更新日: 2022.03.10 年金

年金大改正のポイントは?どんなところに影響がある?

執筆者 : 新美昌也

年金大改正のポイントは?どんなところに影響がある?
今回の改正には、次の内容が盛り込まれています。
 
(1)厚生年金保険・健康保険の適用拡大
(2)在職中の年金受給の在り方の見直し(在職老齢年金制度の見直し、在職定時改定の導入)
(3)受給開始時期の選択肢の拡大
(4)確定拠出年金の加入可能要件の見直し 等
 
改正の主なポイントを解説します。
 
新美昌也

執筆者:新美昌也(にいみ まさや)

ファイナンシャル・プランナー。

ライフプラン・キャッシュフロー分析に基づいた家計相談を得意とする。法人営業をしていた経験から経営者からの相談が多い。教育資金、住宅購入、年金、資産運用、保険、離婚のお金などをテーマとしたセミナーや個別相談も多数実施している。教育資金をテーマにした講演は延べ800校以上の高校で実施。
また、保険や介護のお金に詳しいファイナンシャル・プランナーとしてテレビや新聞、雑誌の取材にも多数協力している。共著に「これで安心!入院・介護のお金」(技術評論社)がある。
http://fp-trc.com/

「厚生年金」「健康保険」の適用範囲の拡大

これまで、アルバイトやパートなどの短期間労働者に対して、厚生年金保険・健康保険の加入が義務づけられている企業の規模要件は「従業員501人以上」の企業となっています。
 
この規模要件が段階的に縮小され、2022年10月には「従業員101人以上」、2024年10月には「従業員51人以上」の企業とし、適用範囲が拡大されます。
 
また、「雇用期間が1年以上見込まれること」という勤務期間要件は、2022年10月以降、実務上の取り扱いの現状も踏まえて撤廃しています。これは、フルタイム等で働く被保険者と同様のもので、2ヶ月超という要件に変わっています。
 
そのほかの労働時間要件(週20時間以上)、賃金要件(月8.8万円以上)、学生除外要件については変更ありません。また、5人以上の個人事業所が強制的に対象となる適用業種に、弁護士・税理士・社会保険労務士などの法律・会計事務を取り扱う士業も追加されることになりました。
 

「厚生年金」「健康保険」の適用範囲の拡大の影響

まず、厚生年金保険への加入により、65歳以降、基礎年金(国民年金)に上乗せして、報酬比例の年金(厚生年金)を終身で受け取ることが可能になります。
 
加えて、障害がある状態になった場合には、障害基礎年金に加えるというかたちで障害厚生年金を、死亡した場合には、遺族の方は遺族厚生年金を受け取ることが可能です。
 
また、健康保険に加入することにより、けがや出産によって仕事を休んだ場合に賃金の3分の2程度の給付を受け取ることができます(傷病手当金・出産手当金)。国民健康保険では任意給付とされているので、この給付は一般的にありません。
 
運用拡大の対象となるとすれば、月収8.8万円以上(年収換算で106万円)で、健康保険の扶養外となります。これは、年収130万円より低い基準となります。
 

在職老齢年金制度の見直し

在職老齢年金制度とは、60歳以降に働いて賃金をもらいながら、老齢厚生年金も受け取る場合、賃金と年金月額の合計額が一定上(基準額)なら、年金の一部または全額が支給停止となる制度です。
 
これまでは、60~64歳の在職老齢年金制度における基準額は28万円でしたが、2022年4月以降は65歳以上と同じ47万円になります。なお、男性は2025年度まで、女性は2030年度までの経過的な制度です。
 

在職定時改定の導入

また、この改正と合わせて2022年4月から、「在職定時改定」が新設されます。これまでは、70歳到達時か退職により厚生年金被保険者の資格を喪失するまでは、老齢厚生年金の金額は改定はされずそのままとなっていました。
 
「在職定時改定」の新設により、老齢厚生年金の受給者で、65歳以上で在職中の場合、年金額を毎年1回10月に改定し、それまでに納めた保険料が年金額に反映されるようになります。
 
就労を続けていくことの効果は、この「在職定時改定」が導入されたことにより、退職する前、早期に年金額に反映されるようになりました。年金を受け取りながら働きたいと思う方、つまり在職受給者にとって、経済的な基盤が充実するよう図られています。
 

年金の受給開始時期の選択肢の拡大

公的年金の受給開始年齢は原則65歳ですが、現行制度では、60歳から70歳の間で自由に選ぶことができます。
 
65歳より早く受給開始した場合(繰上げ受給)は、年金額は1ヶ月あたり0.5%減額(最大30%減)されます。65歳より後に受給開始した場合(繰下げ受給)は、年金額は1ヶ月あたり0.7%増額(最大42%増)されます。
 
今回の改正では、受給開始時期の繰り上げ上限が、70歳から75歳まで引き上げられることになりました(受給開始時期を60歳から75歳の間で選択可能)。
 
これに伴い、繰り上げ減額率はひと月あたり0.4%減額(最大24%減)に変更されます。繰り下げ増額率はひと月あたり0.7%増額と変更ありませんが、75歳まで繰り下げれば最大84%増になります。2022年4月施行時点で70歳未満の者について適用されます。
 

確定拠出年金(DC)の加入可能年齢の引き上げ

企業が従業員のために実施する退職給付制度である企業型DCについては、これまで厚生年金被保険者のうち、65歳未満を加入者とすることになっていました(60歳以降は60歳前と同一事業所で継続して使用される者に限られる)が、企業の高齢者雇用の状況に合わせて、70歳未満まで加入できるようになりました(2022年5月施行)。
 
受給開始時期も年金の受給開始時期の選択肢の拡大に合わせ、上限年齢を75歳に引き上げられます(2022年4月施行)。
 
個人型確定拠出年金(iDeCo)については、これまで、国民年金被保険者であることに加えて60歳未満という要件がありましたが、国民年金被保険者であれば加入が可能となります(2022年5月施行)。こちらも受給開始時期が75歳に引き上げられます(2022年4月施行)。
 
出典
厚生労働省 年金制度改正法(令和2年法律第40号)が成立しました
 
執筆者:新美昌也
ファイナンシャル・プランナー。

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