独立や転職した人は「年金の手続き」が必要? 手続きをしないとどうなる?
配信日: 2022.05.29
日本に住んでいる20歳以上60歳未満の方は、公的年金制度への加入が義務となっており、「年金制度に未加入」という状態は認められていません。では、会社を退職したら、どのような手続きが必要なのでしょうか。
この記事では、厚生年金保険の被保険者が独立、または転職した際の年金手続きについて解説します。
執筆者:遠藤功二(えんどう こうじ)
1級ファイナンシャルプランニング技能士(国家資格)CFP(R) MBA(経営学修士)
三菱UFJモルガン・スタンレー証券とオーストラリア・ニュージーランド銀行の勤務経験を生かし、お金の教室「FP君」を運営。
「お金のルールは学校では学べない」ということを危惧し、家庭で学べる金融教育サービスを展開。お金が理由で不幸になる人をなくすことを目指している。
公的年金制度の第1号~3号被保険者とは?
日本に住んでいる20歳以上60歳未満の方は、公的年金制度の第1号~第3号被保険者のいずれかに該当します。20歳以上60歳未満で厚生年金保険の加入者である第2号被保険者以外の方は、第1号または第3号被保険者となります。
第1号被保険者は国民年金保険料を納付する必要がありますが、第2号被保険者に扶養されている一定の条件を満たす方が該当する第3号被保険者の場合、自身で年金保険料を納付する必要はありません。
一方、厚生年金保険の適用事業所で働く方は第2号被保険者、すなわち厚生年金保険加入者となります。株式会社などの法人、または農林漁業やサービス業などを除く常時5人以上の従業員を雇っている個人の事業所は、厚生年金の強制適用事業所に当たります。
また、強制適用事業所以外であっても、一定の条件を満たした上で事業主が申請することにより、任意適用事業所となっている事業所もあります。
独立や転職をする場合、退職後に第1号〜第3号被保険者のいずれに該当するのかによって年金の手続きは異なりますが、ここでは第1号被保険者および第2号被保険者となるケースについて説明します。
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第1号被保険者になる場合
独立して個人事業主になる場合や、厚生年金保険の適用事業所以外の会社に転職する場合は、国民年金の第1号被保険者に該当します。
また、退職前は扶養している配偶者が第3号被保険者だったケースでは、第2号被保険者から第1号被保険者になると同時に、配偶者も第1号被保険者に変更する必要があります。
なお、退職後に第2号被保険者となる予定があるものの、すぐに次の会社に入社するわけではない場合でも、退職時点でいったん第1号被保険者の加入手続きが必要です。第1号被保険者の加入手続きは、退職日の翌日から14日以内に住所地の市区役所、町村役場で行います。
手続きには基礎年金番号を明らかにできる書類(基礎年金番号通知書または年金手帳など)が必要となりますが、厚生年金保険の資格喪失届については前の勤務先が年金事務所に提出します。
独立や転職に伴い、収入が減少して国民年金保険料の納付が困難になった場合は、保険料免除制度・納付猶予制度を利用できる場合があります。
免除や納付猶予を申請せずに保険料が未納状態になってしまうと、将来の年金額が少なくなってしまうだけでなく、病気やケガなどで一定の障害状態になった場合の障害基礎年金や、死亡時の遺族基礎年金が支給されなくなる可能性があるので注意が必要です。
第2号被保険者となる場合
転職後も引き続き、厚生年金保険の適用事業所の従業員として働くほか、独立して法人事業所の会社役員になる場合や、個人事業所でも厚生年金の強制適用事業所や任意適用事業所となった場合は第2号被保険者になります。
厚生年金の保険料は、会社と働く方が労使折半で負担しますが、保険料の納付自体は会社が行います。独立起業して会社役員や強制適用事業所などの事業主になった方は、事業所の所在地を管轄する年金事務所に新規適用届を提出し、厚生年金保険料を納付するための手続きを行う必要があります。
退職後、すぐに転職先の従業員になり、第2号被保険者を継続する場合は、新しい勤務先が厚生年金保険の加入手続きを進めるため、勤務先の指示に従えば問題ありません。厚生年金保険の加入手続きの際には、個人番号か基礎年金番号の提出を勤務先から求められるのが一般的です。
まとめ
一定の短期滞在の方を除き、20歳以上60歳未満の日本の在住者は、公的年金制度上の第1号~第3号被保険者のいずれかに該当します。
独立や転職などを理由に退職した際、年金の手続きを忘れて保険料が未納になってしまうと、先述したように公的年金による社会保障が受けられなくなる可能性があります。退職後は、保険料の免除・猶予制度も含め、自身に必要な手続きを滞りなく済ませましょう。
出典・参考
日本年金機構 適用事業所と被保険者
日本年金機構 会社を退職した時の国民年金の手続き
日本年金機構 新規適用の手続き
執筆者:遠藤功二
1級ファイナンシャルプランニング技能士(国家資格)CFP(R) MBA(経営学修士)