更新日: 2022.05.30 厚生年金

【2022年4月年金改正(3)】在職定時改定とは? 65歳以上のサラリーマンの年金額がアップする仕組み

執筆者 : 西岡秀泰

【2022年4月年金改正(3)】在職定時改定とは? 65歳以上のサラリーマンの年金額がアップする仕組み
2022年4月施行の年金制度改正法に関する解説シリーズの3回目です。改正法では、65歳以上の厚生年金に加入するサラリーマンなどの年金支給額が増える「在職定時改定」という仕組みが新設されました。
 
今回の記事では、在職定時改定の仕組みについて解説します。年金額が増えるタイミングや計算方法も紹介しますので、定年後の働き方を考えるときの参考にして下さい。

【PR】SBIスマイルのリースバック

おすすめポイント

・自宅の売却後もそのまま住み続けられます
・売却金のお使いみちに制限がないので自由に使えます
・家の維持にかかるコスト・リスクが無くなります
・ご年齢や収入に制限がないので、どなたでもお申し込みいただけます

西岡秀泰

執筆者:西岡秀泰(にしおか ひでやす)

社会保険労務士・FP2級

老齢厚生年金支給額が決まる4つのタイミング

老齢厚生年金の支給額は、厚生年金の加入記録をもとに計算します。年金をもらいながら厚生年金に加入している人は、次の4つのタイミングで年金額が決定・改定されます。
 

・タイミング(1):特別支給の老齢厚生年金額の決定

「特別支給の老齢厚生年金」を受給できる人は、受給開始年齢(※)に到達したときに「受給開始年齢に達する前までの厚生年金の加入記録」をもとに支給額が決定します。
 
※年金の支給開始は、受給開始年齢に到達した月の翌月からです。
 
特別支給の老齢厚生年金を受給できるのは次の人です。


・男性:1961年4月1日以前に生まれた人
・女性:1966年4月1日以前に生まれた人

・タイミング(2):老齢厚生年金額の決定と65歳改定

65歳になったとき(※)、「65歳に達する前までの厚生年金の加入記録」をもとに65歳以降の老齢厚生年金の支給額が決定します。すでに特別支給の老齢厚生年金を受給している人は、支給額が改定されます。
 
※年金の支給開始または改定後の年金支給は、65歳に到達した月の翌月からです。
 

・タイミング(3):退職改定

65歳以降も仕事を続け退職した人は、退職した月(※)に「退職前までの厚生年金の加入記録」をもとに支給額が決定します。
 
※改定後の年金支給は、退職した月の翌月からです。
 

・タイミング(4):70歳改定

70歳まで(または70歳以降も)仕事を続けた場合、70歳に達した月(※)に「70歳に達する前までの厚生年金の加入記録」をもとに支給額が改定されます。
 
※改定後の年金支給は、70歳に到達した月の翌月からです。
 
厚生年金の加入は70歳までで、厚生年金保険料の支払いも終了します。
 

【PR】SBIスマイルのリースバック

おすすめポイント

・自宅の売却後もそのまま住み続けられます
・まとまった資金を短期間で手に入れられます
・家の維持にかかるコスト・リスクが無くなります
・借り入れせずに資金を調達できます

65歳以上は在職定時改定によって支給額が改定される

在職定時改定が適用されるのは、年金をもらいながら仕事を続けている65歳以上70歳未満の人です。在職定時改定の仕組みや改定時期について説明します。
 

・在職定時改定により毎年年金が増える

従来、65歳以降も仕事を続けた場合、65歳以降に支払う保険料が老齢厚生年金の支給額に反映(支給額の改定)するのは、退職時または70歳時だけでした。つまり、保険料は納めているのに、退職または70歳まで年金額は増えない、ということです。
 
在職定時改定の新設により、65歳以降毎年、それまでに支払った保険料を反映して年金額が改定されることになりました。つまり、仕事を続けると毎年年金額が増えるということです。
 

・在職定時改定は毎年10月

在職定時改定が行われるのは、毎年10月です。9月1日時点で厚生年金に加入している人は、「前年の9月から今年の8月までの厚生年金加入記録」をもとに支給額が改定されます。
 

・在職定時改定によって増える年金額

在職定時改定によって年金額はいくら増えるのでしょう? これまでの厚生年金加入記録と直近の報酬額によって異なりますが、モデルケースでおおよその年金額を計算してみましょう。
 

(モデルケースA)

・老齢厚生年金額120万円
・厚生年金加入期間30年
・現在の報酬はこれまでの平均報酬と同額

 
30年間加入して年金額が120万円です。年金額は加入期間と報酬に比例するため、1年間に増額する年金額は次の通り概算できます。
 
・増額する年金額=120万円÷30年=4万円
 
このケースでは、65歳以降の年金額は1年長く働くごとに4万円増額します。
 

(モデルケースB)

・老齢厚生年金額120万円
・厚生年金加入期間40年
・現在の報酬はこれまでの平均報酬の半額

 
報酬が半額になったため、増額する年金額の概算は次の通りです。
 
・増額する年金額=120万円÷40年÷2=1万5000円
 
1年長く働くごとに増える年金額は1万5000円です。65歳以降の報酬が減ったことなどから、モデルケースAと比較して増額幅は小さくなります。
 

在職定時改定の注意点

最後に、在職定時改定の注意点を2つ紹介します。
 

・注意点(1):在職老齢年金による支給停止額が増える

報酬と老齢厚生年金(報酬比例部分)の合計が月47万円を超えて支給停止されている人は要注意です。在職定時改定によって年金額が増えることにより、支給停止額が増えるケースがあります。
 

・注意点(2):繰下げした場合には改定されない

老齢厚生年金の繰下げ待機中は、在職定時改定が行われません。繰下げ受給したときの年金額は、在職定時改定制度があってもなくても同額です。
 
ただし、繰下げ受給後も厚生年金に加入していれば、受給後最初の10月に「65歳以降今年の8月までの厚生年金加入記録」をもとに支給額が改定されます。
 

65歳以降も仕事を続ければ在職定時改定で毎年の年金額は増える

2022年4月からの在職定時改定の新設により、65歳以降も厚生年金に加入していれば、退職時や70歳時以外でも毎年老齢厚生年金は増えます。
 
65歳以降も仕事を続けることで将来の年金額を増やすとともに、在職定時改定を活かして収入を増やし、老後資金の取り崩しを減らす効果が期待できます。
 

出典

日本年金機構「令和4年4月から年金制度が改正されます」
日本年金機構「令和4年4月から在職定時改定制度が導入されます」
日本年金機構「特別支給の老齢厚生年金」
日本年金機構「老齢厚生年金の受給要件・支給開始時期・年金額」
日本年金機構「は行報酬比例部分」
日本年金機構「65歳以後の在職老齢年金の計算方法」
 
執筆者:西岡秀泰
社会保険労務士・FP2級