更新日: 2022.05.23 その他年金
年金繰下げ受給で得をするのはどんな人? メリット・デメリットも解説
繰下げ受給を選択すると、一定年齢を超えて長生きした場合に、65歳から年金を受け取るよりも多くの年金が受給できるメリットがあります。しかし一方でデメリットもあることには注意が必要です。
ここでは、年金の繰下げ受給で得になる条件や、繰下げ受給のメリット・デメリットをまとめました。年金の受給方法の選択に迷っている人は、ぜひ参考にしてください。
執筆者:FINANCIAL FIELD編集部(ふぁいなんしゃるふぃーるど へんしゅうぶ)
ファイナンシャルプランナー
FinancialField編集部は、金融、経済に関する記事を、日々の暮らしにどのような影響を与えるかという視点で、お金の知識がない方でも理解できるようわかりやすく発信しています。
編集部のメンバーは、ファイナンシャルプランナーの資格取得者を中心に「お金や暮らし」に関する書籍・雑誌の編集経験者で構成され、企画立案から記事掲載まですべての工程に関わることで、読者目線のコンテンツを追求しています。
FinancialFieldの特徴は、ファイナンシャルプランナー、弁護士、税理士、宅地建物取引士、相続診断士、住宅ローンアドバイザー、DCプランナー、公認会計士、社会保険労務士、行政書士、投資アナリスト、キャリアコンサルタントなど150名以上の有資格者を執筆者・監修者として迎え、むずかしく感じられる年金や税金、相続、保険、ローンなどの話をわかりやすく発信している点です。
このように編集経験豊富なメンバーと金融や経済に精通した執筆者・監修者による執筆体制を築くことで、内容のわかりやすさはもちろんのこと、読み応えのあるコンテンツと確かな情報発信を実現しています。
私たちは、快適でより良い生活のアイデアを提供するお金のコンシェルジュを目指します。
繰下げ受給は損益分岐点の年齢を超えて長生きすれば得になる
年金の繰下げ受給とは、通常65歳から支給が始まる老齢基礎年金・老齢厚生年金を、66歳以降75歳まで(※)の好きな時期にそれぞれ繰り下げて受給できる制度です。
繰下げ受給を選択すると、老齢基礎年金(振替加算額を除く)および老齢厚生年金(加給年金額を除く)に、受給開始のタイミング(繰下げ申出月)に応じて算出した増額率を掛けた金額が上乗せされます。一度決まった増額率は、生涯変わりません。
繰下げ受給で得をするのは、増額した年金の受取総額が、65歳から受給したときの受給総額に追い付く年齢(損益分岐点)よりも長生きした場合です。繰下げ受給による増額率は、以下の式で求めます。
繰下げ受給による増額率 (最大84%(※))=0.7%×65歳の誕生日前日が属する月から繰下げ申出月前月までの月数
この式をもとに計算すると、受給開始年齢ごとの増額率とおおよその損益分岐点は、図表1のとおりです。
【図表1】
受給開始年齢 | 増額率 | 損益分岐点 |
---|---|---|
66歳 | 8.4% | 77歳 |
67歳 | 16.8% | 78歳 |
68歳 | 25.2% | 79歳 |
69歳 | 33.6% | 80歳 |
70歳 | 42.0% | 81歳 |
71歳 | 50.4% | 82歳 |
72歳 | 58.8% | 83歳 |
73歳 | 67.2% | 84歳 |
74歳 | 75.6% | 85歳 |
75歳 | 84.0% | 86歳 |
【PR】資料請求_好立地×駅近のマンション投資
【PR】J.P.Returns
おすすめポイント
・東京23区や神奈川(横浜市・川崎市)、関西(大阪、京都、神戸)の都心高稼働エリアが中心
・入居率は99.95%となっており、マンション投資初心者でも安心
・スマホで読めるオリジナルeBookが資料請求でもらえる
繰下げ受給のメリット
年金を繰下げ受給する最大のメリットは、年金受給額を大きく増やせる点です。
75歳まで繰下げすれば増額率は最大84.0%になり、1回に支給される年金額が大幅に増えます。
そのため、元気なうちは働いて収入を得て、70歳や75歳以降は増額された年金収入で余裕をもって生活するといったライフプランが選択可能になります。
また、繰下げ受給をすると、増額された年金額を生涯受け取れるため、損益分岐点を超えて長生きすればするほど、年金の総額も大きく増えることになります。
例えば65歳から毎月15万円を受給できる人の場合、仮に95歳まで長生きしたとして、それまでの30年間の年金総額は5400万円です。
一方、同じ人が75歳まで受給開始を繰り下げると、95歳までの20年間の年金総額は6624万円となり、1000万円以上も差が付きます。
繰下げ受給のデメリット
年金の繰下げ受給には次のようなデメリットもあるため注意が必要です。
●早く亡くなると受給総額が少なくなる
●年金額が増えると税負担が増えることがある
●加給年金が受け取れなくなる場合がある
繰下げ受給を選択した人が損益分岐点の年齢よりも早く亡くなった場合、65歳で受給開始したときと比べて受給総額が少なくなります。
年金をできるだけもらい逃したくないと考えるなら、繰下げ受給はリスクが大きいといえるでしょう。
また、年金からは、受給額に応じた各種社会保険料や所得税・住民税を納める必要があります。
繰下げ受給で年金額が増えることで、これらの負担が増える可能性に注意しましょう。社会保険料や税金の負担が増えた結果、増額率から期待するほどには年金の手取りが増えないことも考えられます。
なお、65歳から繰下げ受給を開始するまでの待機期間は、加給年金(※)が受け取れません。
加給年金は、配偶者や子どもが制限年齢を超えると受給権を失います。そのため、待機期間に配偶者や子どもが制限年齢になるケースでは、加給年金を一切受け取れなくなります。
※厚生年金保険の被保険者期間が20年以上ある人に、65歳到達時点でその人に生計を維持されている65歳未満の配偶者、18歳到達年度の末日までの子どもがいる場合に老齢年金に加算される年金。
繰下げ受給は長生きするほど得になる制度
年金の繰下げ受給をすると、受給開始年齢が遅くなる代わりに、受給開始のタイミングに応じた割合が年金額に上乗せされます。
そのため、繰り下げて受給した年金総額が、65歳から年金を受け取った場合の年金総額に追い付く損益分岐点の年齢を超えて長生きすれば、その分だけ年金の受給総額が大きく増えることになります。
ただし、長生きできなかったときには、受給総額が少なくなるなどのデメリットもあるため、注意が必要です。
自分の健康状態や年金以外の収入など、さまざまな要素を含めてシミュレーションを行い、繰下げ受給を選択するかどうかや、何歳まで繰り下げるのかを検討しましょう。
出典
日本年金機構 年金の繰下げ受給
日本年金機構 年金から介護保険料・国民健康保険料(税)・後期高齢者医療保険料・住民税を天引きされるのはどのような人ですか。
日本年金機構 加給年金額と振替加算
執筆者:FINANCIAL FIELD編集部