障害年金のウソ? ホント?(12)「障害年金と生活保護を両方もらえる?」
配信日: 2022.02.22
そんなことにならないために、あらかじめ正しい知識を身に付けておきましょう。第12回は「障害年金と生活保護を両方もらえる?」です。
執筆者:和田隆(わだ たかし)
ファイナンシャル・プランナー(AFP)、特定社会保険労務士、社会福祉士
新聞社を定年退職後、社会保険労務士事務所「かもめ社労士事務所」を開業しました。障害年金の請求支援を中心に取り組んでいます。NPO法人障害年金支援ネットワーク会員です。
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目次
両方をまるまる受給したいようだが……
生活保護を受給中の人から先日、「障害年金も受給できないだろうか。両方を受給できるとありがたいのだが……」と相談を受けました。
聞けば、傷病は障害等級に該当しそうな症状でした。ところが、よく聞いてみると、この人は生活保護と障害年金を両方ともまるまる受給したいようでした。それは不可能です。事情を説明して、納得していただきました。
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「他法他施策の優先」という原則がある
生活保護は、傷病をはじめ、失業や離婚、高齢などで収入が減少し、生活に困っている人が受給できます。しかし、公費からの支給ですので、受給の条件は厳格に定められています。
その1つが、他の法律などによって受給できるものがある場合は、その受給を優先させる趣旨の「他法他施策の優先」という原則です。
障害年金は、国民年金法や厚生年金保険法などに基づいて受給しますので、この原則が適用され、障害年金として受給した金額だけ、生活保護の扶助費から差し引かれるわけです。先の相談者が希望するように、両方をまるまる受給することはできません。
障害者加算で増額される
それでは、障害年金を受給しても、何の恩恵もないのかというと、そんなことはありません。障害者加算という制度があります。
これは、障害を持っている生活保護受給者を支援する目的で設けられているもので、加算額は、障害の軽重と居住地によって定められています。2021年度の金額は次の表(*)のとおりです。
(筆者作成)
1級地、2級地というのは、平たくいえば、大都会か地方都市か、あるいは町村部かということで、居住地の生活費を反映させた区分です。この表では、身体障害者障害程度等級表だけが取り上げられていますが、精神疾患や内部疾患の障害を持っている場合も、同様に加算を受けることができます。
なお、障害者加算は、障害年金を受給していることだけが条件ではありませんが、障害年金を受給していると、それだけ障害の程度を表しやすいという利点があります。
障害年金を受給する意味は、ほかにもある
生活保護を受給している人が障害年金を受給する意味は、ほかにもあります。障害年金の受給額だけ、生活保護の扶助費が減ることで、地元自治体の負担を軽減できますし、その結果として、自身が受けていた扶助費を同じ自治体の他の人に回せることにもなります。
以前に相談を受けた人の中に「障害年金を受給できれば、それを足がかりにして、頑張ってパート勤務などにも就きたい。やがては、生活保護を返上したい」という人がいました。障害年金の受給が新たなモチベーションを生み出すことを示す一例だと思います。
委託料や報酬の取り扱いは、自治体によって異なる
ところで、障害年金の請求に際しては、効率の良い書類の集め方や状況が伝わりやすい文章の書き方などがあり、その点で、手続きを私たち社会保険労務士に委託していただく意味があります。しかし、委託は基本的に有料です。
また、受給時の報酬も必要です。委託料や報酬の面倒をみてくれるかどうかは、自治体によって異なります。委託を検討する場合は、生活保護の担当者にご相談ください。
(*)厚生労働省「生活保護制度における生活扶助基準額の算出方法」(令和3年4月)から一部を抽出
執筆者:和田隆
ファイナンシャル・プランナー(AFP)、特定社会保険労務士、社会福祉士