【年金比較】学生時代に納めなかった「国民年金」。「満額」納めた人と比べて将来の受給額はどう変わる?

配信日: 2022.06.09

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【年金比較】学生時代に納めなかった「国民年金」。「満額」納めた人と比べて将来の受給額はどう変わる?
日本国内に住んでいる人であれば、20歳から60歳になるまでの40年の長きにわたって国民年金への加入義務があります。しかし、20歳代前半であればまだ学生である人も多く、収入によっては保険料を納めることが厳しいかもしれません。
 
そのような場合には「学生納付特例制度」を利用して保険料納付の猶予を受けることができます。もし、猶予を受けていた保険料を結局納めなかった場合、将来の年金額はどうなるのでしょうか?
小山英斗

執筆者:小山英斗(こやま ひでと)

CFP(日本FP協会認定会員)

1級FP技能士(資産設計提案業務)
住宅ローンアドバイザー、住宅建築コーディネーター
未来が見えるね研究所 代表
座右の銘:虚静恬淡
好きなもの:旅行、建築、カフェ、散歩、今ここ

人生100年時代、これまでの「学校で出て社会人になり家庭や家を持って定年そして老後」という単線的な考え方がなくなっていき、これからは多様な選択肢がある中で自分のやりたい人生を生涯通じてどう実現させていくかがますます大事になってきます。

「未来が見えるね研究所」では、多くの人と多くの未来を一緒に描いていきたいと思います。
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学生は保険料の免除はないが猶予は可能

国民年金の保険料を納めることが経済的に困難になった場合などに、それを救済するための制度として「国民年金保険料の免除制度・納付猶予制度」があります。
 
免除制度では、一定の要件を満たすことで保険料の納付が免除されますが、将来の年金額はその分減額されます。しかし、この制度を学生は利用できませんので、学生が保険料の免除を受けることはできません。
 
学生の場合は、保険料を納めることが厳しいときに、納付猶予制度と似たような制度で「学生納付特例制度」を利用することができます。この制度を利用することで、本来納めなければならない保険料の納付を先延ばしにすることができます。
 
学生納付特例制度の対象となる学生は、この特例を受けようとする年度の前年の所得が以下の所得基準以下であるなどの要件を満たすことが必要です。計算対象の所得には家族の分は含まれません。
 

■所得基準(申請者本人のみ)

128万円(令和2年度以前は118万円)+扶養親族等の数×38万円+社会保険料控除等

 
学生といってもさまざまな学校があるかと思います。この学生納付特例制度を受けるためにはその学校が学生納付特例制度の対象校となっている必要があります。日本年金機構の「国民年金保険料の学生納付特例制度」のホームページで対象校の確認ができます。
 

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猶予を受けていた保険料を納めなければ年金額は減る

学生の間に学生納付特例で保険料納付の猶予を受けていた人が、社会人となり働くようになってから国民年金の保険料を納め始めたとしても、猶予期間中分の保険料を結局納めなかった場合、将来年金をもらうようになったときに年金額(老齢基礎年金)はどうなるでしょうか?
 
例えば、大学生が20歳になってから22歳で卒業するまでの2年間、保険料納付の猶予を受けていた場合で、その分を結局納めなかった場合の将来の年金額と、満額で年金をもらえる場合の比較をしてみます。
 
試算は満額(40年間(480ヶ月)保険料を納めていた場合)でもらえる令和4年度の老齢基礎年金額を基にします。


■令和4年度の老齢基礎年金額(満額):77万7800円

■2年間猶予されていた保険料を結局納めなかった場合

77万7800円×(480ヶ月-24ヶ月)÷480ヶ月 = 73万8910円

満額の受給額と比べると、年間で3万8890円減少することがわかります。
 

老齢基礎年金額を増やすための追納制度

学生納付特例制度により納付猶予を受けていた期間の保険料については、後から納付することにより、老齢基礎年金の年金額を増やすことができます。これを「追納」といいます。
 
ただし、追納ができるのは追納が承認された月の前10年以内に限られます。それを過ぎたものは追納できなくなりますので注意が必要です。
 
また、納付猶予を受けた期間の翌年度から起算して、3年度目以降に保険料を追納する場合は、学生納付特例の承認を受けた当時の保険料額に経過期間に応じた加算額が上乗せされることにも注意が必要です。
 


出典:日本年金機構「国民年金保険料の追納をおすすめします!」
 
上記の表からは、例えば学生納付特例の場合で「平成24年4月~平成25年3月分」に納付猶予となっていた保険料を2023年3月31日までに追納する場合の保険料が1万5220円となっています。当時の保険料は月々1万4980円でしたので、240円程追納分の保険料が高いことがわかります。
 
追納する場合には、可能なかぎり納付猶予を受けた期間の翌年度から起算して2年度以内にする方が、加算額がないため負担が少なくなります。
 

学生納付特例制度を利用するその他のメリット

学生納付特例制度には経済的に保険料を納めるのが困難なときの支払い負担を軽減することや、追納により後から年金額を増やすことができるといったメリット以外にも、次のようなメリットがあります。
 

受給資格期間に算入される

国民年金の老齢基礎年金を受給できる要件の1つに「10年以上の保険料納付済期間があること」という「受給資格期間」があります。学生納付特例制度を使った保険料納付が猶予されている期間は、この受給資格期間に算入されます。
 
保険料納付猶予中は実際には保険料を納めていないので、納めなかった分は将来の年金額は減ることになりますが、受給資格期間には参入されることで「10年以上」という期間の条件にはプラスとなります。
 

障害基礎年金がもらえる

学生納付特例制度利用中に病気やけがで障害が残ったときには、障害基礎年金を受け取ることができます。制度を利用せずに保険料を未納にしているような場合、障害基礎年金を受け取れなくなる可能性がありますので注意が必要です。
 

所得税・住民税が軽減される

保険料納付の猶予を受けていた分を追納するときは、その年の所得から社会保険料控除により所得税・住民税が軽減されます。
 

学生納付特例を受けるための申請を忘れずにしましょう

学生納付特例制度は学生時代の経済的負担を軽減するメリットなどがある一方で、保険料納付の猶予を受けていたものを追納せずにいると、将来の年金額が減ることがわかりました。保険料納付の猶予を受けたときは、追納制度もうまく利用して将来の年金額もしっかり増やすようにしましょう。
 
いずれの制度も自分で「申請」することが必要です。申請せずにいると、これまで見てきたメリットを受けることができません。保険料を納めることが経済的に困難なときは、忘れずに申請するようにしましょう。
 

出典

日本年金機構 国民年金保険料の学生納付特例制度
日本年金機構 国民年金保険料の追納制度
日本年金機構 国民年金保険料の変遷
日本年金機構 国民年金保険料の追納をおすすめします!
 
執筆者:小山英斗
CFP(日本FP協会認定会員)

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