更新日: 2022.03.23 国民年金
親と同居していますが、国民年金の猶予は認められますか?
今回は、国民年金保険料の納付猶予制度について、免除制度との違いや、納付猶予が認められる条件などを解説します。
執筆者:辻章嗣(つじ のりつぐ)
ウィングFP相談室 代表
CFP(R)認定者、社会保険労務士
元航空自衛隊の戦闘機パイロット。在職中にCFP(R)、社会保険労務士の資格を取得。退官後は、保険会社で防衛省向けライフプラン・セミナー、社会保険労務士法人で介護離職防止セミナー等の講師を担当。現在は、独立系FP事務所「ウィングFP相談室」を開業し、「あなたの夢を実現し不安を軽減するための資金計画や家計の見直しをお手伝いする家計のホームドクター(R)」をモットーに個別相談やセミナー講師を務めている。
https://www.wing-fp.com/
国民年金保険料の納付猶予制度と免除制度の違い
1. 納付猶予制度とは
本人・配偶者の前年所得(1月から6月の申請の場合は前々年所得)が一定額以下の20歳から50歳未満の方が、申請後、承認された場合に国民年金保険料の納付が猶予される制度です(※1)。
2. 学生納付特例制度とは
大学、短期大学、高等学校、専修学校および各種学校などに在籍する20歳以上の学生は、申請により在学中の国民年金保険料の納付が猶予される学生納付特例制度を利用できます(※2、3)。
3. 免除制度とは
所得が少なく、本人・世帯主・配偶者の前年所得(1月から6月の申請の場合は前々年所得)が一定額以下の場合や、失業などによって国民年金保険料の納付が経済的に困難な方が、申請後に承認されることで保険料の納付が免除されます。
免除される額は所得に応じて、全額、4分の3、半額、4分の1の4種類があります。
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納付猶予制度を利用するメリット
国民年金保険料を納付しない場合(未納)と比べて、保険料の納付猶予や免除を受けるメリットは何でしょうか。
保険料の納付猶予(学生の場合は学生納付特例)や免除を受けている期間は、老齢基礎年金の受給資格期間に算入されるとともに、その期間中のケガや病気を原因として障害を負ったり、死亡してしまったりといった万が一の事態が発生した場合、障害年金や遺族年金の支給対象となります(※1)。
ただし、老齢基礎年金の年金額を計算するときは、保険料を免除された期間については免除の割合に応じて一部が算入されますが、納付猶予(学生の場合は学生納付特例)を受けた期間の場合は、猶予された保険料を後から納める「追納」をしない限り、老齢基礎年金額には反映されません(※4)。
国民年金保険料の納付状況 | 納付 | 免除 | 納付猶予・ 学生納付特例 |
未納 |
---|---|---|---|---|
老齢基礎年金の受給資格期間への算入 | ◯ | ◯ | ◯ | ✖ |
老齢基礎年金額への反映 | ◯ | △ | ✖ | ✖ |
障害・遺族基礎年金の受給資格期間への算入 | ◯ | ◯ | ◯ | ✖ |
(※1)を基に筆者作成
納付猶予制度の審査と承認基準
納付猶予制度は、本人および配偶者の前年の所得が、以下の計算式で計算した金額の範囲内であることが承認の基準となります(※1)。
所得基準:(扶養親族等の数+1)×35万円+32万円
なお、本人と配偶者についてのみ審査されるため、同居する親の所得を問われることはありません。
また、学生納付特例制度の審査では、申請者本人の所得が以下の計算式で計算した金額の範囲内であることが条件となり、こちらも家族の所得は問われません(※3)。
所得基準:128万円+扶養親族等の数×38万円+社会保険料控除等
一方、免除制度では本人および配偶者に加え、世帯主の所得について審査が行われるので、親が世帯主の場合、その所得も問われることになります。
まとめ
国民年金保険料の納付猶予制度は、20歳から50歳未満の方の所得が一定額以下になった場合に利用することができます。申請の際に審査されるのは本人と配偶者の所得であり、同居する家族の所得の多寡は問われません。
なお、納付の猶予を受けた期間は、老齢基礎年金額の計算には反映されませんので、経済状況が改善したときには、猶予された保険料を早めに追納するといいでしょう。
出典
(※1)日本年金機構 国民年金保険料の免除制度・納付猶予制度
(※2)日本年金機構 学生納付特例対象校一覧
(※3)日本年金機構 国民年金保険料の学生納付特例制度
(※4)日本年金機構 国民年金保険料の追納制度
執筆者:辻章嗣
ウィングFP相談室 代表
CFP(R)認定者、社会保険労務士