更新日: 2022.03.14 その他年金
障害年金のウソ? ホント?(13)「障害者特例は、障害者に優しい?」
そんなことにならないために、あらかじめ正しい知識を身に付けておきましょう。第13回は「障害者特例は、障害者に優しい?」です。
執筆者:和田隆(わだ たかし)
ファイナンシャル・プランナー(AFP)、特定社会保険労務士、社会福祉士
新聞社を定年退職後、社会保険労務士事務所「かもめ社労士事務所」を開業しました。障害年金の請求支援を中心に取り組んでいます。NPO法人障害年金支援ネットワーク会員です。
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目次
定額部分などを受給できる特典がある
障害者特例というのは、「特別支給の老齢厚生年金」(以下、「特老厚」と表記)の一形態です。
特老厚は、厚生年金保険の被保険者歴のある人が、一定の条件のもと、老齢年金受給開始年齢の65歳になる前に受給できる年金です。
現在は、年金制度を2階建て住宅に例えると「2階」に当たる報酬比例部分を受給できますが、障害等級3級以上の障害者であれば、「1階」に当たる定額部分なども受給できる特典が設けられています。この特典が障害者特例なのです。
障害年金に似たところがありますが、障害年金よりも受給条件が緩く、それだけ、障害者に優しいものになっています。
ただ、制度はかなり複雑ですので、順を追って説明しましょう(共済年金の場合は、条件が若干異なります。各共済組合におたずねください)。
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特老厚の該当者は年々減っている
最初に、特老厚の受給条件は、次のとおりです。【1】~【4】をすべて満たす必要があります。
【1】男性は1961年4月1日以前生まれ、女性は1966年4月1日以前生まれ
【2】60~64歳(受給開始時期は、生年月日などによって異なる)
【3】厚生年金保険の加入歴が1年以上ある
【4】老齢基礎年金の受給資格期間を満たしている
上記の【3】と【4】は、厚生年金保険に長期間加入して就労していた人なら容易に満たすでしょうが、【1】と【2】は、該当者が年々減っています。やがてはゼロになります。
障害者特例の受給条件は……
次に、障害者特例の受給には、次の条件もすべて満たす必要があります。
【1】障害等級が1~3級の障害状態にある
【2】初診日から1年6ヶ月経過しているか症状固定が認められる
【3】請求時に厚生年金保険の被保険者ではない
障害年金より緩やかな点は……
特老厚は、老齢厚生年金の報酬比例部分を受給できますが、障害者特例は、これに加えて、「厚生年金保険の加入期間に応じた定額部分」と配偶者加給年金額を受給できます。障害厚生年金とよく似た内容です。
しかし、受給要件は、障害年金よりずっと緩やかです。次のような点です。
【1】初診日の加入要件や保険料納付要件が問われない(障害年金は、初診日の加入要件や保険料納付要件が厳密に問われる)
【2】3級の障害状態でも支給される(障害基礎年金の場合、3級の障害状態なら不支給)
【3】障害年金が支給停止になっていても支給される(障害年金には、「20歳前障害の所得制限」などによる支給停止がある)
【4】第三者行為や労働災害による障害の場合も支給調整がない(障害年金は、支給調整がある)
【5】障害者特例の受給が始まると、更新手続きは不要(たいていの障害年金は、更新手続きが必要)
しっかり認識しておかなければならないことがある
障害年金の場合は、保険料の納付要件を満たせないとか、障害等級が初診日に加入していた年金制度では該当しないとか、さまざまな理由で受給できないことがあります。
その点を障害者特例は、すんなりと受け入れてくれるわけです。ただし、次の点は、しっかり認識しておかなければなりません。
【1】老齢年金の一部なので課税される(障害年金は、非課税)
【2】支給される定額部分は、厚生年金保険の加入期間に応じた分だけなので、人によっては少ない場合がある(障害年金の場合は、満額)
【3】支給開始は、請求月の翌月分から(障害年金の受給権を取得していた場合は、条件により、遡及がある)
【4】障害等級3級程度で受給中に重症化して2級以上に該当した場合は、自主的に障害年金に切り替えるなどの手続きが必要(障害年金は、たいていの場合、更新手続きがあるために重症化を認識しやすい)
該当者は、早めに年金事務所などに相談しよう
障害者特例に該当する人は、早めに年金事務所などにご相談ください。
「障害者特例という障害者に優しい制度がある?」の「ウソ・ホント」は「ホント」といえるでしょう。
※2022/3/14 内容を一部修正させていただきました。
執筆者:和田隆
ファイナンシャル・プランナー(AFP)、特定社会保険労務士、社会福祉士