更新日: 2022.02.09 その他年金
離婚時の年金分割の「みなし被保険者期間」とは?(1)
年金分割によって、どのような取り扱いになるのか、あらかじめ確認しておきたいところです。全2回で取り上げます。
執筆者:井内義典(いのうち よしのり)
1級ファイナンシャル・プランニング技能士、CFP(R)認定者、特定社会保険労務士、1級DCプランナー
専門は公的年金で、活動拠点は横浜。これまで公的年金についてのFP個別相談、金融機関での相談などに従事してきたほか、社労士向け・FP向け・地方自治体職員向けの教育研修や、専門誌等での執筆も行ってきています。
日本年金学会会員、㈱服部年金企画講師、FP相談ねっと認定FP(https://fpsdn.net/fp/yinouchi/)。
離婚時の年金分割制度
離婚時の年金分割は、夫婦が離婚した場合に、婚姻期間中の夫婦の厚生年金加入記録を分割します。
離婚した当事者(元夫・元妻)の合意(合意が整わない場合は家庭裁判所の審判等)によって分割する合意分割があり、当事者の厚生年金加入による標準報酬(標準報酬月額・標準賞与額)を合計した上で、標準報酬の多いほう(第1号改定者)から少ないほう(第2号改定者)へと分割をすることになります。
夫が妻より標準報酬が高ければ、夫が分割する側、妻が分割を受ける側となり、夫から妻へ分割します(【図表1】)。50%を上限に分割となります。
また、2008年4月以降の第3号被保険者期間がある場合には、合意なく第3号被保険者に50%の分割を行える3号分割があります(2008年3月以前の第3号被保険者期間は合意分割の対象)。
ただし、分割する側が障害厚生年金の受給権者である場合、当該年金の計算の基礎となった厚生年金加入記録について、3号分割を受けることはできません。
いずれも、離婚後2年以内に標準報酬改定請求を行うことで分割されます。
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年金分割における「みなし被保険者期間」の意味
その分割を受けた期間の取り扱いですが、合意分割を受け、かつ、分割を受けた人の自らの厚生年金被保険者期間でない期間は「離婚時みなし被保険者期間」となり、3号分割を受けた期間は「被扶養配偶者みなし被保険者期間」となります(【図表2】)。
婚姻期間中、夫婦ともに厚生年金被保険者となっている間は、それぞれ自身で掛けた厚生年金被保険者期間があるため、みなし被保険者期間ではありません。
将来受給する老齢厚生年金(報酬比例部分)は、標準報酬、厚生年金被保険者月数といった厚生年金加入記録を元に計算されます。
年金分割があった場合、分割を受ける側(【図表2】の妻(夫))の自ら厚生年金に加入した際の標準報酬や厚生年金被保険者期間だけでなく、分割を受けた標準報酬やみなし被保険者期間もその計算の対象となります。
その結果、分割を受ける側からしてみれば、分割を受ける前と比べ、標準報酬や厚生年金被保険者期間が増える計算になるため、老齢厚生年金(報酬比例部分)の額が増えます。
逆に分割した側(【図表2】の夫(妻))は計算の元となる標準報酬が減りますので、その結果、受給する年金が減ります。もし、すでに受給中の場合に離婚して年金分割を行った場合については、分割をした翌月分から、分割が反映された年金額へと改定されます。
以上のように、年金分割を受けた場合はみなし被保険者期間が老齢厚生年金(報酬比例部分)の計算の対象となる、という点がこの制度のポイントとなるでしょう。
執筆者:井内義典
1級ファイナンシャル・プランニング技能士、CFP(R)認定者、特定社会保険労務士、1級DCプランナー