更新日: 2022.01.18 国民年金
大学卒業後、「学生納付特例制度」で猶予されていた年金保険料は払ったほうがいい?
今回は「学生納付特例制度」について見ていき、その上で猶予された年金額を大学卒業後に支払うべきなのか、ということについて考えてみたいと思います。
執筆者:秋口千佳(あきぐちちか)
CFP@・1級ファイナンシャル・プランニング技能士・証券外務員2種・相続診断士
学生納付特例制度
学生納付特例制度は、学生が申請することにより、国民年金保険料の納付が猶予される制度です(※1)。
(1)対象者
大学(大学院)、短大、高等学校、高等専門学校、専修学校、各種学校に在学する学生等で、学生納付特例を受けようとする年度の前年の所得が基準以下の人または失業等の理由がある人です。
各種学校とは、学校教育法で規定されている修業年限が1年以上の課程のあるものをいい、一部の海外大学の日本分校も対象となります。
(2)所得の目安
128万円+{(扶養親族の数)×38万円}で計算した額以下である場合
(3)申請できる期間
過去期間は申請書が受理された月から2年1ヶ月前(すでに保険料が納付済みの月を除く)まで、将来期間は年度末まで申請できます。
ただし、1枚の申請書で申請できるのは、4月から次の年の3月までの12ヶ月間となりますので、必要に応じて年度ごとに申請書を提出してください。
詳しくは、年金事務所に確認をしてください。
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猶予された年金を納付するべき?
「将来、年金制度は破綻すると聞いているから、国民年金は支払わない」、「国民年金を支払うぐらいなら、保険会社で個人年金を掛ける」という人が時々いらっしゃいます。
しかしながら、国民年金保険料を納付するのは義務です。学生納付特例制度は、「義務ではあるものの学生であること等を総合的に考えて納付を猶予します」という制度であって、免除ではありません。そのため、猶予された年金は納付(追納)すべきです。
とは言え、納付するのと納付しないのとでは、将来的にもらえる年金額にどれぐらいの差が生じるのか、気になるかと思います。次にその差の具体的な金額を見てみましょう。
将来受給できる年金額の差は?
大学生が学生納付特例制度を使った場合、追納しないと将来もらえる年金額にどれぐらいの差が生じるのか、実際に計算してみましょう。ただし、今回は追納しなかった場合の差額を知りたいので、その他の免除や猶予の特例はないものとして計算しています。また令和3年度の老齢基礎年金の満額受給額は、78万900円です(※2)。
78万900円×(480月(20歳から60歳までの40年間)-24ヶ月)÷480月=74万1855円
将来受給できる年金額は74万1855円となり、満額との差額は78万900円-74万1855円=3万9045円です。
年間だとあまり影響がないように感じますが、人生100年時代と言われていることから、仮に65歳から90歳までの25年間受給すると考えると、3万9045円×25年間=97万6125円の差となります。
なお、2年間の国民年金保険料の納付金額は、令和3年度だと月額1万6610円なので、1万6610円×2年間(24ヶ月)=39万8640円となるため、トータルで考えると追納した方が得をする計算になります。さらに、納付すると所得控除を受けることができるので、所得税・住民税の節税にもつながります。
追納できる期間は10年間
老齢基礎年金等、満額の受給額を考えている人は、追納(※4)を利用して、猶予等された期間の国民年金保険料を納付することができます。ただし、追納できるのは、追納の承認を得た月からさかのぼって10年前の分までと決められています。
そのため、大学卒業後に追納を考える人は、この期間を過ぎないように意識しておきましょう。改めて、国民年金保険料を納めるのは義務です。
出典
(※1)日本年金機構:国民年金保険料 学生納付特例の申請について
(※2)日本年金機構:老齢基礎年金の受給要件・支給開始時期・計算方法
(※3)日本年金機構:老齢基礎年金(昭和16年4月2日以後に生まれた方)
(※4)日本年金機構:国民年金保険料の追納制度
執筆者:秋口千佳
CFP@・1級ファイナンシャル・プランニング技能士・証券外務員2種・相続診断士