更新日: 2022.05.19 その他年金
熟年再婚した60代男性。年の離れた妻は「加給年金」の対象になる?
今回は、加給年金について解説します。
執筆者:辻章嗣(つじ のりつぐ)
ウィングFP相談室 代表
CFP(R)認定者、社会保険労務士
元航空自衛隊の戦闘機パイロット。在職中にCFP(R)、社会保険労務士の資格を取得。退官後は、保険会社で防衛省向けライフプラン・セミナー、社会保険労務士法人で介護離職防止セミナー等の講師を担当。現在は、独立系FP事務所「ウィングFP相談室」を開業し、「あなたの夢を実現し不安を軽減するための資金計画や家計の見直しをお手伝いする家計のホームドクター(R)」をモットーに個別相談やセミナー講師を務めている。
https://www.wing-fp.com/
加給年金制度とは
加給年金は、厚生年金保険の被保険者期間が20年(注1)以上ある方が、65歳到達時点で生計を維持している65歳未満の配偶者、または年齢要件を満たした子がいるときに加算されます(※1)。
(注1):共済組合などの加入期間を除いた厚生年金の被保険者期間が、40歳(坑内員・船員、女性は35歳)以降で15年から19年。
また、65歳到達後に被保険者期間が20年以上となった場合は、20年以上となった年の9月1日時点、または退職時(または70歳到達時)に、同様の要件を満たす配偶者や子がいるときに加算の対象となります。
配偶者に対する加給年金の額は、特別加算を含め38万8900円(令和4年度)となっています。
なお、加給年金の加算は、配偶者が65歳に到達するなど年齢の要件に該当しなくなった場合のほか、離婚や死亡などにより生計を維持されなくなったときには終了します。
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加給年金は65歳が受給できるか否かの分かれ道
今回の例は60代で再婚した夫と、その妻のケースとなりますが、加給年金の対象となるのは前述したとおり、老齢厚生年金を受給する夫が65歳到達時に生計を維持している65歳未満の妻です(※1)。
また、加給年金で生計維持関係が認められる要件は、同居しているほか(別居の場合は仕送りをしていること)、前年の収入が850万円未満であることが必要となります(※2)。
従って、夫が65歳到達前に再婚して、要件を満たした妻を扶養することになった場合であれば、妻との年齢が離れていても問題はありません。むしろ、年の差がある妻の方が、それだけ長期間にわたり加給年金を受給することができます。
ただし、夫が65歳に到達して、老齢厚生年金の受給資格を得た時点以降に生計を維持されることになった妻は、加給年金の対象にはなりません。
加給年金の対象となる妻の注意点
加給年金の対象となる妻が、老齢厚生年金(注2)や退職共済年金(組合員期間20年以上)の受給権があるとき、または障害年金を受けられる間は、加給年金額は支給が停止されます(※1)。
(注2):被保険者期間が20年以上または共済組合などの加入期間を除いた期間が、40歳(女性の場合は35歳)以降で15年から19年以上の場合に限ります。
また、対象となる妻には、婚姻の届け出はしていないが、事実上の婚姻関係と同様の事情(内縁関係)にある場合も含まれます(※3)。
ただし、前夫の遺族年金を受給していた妻が再婚(内縁関係を含む)をすると遺族年金の受給権は消滅し、再婚した夫と離婚しても受給権が復活することはありませんので注意が必要です(※4)。
まとめ
一定の要件を満たす老齢厚生年金の受給権を有する夫が、65歳到達時点で生計を維持する65歳未満の妻がいる場合には、加給年金を受給することができます。妻の年齢は65歳未満であればいいので、年齢差があればあるほど、長期にわたって加給年金が加算されることになります。
ただし、夫が老齢年金の受給権を取得した65歳到達以降、婚姻などにより生計維持関係が生じた妻は加給年金の対象とはなりません。
出典
日本年金機構 加給年金額と振替加算(※1)
日本年金機構 年金用語集 さ行 生計維持(※2)
e-Gov 法令検索 厚生年金保険法(※3)
日本年金機構 遺族年金ガイド 令和4年度版(※4)
執筆者:辻章嗣
ウィングFP相談室 代表
CFP(R)認定者、社会保険労務士