更新日: 2022.01.21 その他年金

年金の受給額はどのように調整される? これから先はやはり少なくなる?

執筆者 : 柘植輝

年金の受給額はどのように調整される? これから先はやはり少なくなる?
公的年金は毎年の見直しにより支給額が調整されています。支給額の調整は一体どのような仕組みに基づいて行われているのでしょうか。
 
これから先、年金の支給額はやはり少なくなっていくのでしょうか。年金の調整の仕組みと今後の見通しについて考えてみます。
柘植輝

執筆者:柘植輝(つげ ひかる)

行政書士
 
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2級ファイナンシャルプランナー
大学在学中から行政書士、2級FP技能士、宅建士の資格を活かして活動を始める。
現在では行政書士・ファイナンシャルプランナーとして活躍する傍ら、フリーライターとして精力的に活動中。広範な知識をもとに市民法務から企業法務まで幅広く手掛ける。

年金給付額は毎年調整されている

日本の公的年金の給付額は賃金や物価の変動に応じて変動・調整される仕組みになっています。一方、年金の財源は私たち現役世代より集められた保険料が主なものになっています。
 
そのため、少子高齢化により現役世代が減り、高齢者世代が増えると、賃金や物価の変動のみでの調整では年金財政が悪化してしまいます。
 
それを予防するため、年金額を調整するマクロ経済スライドという仕組みが存在しています。マクロ経済スライドとは、賃金や物価の改定率を調整して緩やかに年金の給付水準を調整する仕組みです。
 
この仕組みに基づき、令和2年度においては6万5141円だった国民年金が令和3年度分から6万5075円と、0.1%ほど引き下げられたことは記憶に新しいでしょう。
 
同様に厚生年金は平均的な収入(賞与を含む月額換算で43.9万円)で40年間働いた夫と専業主婦というモデル世帯なら、2人分で22万724円だったものが22万496円に引き下げられました。
 

これから先の年金は少なくなっていく?

今後、年金の支給額はやはり少なくなっていくことが想定されます。それを考えるにあたり、参考となる指標に所得代替率があります。所得代替率とは、公的年金の支給額が現役世代の平均賃金と比べてどの程度の水準にあるかを示す指標です。
 
この所得代替率は2004年に公的年金の一定以上の水準を確保するために定められた指標であり、当時は将来にわたり50%以上の水準を確保すると定められていました。2019年においてはこの所得代替率が61.7%となっています。
 
しかし、少子化が進行した場合、現在のように年金の給付額の調整を続けていると、将来的には50%を下回ることになると国が試算しています。
 
50%を下回るのは早くても20年以上先とされていますが、既に試算している点から今後年金の給付額が上がることは考えづらく、むしろ下がっていくことになるだろうということが推測できます。
 

年金制度の破綻はあり得るのか

どのような状態を年金制度の破綻と定義するかにもよりますが、支給開始年齢や支給額が変わっても年金制度自体が消え去るという意味での破綻は起こり得ないでしょう。
 
実際、年金の支給額の減少以外でも、受給開始年齢が60歳から原則65歳となったり、2022年4月からは年金の受け取り開始時期を75歳まで繰り下げることができるようになるといった制度の変更が続いているため、年金制度の存在が消え去るような破綻よりも、制度の変更が進んでいくだろうと想定されます。
 
仮に制度そのものがなくなる事態が起こるとすれば、建前だけでも老後生活の保障といえるだけの別制度が代替案として生まれたときではないでしょうか。
 

年金支給額は細かに調整されており、今後は減少が予想される

年金支給額は物価や賃金、マクロ経済スライドなどの社会情勢を反映させ、財源とのバランスを考えて調整されています。それ故、年金制度がなくなるという意味での破綻は考えにくいですが、今後、長期的には受給できる年金額の減少が想定されます。
 
私たち現役世代はこの点について重く受け止め、早い段階から老後の生活について考えていく必要があるでしょう。
 
出典
厚生労働省 公的年金財政状況報告-令和元(2019)年度- 令和元(2019)年財政検証に基づく公的年金制度の財政検証(ピアレビュー)第1章(案)
日本年金機構 令和2年4月分からの年金額等について
日本年金機構 令和3年4月分からの年金額等について
厚生労働省 令和3年度の年金額改定についてお知らせします
 
執筆者:柘植輝
行政書士

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