更新日: 2022.02.10 その他年金

障害年金のウソ? ホント?(11)「障害年金には家族手当がある?」

執筆者 : 和田隆

障害年金のウソ? ホント?(11)「障害年金には家族手当がある?」
障害年金の相談を受けていると、ちょっとした思い違いをしている人や、誤ったうわさ話を信じ込んでいる人が少なくないことに気づきます。そうした人たちは、後になって「しまった!」となりかねません。
 
そんなことにならないために、あらかじめ正しい知識を身に付けておきましょう。第11回は「障害年金には家族手当がある?」です。
和田隆

執筆者:和田隆(わだ たかし)

ファイナンシャル・プランナー(AFP)、特定社会保険労務士、社会福祉士

新聞社を定年退職後、社会保険労務士事務所「かもめ社労士事務所」を開業しました。障害年金の請求支援を中心に取り組んでいます。NPO法人障害年金支援ネットワーク会員です。

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「配偶者の加給年金」と「子の加算」のことだった

障害厚生年金を受給しているA子さんが、同じ職場で同様に障害厚生年金を受給しながら働いているB子さんと話をしていて、B子さんの受給額が自身よりずいぶん多いことに気づきました。
 
2人の障害等級は、ともに2級。B子さんは「私には家族手当みたいなものがあるから」と言ったそうです。A子さんにも家族はいるので、なんとも不思議に思ったそうで、質問がありました。
 
話をうかがうと、どうやら、その家族手当というのは、いわゆる「配偶者の加給年金」(「配偶者加給年金額」とも言います)と「子の加算」のことのようでした。2級以上の障害年金にはこうした加算があります。障害厚生年金の場合は「配偶者の加給年金」、障害基礎年金の場合は「子の加算」です。
 

加算の条件は……

加算には、次のような条件があります。

▽「配偶者の加給年金」は、配偶者が65歳未満であること。ただし、1926年4月1日以前に生まれた配偶者には年齢制限はない。配偶者には事実婚の場合も含む。
 
また、配偶者が、老齢厚生年金(被保険者期間が20年以上または共済組合等の加入期間を除いた期間が40歳(女性の場合は35歳)以降15年以上の場合に限る)、退職共済年金(組合員期間20年以上)または障害年金を受けられる間は、加算が停止される。
 
▽「子の加算」は、子が18歳になった後の最初の3月末まで。ただし、子が障害等級2級以上の障害の状態にある場合は、20歳未満であること。子は養子縁組をした子でもよい。児童扶養手当とは調整がある。
 
▽配偶者、子はどちらも、障害年金の受給者によって生計維持されていること。生計維持の条件は、配偶者、子の前年の収入が850万円未満であること、など。

 

加算の有無で年金額に大きな差額

それぞれの加算額は、2021年度の場合、「配偶者の加給年金」が22万4700円、「子の加算」は、加算対象の子の1人目と2人目がそれぞれ22万4700円、3人目以降が7万4900円です。
 
A子さんは、老齢年金を受給中の夫、および、20歳以上の子2人と同居しており、B子さんは、年金を受給していない夫、および、18歳未満の子2人と同居しています。このため、「配偶者の加給年金」と「子の加算」で、2人の年金額に年間67万円余の差額が生じたのでした。
 

加算があるのは配偶者と子のみ

こうした加算があるのは、配偶者と子だけです。たとえ両親や兄弟、孫たちと同居し、扶養していても、加算の対象にはなりません。また、障害基礎年金だけを受給している場合は、「子の加算」のみで、「配偶者の加給年金」はありませんし、障害厚生年金の3級を受給している場合は、「配偶者の加給年金」も「子の加算」もありません。
 

受給権取得後でも加算の対象になる

なお、「配偶者の加給年金」も「子の加算」も2011年4月以降は、追加が認められるようになりました。障害年金を受給している人が、結婚をしたり、子供が生まれたりした場合は、届け出をすれば、追加してもらえます。
 
それまでは、受給権を得た時点で配偶者や子がいなければ、加算対象にならなかったのですが、制度が改められたのです。2011年4月以前から障害年金を受給している人は、きちんと届け出が行われているか点検しましょう。
 
「障害年金には家族手当がある」の「ウソ・ホント」は、名称が違っていますが、加算に一定の条件があるけれど、内容的には「ホント」でした。
 
※2022/2/10 内容を一部修正させていただきました。
 
執筆者:和田隆
ファイナンシャル・プランナー(AFP)、特定社会保険労務士、社会福祉士

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