更新日: 2022.05.16 その他年金

在職定時改定とはどんな制度? 制度の仕組みと注意点を解説

執筆者 : FINANCIAL FIELD編集部

在職定時改定とはどんな制度? 制度の仕組みと注意点を解説
在職定時改定をご存じでしょうか?
 
多くの人が、これまでよりも長い期間、多様な形で労働する社会へと変化が見込まれるなか、2020年5月29日に成立した「年金制度の機能強化のための国民年金法等の一部を改正する法律」において、在職中の年金受給のあり方の見直しがなされ、2022年4月から、在職定時改定の適用が開始されました。
 
在職定時改定とはどのような制度なのか、どのような点に注意すべきなのかを解説します。
FINANCIAL FIELD編集部

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在職定時改定の仕組み

65歳を超えても厚生年金の適用事業所で就労する人(厚生年金に一定の加入歴がある場合に限る)は、老齢厚生年金を受け取りながら働くことができます。
 
これまでは、退職時または70歳に到達したときにしか、年金額が改定されていませんでした。在職定時改定は、就労を継続し、その期間も納めることが義務付けられている厚生年金の保険料が、退職や70歳を迎えるのを待たず、早期に年金額に反映されるように、毎年10月に年金額が改定されるように決められた制度です。
 
これによって、年金を受給しながら働く方の経済基盤の充実が見込まれ、働いた結果が年金という形で実感でき、就労を延長することに対してのモチベーションを上げるという効果も期待できます。
 
在職定時改定は、9月1日を基準日において厚生年金の被保険者である場合、65歳になった誕生日の1日前の月から8月までの厚生年金保険の加入実績を再計算して、10月分から改定された年金額が増額して支給されます。
 
66歳以降は、1年間の厚生年金の加入実績が再計算され、退職または70歳になるまでの間、毎年10月に年金額が改定され続けます。
 

在職定時改定の注意点

60歳以降も、働きながら受給する年金のことを在職老齢年金といいます。
 
在職定時改定は、納めた厚生年金保険料が毎年反映されて支給される制度であり、適用される老齢厚生年金は在職老齢年金にあたります。この在職老齢年金は、基本月額と総報酬月額相当額に応じて、年金額の一部が支給または全額が支給停止になる場合があるのです。
 
基本月額と総報酬月額相当額の合計金額が47万円以上の場合は、47万円を超えた金額の2分の1の金額が支給停止金額となります。在職定時改定で年金額が増えたことによって、年金が支給停止になる場合があります。
 

在職定時改定と繰下げ受給

まず、繰下げ受給とは、65歳時の年金を66歳以降の希望する月からもらい始める制度のことです。
 
繰り下げて受け取る年金額は、65歳到達月の前月までの年金加入記録によって計算された年金額に、繰り下げた月数ごとに0.7%年金額が増額されます。
 
2022年4月からは、最高75歳まで繰り下げができるようになっており、70歳まで繰り下げたら42%、75歳まで繰り下げたら84%増額され、その増加率は生涯変更されることはありません。
 
ただし、繰り下げられる年金額の計算をする際の繰り下げ対象額は、65歳到達月の前月までの年金加入記録によって計算されるので、それ以降に厚生年金保険に加入した分は、繰り下げによって増額される年金額の対象とはされません。
 
つまり、在職定時改定で増額される年金額は、繰下げ受給には反映されないのです。
 

在職定時改定で年金を増額するか、繰下げ受給で年金を増額するか

老後の資金として、受給する年金額をどれぐらい増やせるかは、非常に重要な問題です。
 
2022年の4月からは、在職定時改定が適用されるようになり、最高75歳まで年金の繰下げ受給ができるようになりました。
 
しかし、その両方から同時に恩恵を受けることはできないので、老齢厚生年金を受け取りながら在職定時改定で70歳まで毎年受給する年金を増額させていくか、繰下げ受給することで年金額を増額させるかの、どちらかを選ばなければなりません。
 
どちらを選ぶことが、より自分にとって良いのかを熟考する必要があります。
 

出典

日本年金機構 老齢年金ガイド 令和4年度版
日本年金機構 在職老齢年金の支給停止の仕組み
 
執筆者:FINANCIAL FIELD編集部

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