更新日: 2022.04.14 その他年金
遺族年金は子どもがいないと受け取れない? 自営業者の配偶者が亡くなった場合について
ただし、両方受け取れる場合は、どちらかを選択することになります。
執筆者:新美昌也(にいみ まさや)
ファイナンシャル・プランナー。
ライフプラン・キャッシュフロー分析に基づいた家計相談を得意とする。法人営業をしていた経験から経営者からの相談が多い。教育資金、住宅購入、年金、資産運用、保険、離婚のお金などをテーマとしたセミナーや個別相談も多数実施している。教育資金をテーマにした講演は延べ800校以上の高校で実施。
また、保険や介護のお金に詳しいファイナンシャル・プランナーとしてテレビや新聞、雑誌の取材にも多数協力している。共著に「これで安心!入院・介護のお金」(技術評論社)がある。
http://fp-trc.com/
遺族基礎年金
遺族年金には、自営業者や専業主婦(夫)など、国民年金加入者が受け取る「遺族基礎年金」と、会社員や公務員などの厚生年金加入者が受け取る「遺族基礎年金+遺族厚生年金」があります。
遺族基礎年金は、子ども(18歳になった年度の3月31日までにある方、または20歳未満で障害年金の障害等級1級または2級の状態にある方)がいないと受け取れません。
長年、国民年金保険料を払ってきた夫が、自分の老齢基礎年金などを受け取ることもなく亡くなり、妻も遺族基礎年金を受け取れないということになると、今まで払ってきた保険料が「掛け捨て」になってしまいます。
このため、国民年金には妻が受け取ることができる「寡婦年金」と、遺族が受け取れる「死亡一時金」という独自給付があります。
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寡婦年金とは
寡婦年金を受け取るためには、次の要件を満たす必要があります。
・保険料を納めた期間、および国民年金保険料免除期間が10年以上あること
・障害基礎年を受給したことがない(※)
・老齢基礎年金を受給したことがない
※改正前は、死亡した夫が障害基礎年金の受給権者になったことがあるときは、実際に障害基礎年金を受けていなくても、寡婦年金は支給されませんでした。改正後(令和3年4月より)は、夫に障害基礎年金の受給権があったとしても、実際に障害基礎年金を受給したことがない場合は、寡婦年金は支給されることになりました。
・その夫と10年以上継続して婚姻関係(事実上の婚姻関係を含む)にあること
・死亡当時にその夫に生計維持されていたこと
・65歳未満であること
これらの要件を満たすと、妻は60歳から65歳までの間、夫が受け取るはずだった老齢基礎年金の4分の3を受け取ることができます。
寡婦年金をもらうのは先のことでも、夫の死亡後5年以内に請求しないと時効になるので、手続きは急ぎましょう。
妻が過去に遺族基礎年金を受け取っていたが、その後、子どもがすべて18歳の年度末(障害等級1、2級なら20歳)になり、遺族基礎年金の受給権を失ったとしても、そのとき妻が要件を満たしていれば寡婦年金を受け取ることができます。
なお、次の場合には寡婦年金をもらえなくなります(国民年金法51条)。
・妻が65歳になったとき
・妻が死亡したとき
・妻が再婚したとき
・妻が養子になったとき(直系血族または直系姻族の養子になったときを除く)
・妻が老齢基礎年金を繰り上げ受給したとき
死亡一時金とは
死亡一時金は、国民年金の保険料を原則36ヶ月以上納付した方が、老齢基礎年金または障害基礎年金等を受給しないで死亡した場合に、保険料の掛け捨てを防止するため、生計を同一にしていた一定の遺族に対して支給されます。
死亡一時金を受けるべき方には順位があり、死亡した者の(1) 配偶者、(2) 子、(3) 父母、(4) 孫、(5) 祖父母、(6) 兄弟姉妹の順番となります。
ただし、遺族の中に遺族基礎年金を受け取ることができる方がいる場合には、死亡一時金は受け取れません。
受取額は保険料の納付月数により異なります。12万円(36月以上 180月未満)~32万円(420月以上)です。死亡日の属する月の前月までの付加保険料の納付済期間が3年(36月)以上ある場合には、8500円が加算されます。寡婦年金と異なり1回限りの受給です。
なお、月数は、保険料納付済期間の月数、保険料4分の1免除期間の月数の4分の3に相当する月数、保険料半額免除期間の月数の2分の1に相当する月数、保険料4分の3免除期間の月数の4分の1に相当する月数を合算した月数です。時効は2年なので注意しましょう。
寡婦年金と死亡一時金の両方を受け取ることができる場合は、どちらかを選択します。
出典
日本年金機構 第1号被保険者の独自給付について
厚生労働省 年金制度の機能強化のための国民年金法等の一部を改正する法律」の公布について(通知)
e-GOV 法令検索「国民年金法」
※第二款 寡婦年金(第四十九条―第五十二条)
※第三款 死亡一時金(第五十二条の二―第六十八条)
執筆者:新美昌也
ファイナンシャル・プランナー。