酬比例年金額の計算に用いる平均標準報酬額は平均年収を12月で除した値を用いています。
独身会社員のケース
20歳から60歳までの40年間、厚生年金の被保険者であった独身の会社員の平均年収を基に、厚生年金保険料の年額と65歳から受給できる老齢年金の総額を比較すると下表のようになります。
平均年収 | 厚生年金保険料 (年額) |
老齢年金の額(年額) | ||
---|---|---|---|---|
厚生年金額 | 基礎年金額 | 受取年金総額 | ||
360万円 | 32万9400円 | 78万9804円 | 78万900円 | 157万0704円 |
480万円 | 43万9200円 | 105万2892円 | 183万3792円 | |
600万円 | 54万9000円 | 131万5980円 | 209万6880円 | |
720万円 | 65万8800円 | 157万9068円 | 235万9968円 | |
840万円 | 76万8600円 | 184万2156円 | 262万3056円 | |
960万円 | 87万8400円 | 210万5244円 | 288万6144円 | |
1080万円 | 98万8200円 | 236万8332円 | 314万9232円 |
(※1~6を基に筆者作成)
会社員の世帯主と専業主婦(主夫)のケース
20歳から60歳までの40年間、厚生年金の被保険者であった会社員の平均年収を基に、厚生年金保険料の年額、会社員の世帯主と専業主婦(主夫)の夫婦2人が65歳から受給できる老齢年金の総額を比較した場合は下表のとおりです。
平均年収 | 厚生年金保険料 (年額) |
老齢年金の額(年額) | ||
---|---|---|---|---|
厚生年金額 | 基礎年金額 | 受取年金総額 | ||
360万円 | 32万9400円 | 78万9804円 | 156万1800円 | 235万1604円 |
480万円 | 43万9200円 | 105万2892円 | 261万4692円 | |
600万円 | 54万9000円 | 131万5980円 | 287万7780円 | |
720万円 | 65万8800円 | 157万9068円 | 314万0868円 | |
840万円 | 76万8600円 | 184万2156円 | 340万3956円 | |
960万円 | 87万8400円 | 210万5244円 | 366万7044円 | |
1080万円 | 98万8200円 | 236万8332円 | 393万0132円 |
(※1~6を基に筆者作成)
この場合、老齢基礎年金の額は夫婦2人分(78万900円×2)となります(配偶者は結婚まで国民年金保険料の未納期間がなかったものとして計算)。また、一定の条件の下で配偶者の老齢基礎年金に加算される振替加算は省略しています。
まとめ
厚生年金保険料は、毎月の給与と賞与に一定の保険料率を掛けて算出され、事業主と折半で支払います。一方、65歳から受給できる老齢年金の額は、被保険者期間の平均標準報酬額と月数から求められる老齢厚生年金と、定額の老齢基礎年金の合計になります。
例えば、20歳から60歳まで厚生年金の被保険者であった会社員の平均年収を600万円とした場合、今回の試算では平均で年額54万9000円の保険料を支払い、65歳から老齢厚生年金131万5980円と老齢基礎年金の合計で209万6880円の年金を受給することができます。
さらに、扶養している配偶者がいた場合は、年金額は配偶者の老齢基礎年金と合わせて287万7780円となります。
出典
(※1)日本年金機構 厚生年金保険の保険料
(※2)日本年金機構 令和2年9月分(10月納付分)からの厚生年金保険料額表(令和3年度版)
(※3)日本年金機構 公的年金の種類と加入する制度
(※4)日本年金機構 国民年金保険料
(※5)日本年金機構 老齢厚生年金(昭和16年4月2日以後に生まれた方)
(※6)日本年金機構 老齢基礎年金(昭和16年4月2日以後に生まれた方)
執筆者:辻章嗣
ウィングFP相談室 代表
CFP(R)認定者、社会保険労務士