更新日: 2022.04.05 年金

障害年金のウソ? ホント?(15)「精神疾患の請求で一人暮らしは不利?」

執筆者 : 和田隆

障害年金のウソ? ホント?(15)「精神疾患の請求で一人暮らしは不利?」
障害年金の相談を受けていると、ちょっとした思い違いをしている人や、誤ったうわさ話を信じ込んでいる人が少なくないことに気づきます。そうした人たちは、後になって「しまった!」となりかねません。
 
そんなことにならないために、あらかじめ正しい知識を身に付けておきましょう。第15回は「精神疾患の請求で1人暮らしは不利?」です。
 
和田隆

執筆者:和田隆(わだ たかし)

ファイナンシャル・プランナー(AFP)、特定社会保険労務士、社会福祉士

新聞社を定年退職後、社会保険労務士事務所「かもめ社労士事務所」を開業しました。障害年金の請求支援を中心に取り組んでいます。NPO法人障害年金支援ネットワーク会員です。

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「症状が軽い」と受け止められる可能性がある

1人暮らしの人が精神疾患で障害年金を請求する場合、注意しなければならないことがあります。それは、1人暮らしができていることで、障害年金の審査の際に「症状が軽く、障害等級に該当しないかもしれない」と受け止められる可能性があることです。
 

「助言や指導」をどれほど必要としているか、が重要

精神疾患で障害年金を請求する際に提出する診断書(※1)をみてみましょう。裏面の「日常生活能力の判定」の欄です。当該欄の一部を表示します。
 

(出典:日本年金機構「診断書(精神の障害用)」)
 
日常生活能力の判定にあたり「適切な食事」など7項目の設問がありますが、左端の選択肢の「できる」以外の選択肢には、いずれも「助言や指導」という文言が入っています。日常生活を送るうえで、他人の「助言や指導」をどれほど必要としているかをチェックしているわけです。
 
1人暮らしだと、他人の「助言や指導」を得にくいですよね。つまり、「1人暮らしができている」=「他人の助言や指導がなくても生活できている」とみることができ、結果的に、左端の選択肢の「できる」につながるわけです。
 

1人暮らしでも、人さまざま

しかし、1人暮らしでも、その生活は人さまざまです。
 
親や兄弟が頻繁に訪れて食事や掃除、洗濯などを手助けしてくれている場合もあれば、障害者自身が親や兄弟の元に足を運び、食事や洗濯などを頼っている場合もあります。
 
また、福祉サービスの援助を受けている場合もあるでしょう。必ずしも、「他人の助言や指導がなくても生活できている」というわけではありません。
 
1人暮らしの理由もさまざまです。同居者の援助がほしくても、死別や離婚、そのほかの事情で1人暮らしを余儀なくされている場合もあります。
 

「ガイドライン」で強調されているが……

2016年9月から実施されている厚生労働省の「国民年金・厚生年金保険 精神の障害に係る等級判定ガイドライン」(※2)では、1人暮らしに関して、次のように強調されています(以下、同ガイドラインより一部抜粋)。
 
▽ 家族等の日常生活上の援助や福祉サービスの有無を考慮する。

≪具体的な内容例≫

独居であっても、日常的に家族等の援助や福祉サービスを受けることによって生活できている場合(現に家族等の援助や福祉サービスを受けていなくても、その必要がある状態の場合も含む)は、それらの支援の状況(または必要性)を踏まえて、2級の可能性を検討する。

▽ 独居の場合、その理由や独居になった時期を考慮する。
 
「1人暮らしができている」=「他人の助言や指導がなくても生活できている」と安易に決めつけることをいさめているわけです。
 
しかし、裏を返せば、このように詳細に状況を補足しなければ、得てして「1人暮らしができている」=「他人の助言や指導がなくても生活できている」とみられやすい実態があるともいえます。
 

照会文書にヒントがある

それでは、審査の際に「1人暮らしができている」=「他人の助言や指導がなくても生活できている」とみられないようにするには、どうしたらよいのでしょうか。
 
上記のガイドラインと同時に作成された、「日常生活及び就労に関する状況について(照会)」という照会文書(※3)にヒントがあります。
 
この照会文書は、障害年金の審査の過程で認定医が、提出された診断書や「病歴・就労状況等申立書」の記載内容だけではなく、「詳細な日常生活状況を確認することが必要であると判断した場合」(厚生労働省から日本年金機構などに宛てた通知から)に障害年金の請求者に送られてくるものです。
 
照会文書では「誰からの援助か」「援助の内容や頻度は」などを細かく質問しています。審査のうえで、重要なところを尋ねているのです。
 

先んじて、設問に答えておけば安心

そこで、障害年金を請求するにあたって、先んじてこの設問に答えておけば安心です。
 
方法としては、診断書を作成してくれる医師に頼んで、できるだけ設問の答えに該当する内容を診断書に書き入れてもらうのが一番ですが、請求者自身が作成する「病歴・就労状況等申立書」に書き込むのもよいでしょう。
 
あるいは、あえてこの文書の設問と回答を意識した申立書を自身で作成し、請求書などと一緒に提出するのも一法でしょう。
 
先の「日常生活及び就労に関する状況について(照会)」が請求者全員に送られてくるのなら、こうした気遣いは不要ですが、送られてこずに「障害は軽いようだ」と安易に判断されたのでは、たまったものではありません。
 
1人暮らしの人は、あらかじめ万全の対策を講じることをお勧めします。
 
「精神疾患の請求で1人暮らしは不利?」の「ウソ・ホント」は、「ホント」といえるでしょう。
 
出典
(※1)日本年金機構 診断書(精神の障害用)
(※2)日本年金機構 国民年金・厚生年金保険 精神の障害に係る等級判定ガイドライン
(※3)日本年金機構 日常生活及び就労に関する状況について(照会)
 
執筆者:和田隆
ファイナンシャル・プランナー(AFP)、特定社会保険労務士、社会福祉士

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