更新日: 2022.03.09 国民年金

「年金事務所に行ってきました」 1年間の繰下げ受給でどうなった?

「年金事務所に行ってきました」 1年間の繰下げ受給でどうなった?
元気なシニア世代が増え、働き方に変化がみられます。それに伴い、老後資金の根幹となる公的年金の受け取り方も4月から選択肢が広がります。
 
繰下げ受給の実例が、もらい方のヒントになるかもしれません。
宮﨑真紀子

執筆者:宮﨑真紀子(みやざき まきこ)

ファイナンシャルプランナーCFP(R)認定者、相続診断士

大阪府出身。同志社大学経済学部卒業後、5年間繊維メーカーに勤務。
その後、派遣社員として数社の金融機関を経てFPとして独立。
大きな心配事はもちろん、ちょっとした不安でも「お金」に関することは相談しづらい・・・。
そんな時気軽に相談できる存在でありたい~というポリシーのもと、
個別相談・セミナー講師・執筆活動を展開中。
新聞・テレビ等のメディアにもフィールドを広げている。
ライフプランに応じた家計のスリム化・健全化を通じて、夢を形にするお手伝いを目指しています。

年金の繰り下げで受給額はどう変わる?

老齢年金の受給は原則65歳なので、それに準じた情報が誕生月に「ねんきん定期便」として送られてきます。
 
ただし、受給時期は選ぶことができます。65歳よりも早く受け取ることを「繰り上げ」、逆に受取時期を延ばすことを「繰り下げ」と呼びます。受給額は繰り上げした場合は1ヶ月あり0.5%減額、繰り下げた場合は1ヶ月あり0.7%増額されます。
 
繰り下げを検討している人もいらっしゃるでしょう。この繰り下げ制度、4月からはこれまでの70歳までの期限が75歳に引き上げられます。
 
セカンドライフの過ごし方は人によりさまざま、なかには「元気なうちは、なるべく長く働きたい」という方もいらっしゃると思いますので、年金の受け取り方の選択肢が増えることはよいことでしょう。
 
65歳時点での年金支給率を100%とすると、70歳で142% 75歳では184%となります。
 
150%、つまり受給額が1.5倍になったら、生活資金に余裕を持てるかもしれません。ですが税金や健康保険料などは収入によって変わってきますので、単純には増えないことには注意が必要です。
 
ここで筆者のもとに寄せられた相談の実例をご紹介します。
 
Aさんは1月に66歳になり、それを機に年金事務所で相談することにしました。
 
Aさんは、昨年6月に会社は退職しています。選択肢としては、(1)1年繰り下げによる増額請求、(2)増額のない年金をさかのぼって受給、(3)さらに繰り下げて受給、が考えられます。
 
まず1年繰り下げることにより、受給額がどのようになっているかを確認しました。
 
老齢基礎年金は、65歳時点の定額73万6974円×0.7%×12ヶ月=6万1906円が加算されています。Aさんの場合は、20歳からではなく就職後に加入していますので、定額部分も満額の78万900 円よりも少なくなっています(2022年1月時点)。
 
厚生年金の場合は「65歳以降に在職し繰り下げ請求する場合は、在職老齢年金の支給停止後の年金額に対して増額率が適用される」という決まりがあります。
 
在職しながら老齢年金を受給する場合、総報酬月額相当額と年金の基本月額の合計が47万円を超えると、計算にのっとった金額が支給停止されます。
 
Aさんの場合も、1年繰り下げても思ったより金額が増えなかったのは、退職までは停止部分が大きかったことが影響しています。
 
【図表1】


 

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受給方法は千差万別

実は今回、年金の手続きをするのに必要な書類である戸籍謄本の取り寄せが、相談日に間に合いませんでした。
 
年金は後払いなので、1月中に請求書類が整った場合、2月と3月の2ヶ月分が4月15日に支給されます。もしさらに1ヶ月繰り下げたらどうなるのかも試算してもらいました。
 
老齢基礎年金部分は5159円 老齢厚生年金部分は1万3333円 合計で約1万8500円増えます。これは年額なので月額1500円ほど増えることになります。
 
65歳から受給するのと繰り下げて受給するのとのでは、総受給額の分岐点は何歳なのか?  という議論があります。これも試算してもらいました。
 
65歳と66歳で比較した場合、総受給額が逆転するのは78歳の時、66歳1ヶ月に繰り下げると、逆転時期が79歳7月だそうです。
 
受給開始を別々にすることもできますが、これは老齢基礎年金・老齢厚生年金のどちらも同じように繰り下げた場合です。
 
働くことが生きがいで、年齢にとらわれず長く働くという生き方がある一方で、現役時代にできなかった趣味に没頭するなど、それぞれのライフプランがあります。
 
年金受給を繰り下げて受給額を増やすことで、ゆとりある老後を計画している人もいると思います。
 
繰り下げれば、その分がそっくりそのまま月数に応じた増え方をすると思いがちですが、働き方によっては、Aさんのように繰り下げ効果が違ってくることもあります。
 
働きながら年金受給する場合だけでなく、繰り下げ受給する場合も注意が必要です。受給方法は一度決めると途中で変更できません、ここも要注意点です。
 
ねんきんネット(※)などを利用して、事前にいろいろなパターンを試算することがお勧めです。
 
出典
(※)日本年金機構
 
執筆者:宮﨑真紀子
ファイナンシャルプランナーCFP(R)認定者、相続診断士

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