更新日: 2022.04.26 厚生年金

厚生年金ってどのように計算するの?

執筆者 : 林智慮

厚生年金ってどのように計算するの?
令和元年に、年金2000万円不足問題が世間を騒がせました。大きく騒がれたのは、年金に関心を持っている方が多いということです。
 
ところで、会社員や公務員などは厚生年金に加入しますが、そもそも厚生年金はどのように計算されるのでしょうか?
林智慮

執筆者:林智慮(はやし ちりよ)

CFP(R)認定者

確定拠出年金相談ねっと認定FP
大学(工学部)卒業後、橋梁設計の会社で設計業務に携わる。結婚で専業主婦となるが夫の独立を機に経理・総務に転身。事業と家庭のファイナンシャル・プランナーとなる。コーチング資格も習得し、金銭面だけでなく心の面からも「幸せに生きる」サポートをしている。4人の子の母。保険や金融商品を売らない独立系ファイナンシャル・プランナー。

誰もが、年金が2000万円不足するのか?

令和元年6月、金融審査議会市場ワーキング・グループ報告書が公開されました。それによると、高齢夫婦無職世帯の平均的な支出額は月に約26.4万円、年金収入は月に約20.9万円。公的年金だけでは月々約5.5万円不足します。
 
不足した生活が何年続くのでしょうか。第21回審議会の厚生労働省提出資料から、2015年に65歳に到達した人のうち、90歳まで生存する見込みが男性35%、女性60%、さらに100歳まで生存する見込みが男性4%、女性14%であり、その後も長生きすることが予想されます。
 
よって、95歳までの30年続くとした場合、1980万円不足します。この、約2000万円の金融資産を自分で準備する必要があるのです。これが、いわゆる年金2000万円不足問題です。
 
しかし、どの世帯でも約20.9万円の年金を受け取れるのではありません。
 
日本に住んでいる20歳以上の人が国民年金(基礎年金)に加入しますが、会社員や公務員は、国民年金に上乗せする厚生年金にも加入します。
 
国民年金のみの場合、年金保険料は毎年度決められた額を支払いますが、厚生年金加入の場合は、給与により納める保険料が異なります。受け取る年金額も異なります。誰でも同じではありません。
 

厚生年金保険料はどのように計算される?

それでは、厚生年金保険料はどのように計算されるのでしょうか。
 
毎月の保険料額は、標準報酬月額×保険料率、賞与の保険料額は、標準賞与額×保険料率により計算します(令和4年4月現在18.3%)。計算された保険料は、事業主と被保険者が半分ずつ負担します。
 
標準報酬月額は、厚生年金保険料や厚生年金額の計算の基になるものです。
 
給与を一定の幅で区分し、1等級(8万8000円)から32等級(65万円)まで分けた報酬月額を出します。毎年、4月から6月の報酬月額を基に、標準報酬月額を改定します(定時決定)。標準報酬月額が2等級以上変動するような報酬月額の変動がある場合は都度改定します(随時改定)。他に、資格取得時の決定、育児休業等終了時の改定、保険者決定があります。
 
ここでの報酬とは、労働の対償だけでなく、事業所から日頃実質的に受け取るものも含みます。通勤手当等の現金のみならず、事業者から提供される食事代等の現物も含みます。また、年4回以上支給される賞与も標準報酬月額の対象になります。
 
また、標準賞与額は、1000円未満を切り捨てたものです。賞与とされるのは、年3回以下や一時的に事業者から支給されるもの(現金・現物)です。
 

厚生年金の受給額はどのように計算される?

次に、受け取る場合ですが、老齢基礎年金を受け取れる人に厚生年金の加入期間がある場合に、老齢基礎年金に上乗せして老齢厚生年金を受け取ることができます。
 
老齢厚生年金額は、報酬比例部分と経過的加算と加入年金(65歳で扶養する配偶者や子がいる場合)を合計した額です。報酬比例部分は、厚生年金に加入していた時の報酬額や、加入期間により以下のように受け取れる年金額が算出されます。

<平成15年3月以前の加入期間分>

平均標準報酬月額×7.125/1000×平成15年3月までの加入期間の月額

<平成15年4月以降の加入期間分>

平均標準報酬月額×5.481/1000×平成15年4月以降の加入期間の月額

このように、厚生年金は支払う保険料も受け取る金額も、1人ひとり異なります。よって、年金だけでは不足する金額も1人ひとり異なるのです。
 
不足分をカバーするためには、資産寿命をなるべく延ばすことが必要です。ライフプラン・マネープランを立て、現役期より生活防衛資金を元本確保で準備しつつ、少額から長期・積立・分散投資により資産形成を開始し、リタイア期よりプランを修正しつつ、計画的な取り崩しを行うことが大切です。
 

出典

金融庁 金融審査議会 市場ワーキング・グループ報告書「高齢社会における資産形成・管理」
金融庁 厚生労働省提出資料(第21回審議会)
日本年金機構 Q 厚生年金保険料の計算方法について教えてください
日本年金機構 老齢厚生年金の受給要件・支給開始時期・年金額
 
執筆者:林智慮
CFP(R)認定者

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