更新日: 2022.06.01 厚生年金

【年金相談】月の途中で退職し、転職しました。厚生年金保険の保険料はどのように計算されるのでしょうか?

【年金相談】月の途中で退職し、転職しました。厚生年金保険の保険料はどのように計算されるのでしょうか?
Aさんは35歳。月の途中で退職し、その後転職しました。このような場合、厚生年金保険がどうなるのか気になっています。どのように計算されるのでしょうか?
三藤桂子

執筆者:三藤桂子(みふじけいこ)

社会保険労務士、1級ファイナンシャル・プランニング技能士、FP相談ねっと認定FP、公的保険アドバイザー、相続診断士

大学卒業後、公務員、専業主婦、自営業、会社員、シングルマザーとあらゆる立場を経験した後、FPと社会保険労務士の資格を取得し、個人事業主から社会保険労務士法人エニシアFP を設立。

社会保険労務士とFP(ファイナンシャルプランナー)という二刀流で活動することで、会社側と社員(個人)側、お互いの立場・主張を理解し、一方通行的なアドバイスにならないよう、会社の顧問、個別相談などを行う。

また年金・労務を強みに、セミナー講師、執筆・監修など首都圏を中心に活動中(本名は三角桂子)。

https://sr-enishiafp.com/

厚生年金保険の加入

法人の会社に正社員で入社した場合、会社の規模にかかわらず厚生年金保険(社会保険)に加入(資格を取得)します。正社員でない人も要件に該当する人は加入しなければなりません。加入の手続きは会社が行い、厚生年金保険料(以下、保険料)は毎月の給与や賞与から控除(天引き)されます。
 
保険料は原則、入社した日に加入(被保険者資格を取得)し、退職日の翌日に喪失します。ただし、保険料は月単位で計算するため、保険料の支払いは月末に会社に在籍していたかどうかで退職月の保険料の有無が変わります。
 

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月の途中で退職する場合

厚生年金の被保険者資格を取得した場合、保険料は月単位で計算するので、資格取得した月の保険料から支払う必要があります。給与計算の締め日や支払日によっても変わりますが、多くの会社では資格取得した翌月に支給される給与から保険料を控除します。
 

<例1>給与計算が毎月末日締め、翌月20日が給与支払いの会社に勤めた場合

株式会社Xでは給与の支払いについて、毎月末日締め翌月20日支払いとなっています。Aさんが4月1日に入社した場合、4月分の保険料の支払いは翌月5月20日の給与から控除されます。
 
Aさんは6月29日に退職することになりました。Aさんの6月分の保険料の支払いは月の途中となるため、保険料は5月分までとなり、最後の給与である7月20日に保険料は控除されません。
 

<例2>給与計算が毎月末日締め、当月25日が給与支払いの会社に勤めた場合

株式会社Yでは給与の支払いについて、毎月末日締め当月25日支払いとなっています。Aさんが5月10日の月の途中入社した場合、保険料の支払いは入社月の5月分からとなり、保険料は翌月の6月25日の給与から控除されます。
 
Aさんは7月30日に退職することになりました。Aさんの退職日は月の途中であり、保険料の支払いは6月分までです。給与からの保険料控除は7月25日までとなります。したがって最後の給与では保険料は控除されません。
 

月末に退職する場合

月末に退職した場合はどうなるのでしょうか?
 
退職日の翌日である翌月1日が資格喪失日となるため、退職した月分までの保険料を納める必要があります。この場合、給与計算の締め切り日によっては退職時の給与から2ヶ月分の社会保険料が控除される場合があります。
 

<例1>給与計算が毎月末日締め、翌月20日が給与支払いの会社に勤めた場合

株式会社Xでは給与の支払いについて、月末締め翌月20日支払いとなっています。Aさんが4月1日に入社した場合、4月分の保険料の支払いは翌月5月20日の給与から控除されます。
 
Aさんは6月30日に退職することになりました。Aさんは6月分の保険料まで納付するため、7月20日の給与まで保険料が控除されます。
 

<例2>給与計算が毎月末日締め、当月25日が給与支払いの会社に勤めた場合

株式会社Yでは給与の支払いについて、月末日締め当月25日支払いとなっています。Aさんが5月10日に途中入社した場合、保険料の支払いは5月分の保険料を翌月の6月25日から控除されます。
 
Aさんは7月31日に退職することになりました。Aさんの保険料の支払いは7月分までとなるため、本来なら8月25日の給与で保険料が控除されます。しかし、基本的な給与の支払いが7月25日のため、8月25日の給与では保険料を控除できるだけの給与の支払いがない可能性があります。
 
7月25日の給与から本来納付すべき6月分の社会保険料に加えて、7月分の保険料も合わせて2ヶ月分を控除できます。
 

転職する際の注意点

転職をすることになったら、以下のことに注意しましょう。
 
1. 退職日が月末と途中とで保険料の納付月が1ヶ月変わってきます。また、給与計算の締め日や支給日によって、自分が、何月分までの保険料を納付したのか理解していないと、転職時に1ヶ月の空白期間(未納)が生じてしまう可能性もあります。
 
つまり、月末退職以外の退職、月の途中に退職の場合、次の会社にすぐ就職するからと放置すると1ヶ月の空白期間(未納)が生じてしまいます。
 
2. 入社した月に退職した場合は前段の例と違う場合があります。つまり、厚生年金保険の資格を取得した月内に被保険者資格を喪失した場合は、厚生年金保険料の納付が必要になります。これを「同月得喪」といいます。
 
ただし、厚生年金保険の資格を取得した月に被保険者資格を喪失し、さらに同月に厚生年金保険の資格、または国民年金(第2号被保険者を除く)の資格を取得した場合は、先に喪失した厚生年金保険料の納付は不要となり還付(※)されます。
 
この場合、年金事務所から対象の会社あてに、厚生年金保険料の還付についてのお知らせが送付されます。厚生年金保険料の還付後、被保険者負担分は会社から被保険者であった人へ還付されます。
 
※還付されるのは厚生年金保険料です。健康保険料は還付されません。
 

まとめ

年金記録に空白期間ができると、将来、自分が受け取る老齢年金の額が減ってしまうだけでなく、万が一の保障である障害年金の要件を満たさなくなる可能性があります。
 
毎年、自身の誕生日月に日本年金機構から届く「ねんきん定期便」には、最近の13ヶ月の保険料納付実績が記載されています。Aさんのように転職した翌年は特に注意し、ねんきん定期便で納付状況を確認し、空白期間(未納)がないよう確認してください。
 

出典

日本年金機構 Q 月の途中で入社したときや、退職したときは、厚生年金保険の保険料はどのようになりますか。
 
執筆者:三藤桂子
社会保険労務士、1級ファイナンシャル・プランニング技能士、FP相談ねっと認定FP、公的保険アドバイザー、相続診断士

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