更新日: 2022.05.27 国民年金

20歳になる子どもの国民年金保険料は親が払う? 猶予して将来子どもに払わせる?

執筆者 : 辻章嗣

20歳になる子どもの国民年金保険料は親が払う? 猶予して将来子どもに払わせる?
子どもが20歳になると国民年金の被保険者となり、その保険料を本人または世帯主のいずれかが納めることになります。一方、子どもの収入が少ない場合は保険料の納付猶予制度を、子どもが学生の場合は学生納付特例制度を利用することもできます。
 
今回は、子どもが国民年金保険料の納付猶予制度などを利用する場合と、子どもの保険料を親が払う場合の違いについて解説します。
辻章嗣

執筆者:辻章嗣(つじ のりつぐ)

ウィングFP相談室 代表
CFP(R)認定者、社会保険労務士

元航空自衛隊の戦闘機パイロット。在職中にCFP(R)、社会保険労務士の資格を取得。退官後は、保険会社で防衛省向けライフプラン・セミナー、社会保険労務士法人で介護離職防止セミナー等の講師を担当。現在は、独立系FP事務所「ウィングFP相談室」を開業し、「あなたの夢を実現し不安を軽減するための資金計画や家計の見直しをお手伝いする家計のホームドクター(R)」をモットーに個別相談やセミナー講師を務めている。
https://www.wing-fp.com/

国民年金保険料の納付義務者とは

学生やフリーター(自営業者)などの子どもが20歳になりますと、国民年金の第1号被保険者となります。そして、国民年金保険料(令和4年度は月額1万6590円)を本人、または保険料連帯納付義務者である世帯主・配偶者のいずれかが納める必要があります(※1、※2)。
 
なお、子どもが会社員や公務員である場合は厚生年金の被保険者となり、保険料は本人の給与から差し引かれるため、国民年金保険料を別途納付する必要はありません(※3)。
 

子どもが保険料の納付猶予制度などを利用する場合

20歳になる子どもがフリーターなどで収入が少ない場合は、国民年金の保険料納付猶予制度を、学生の場合は学生納付特例制度を利用することができます。
 

1. 納付猶予制度を利用する

子どもの前年の所得(1月から6月までに申請する場合は前々年所得)が以下の計算式で計算した金額の範囲内の場合、本人が市区町村役場に申請して承認されますと、納付猶予制度により保険料の納付について猶予を受けられます(※4)。
 
(扶養親族等の数+1)×35万円+32万円
 
納付猶予制度を利用できるのは、20歳以上50歳未満の方に限られます。ただし、子どもが学生の場合はこの制度ではなく、以下の学生納付特例を利用することになります。
 

2. 学生納付特例制度を利用する

子どもが学生であって、本人の前年の所得が一定の基準以下であれば、居住地の市区町村役場や年金事務所などに申請することで、在学中の保険料の納付が猶予される学生納付特例制度の適用を受けられます(※5)。
 
所得基準:128万円+扶養親族等の数×38万円+社会保険料控除等

なお、学生納付特例の対象となる学校は日本年金機構ホームページの「学生納付特例対象校一覧」で確認することができます(※6)。
 

3. 猶予された保険料は早めに追納する

これらの制度を利用して保険料の納付を猶予された期間は、老齢基礎年金、障害基礎年金、遺族基礎年金を受け取るために必要な受給資格期間に算入されますが、老齢基礎年の年金額には反映されず、後から保険料を追納しないと将来の年金受給額が増えることはありません。
 
追納できる保険料は、追納の承認を受けた月の前10年以内の猶予期間分に限られ、また猶予を受けた期間の翌年度から起算して3年度目以降に追納する場合は、経過期間に応じた加算額が上乗せされます(※7)。
 
そのため、経済状況が改善されたときや、大学などの卒業後に就職した場合は、猶予された保険料を早めに追納するようにしましょう。
 

子どもの国民年金保険料を親が払う場合

子どもの国民年金保険料は、世帯主である親が代わりに納付することもできます。国民年金保険料は全額が社会保険料控除の対象となり、この場合は親が支払った保険料について、その年の親の所得から控除することができるので節税にもつながります(※2)。
 
なお、6ヶ月分や1年分、2年分の保険料をまとめて納付する前納制度を利用した場合、納付する保険料額が割引されますので検討するといいでしょう。
 

まとめ

学生やフリーターなどの子どもが20歳になると、国民年金の第1号被保険者として国民年金保険料を納付する必要があります。
 
ただし、子どもの収入が一定額以下の場合や、一定の要件を満たす学生である場合は、納付猶予制度や学生納付特例制度を利用して保険料の納付の猶予を受けることができます。猶予された期間の保険料については、追納することで将来受給する老齢基礎年金額を増やせるため、状況に応じて早めの追納をおすすめします。
 
また、子どもの保険料を親が支払った場合は社会保険料控除により、親の所得税や住民税の節税効果が期待できます。
 

出典

(※1)日本年金機構 た行 第1号被保険者
(※2)日本年金機構 国民年金保険料
(※3)日本年金機構 た行 第2号被保険者
(※4)日本年金機構 国民年金保険料の免除制度・納付猶予制度
(※5)日本年金機構 国民年金保険料の学生納付特例制度
(※6)日本年金機構 学生納付特例対象校一覧
(※7)日本年金機構 国民年金保険料の追納制度
 
執筆者:辻章嗣
ウィングFP相談室 代表
CFP(R)認定者、社会保険労務士

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