老齢年金が減額される条件とは? どれくらい働くと減る?
配信日: 2022.05.24
実際、老後も厚生年金に加入して働く場合などには、報酬と老齢年金の金額に応じて年金額が減らされることがあります。
ここでは、老齢年金が減額される「在職老齢年金制度」の概要や、減額となるボーダーライン、減額後の老齢年金月額の計算方法をまとめました。ぜひ参考にして、老後の働き方を考えてみましょう。
執筆者:FINANCIAL FIELD編集部(ふぁいなんしゃるふぃーるど へんしゅうぶ)
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目次
給与などの金額に応じて老齢年金が減額される「在職老齢年金制度」
厚生年金には、老齢年金を受給しながら会社に勤める場合に、報酬(給与・賞与)と老齢厚生年金の金額に応じて年金が減額(支給停止)される「在職老齢年金」の制度があります。
在職老齢年金制度の対象となるのは、次の2つのケースです。
70歳未満の人が会社に就職して厚生年金保険の被保険者となる
平成19年4月以降に70歳になった人が、70歳以降も厚生年金保険の適用事業所に勤める
年金の減額は、報酬額(総報酬月額相当額)と老齢厚生年金の基本月額(加給年金額を除く報酬比例部分の月額)の合計が基準額を超えている期間中に適用されます。総報酬月額相当額が変動した場合や、退職して制度の対象から外れた場合、支給停止額が変更されるのは、状況が変わった月の翌月からです。
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在職老齢年金制度が適用される報酬額の条件
在職老齢年金制度により年金が減額されるのは、次の2つの合計額が基準額:47万円を超える場合です。
・老齢厚生年金の基本月額:加給年金額を除く老齢厚生(退職共済)年金の報酬比例部分の月額(厚生年金基金に加入していなかったと仮定して算出します)
・総報酬月額相当額:当該月の標準報酬月額(※1)+当該月以前1年間の標準賞与額(※2)の合計÷12ヶ月
※1 報酬月額(基本給と各種手当の合計額)を区切りの良い金額で区分した1~32等級に当てはめた金額。
※2 1ヶ月の賞与額から1000円未満を切り捨てた金額(上限150万円)。
つまり、仮に老齢厚生年金の基本月額が15万円の人の場合、総報酬月額相当額が32万円を超えて働くと、年金が減額されることになります。
なお、令和4年3月までは、65歳未満と65歳以上の基準額が次のように区別されていました。
・65歳未満:老齢厚生年金の基本月額と総報酬月額相当額の合計が28万円超
・65歳以上:老齢厚生年金の基本月額と総報酬月額相当額の合計が47万円超
しかし、令和4年4月以降は、65歳未満も65歳以上と同様の47万円がボーダーラインとなっています。
在職老齢年金による減額後の年金額の計算方法
基本月額と総報酬月額相当額の合計が47万円超を超えた場合の、減額後の老齢厚生年金の支給月額は、次の計算式で算出します。
減額後の老齢厚生年金支給月額=老齢厚生年金の基本月額-(老齢厚生年金の基本月額+総報酬月額相当額-47万円)÷2
例えば、老齢厚生年金の基本月額が15万円、総報酬月額相当額が40万円の人の場合、減額後の老齢厚生年金支給月額は15万円-(15万円+40万円-47万円)÷2=11万円となり、4万円の減額です。
なお、在職老齢年金制度で支給停止となるのは、老齢厚生年金の報酬比例部分です。原則として、加給年金、老齢基礎年金、経過的加算額は減額の対象ではありません。
ただし計算の結果、減額される年金額が老齢厚年金支給月額よりも多い、つまり老齢厚年金支給月額がマイナスとなる場合は、加給年金を含めた老齢厚生年金全額が支給停止となるため、注意が必要です。
年金と給与・賞与のバランスを考えて働こう
老齢厚生年金を受給しながら働く場合、在職老齢年金制度の適用に注意しましょう。
在職老齢年金制度では、老齢厚生年金の基本月額と、給与や賞与をもとに計算した総報酬月額相当額の合計が47万円を超えると、超えた金額に応じて年金が減額、または全額支給停止となります。年金を全額もらいたい人は、47万円というボーダーラインを念頭に、老後の働き方を検討する必要があるでしょう。
ただし、報酬が増えれば結果的に収入が増えることや、将来の老齢年金の金額に反映されることを考えると、在職老齢年金制度だけを理由に働き方をセーブするのは、一概に得ともいえません。
現在の家計や心身の状態、退職後の資金計画などと合わせて、年金と給与や賞与のバランスを考えて働くことが大切です。
出典
日本年金機構 在職中の年金(在職老齢年金制度)
日本年金機構 在職老齢年金の計算方法
日本年金機構 は行 標準報酬月額
日本年金機構 は行 標準賞与額
執筆者:FINANCIAL FIELD編集部