更新日: 2022.06.14 その他年金
夫が亡くなり実家に戻って生活を始めたら、遺族年金は受け取れなくなるの?
生活費の確保や住居費のことなどを考えて、残された妻や子どもはそれまで住んでいた自宅を離れ、妻の実家で生活を始めることもあるかもしれません。そのようなときでも、遺族年金は受け取れるのでしょうか?
遺族年金の給付を受けたい妻のケースで、確認していきましょう。
執筆者:小山英斗(こやま ひでと)
CFP(日本FP協会認定会員)
1級FP技能士(資産設計提案業務)
住宅ローンアドバイザー、住宅建築コーディネーター
未来が見えるね研究所 代表
座右の銘:虚静恬淡
好きなもの:旅行、建築、カフェ、散歩、今ここ
人生100年時代、これまでの「学校で出て社会人になり家庭や家を持って定年そして老後」という単線的な考え方がなくなっていき、これからは多様な選択肢がある中で自分のやりたい人生を生涯通じてどう実現させていくかがますます大事になってきます。
「未来が見えるね研究所」では、多くの人と多くの未来を一緒に描いていきたいと思います。
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目次
遺族年金には2つの種類がある
遺族年金は、家族の生活を支えている人が亡くなったときに、残された遺族に給付される年金です。遺族年金には、亡くなった人の年金の加入状況などによって「遺族基礎年金」と「遺族厚生年金」の2つの種類があります。
遺族基礎年金は国民年金加入者が対象になりますが、遺族厚生年金は会社員や公務員といった厚生年金加入者が対象です。
また、給付を受けられるかどうかは加入状況や受給要件によって異なり、遺族基礎年金もしくは遺族厚生年金のいずれか一方だけが給付される場合もあれば、要件を満たすことで両方が給付される場合もあります。
遺族年金の給付の対象となる遺族の範囲は図表1のようになり、遺族の中で最も優先順位が高い人が遺族年金を受け取ることができます。
図表1
出典:日本年金機構 「遺族年金ガイド 令和4年度版」
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遺族年金を受け取るための亡くなった夫の要件
遺族年金には亡くなった人(被保険者)の受給要件があり、亡くなった夫が加入していた年金ごとに、以下のいずれかの要件に該当している必要があります。
(1)亡くなったときに国民年金の被保険者であった
(2)国民年金の被保険者であった60歳以上65歳未満の人で、日本国内に住所があった
(3)老齢基礎年金の受給権者であった
(4)老齢基礎年金の受給資格を満たしていた
(1)亡くなったときに厚生年金保険の被保険者であった
(2)厚生年金の被保険者期間に初診日がある病気やけがが原因で、初診日から5年以内に亡くなった
(3)老齢厚生年金の受給権者であった
(4)老齢厚生年金の受給資格を満たしていた
(5)1級・2級の障害厚生(共済)年金を受け取っていた
上記の遺族基礎年金と遺族厚生年金の受給要件のうち、(1)と(2)については、いずれも死亡日の前日で保険料納付済期間(免除期間を含む)が国民年金加入期間の3分の2以上あることなど、保険料の納付要件を満たす必要もあります。
なお、令和8年3月末日までは特例として、死亡日を含む月の前々月まで直近1年間に保険料の未納がなければいいことになっています。また、いずれも(3)と(4)については、保険料納付済期間、保険料免除期間および合算対象期間を合算した期間が25年以上ある人に限られます。
妻の遺族年金の受給要件
遺族年金の給付を受けるためには、妻にも受給要件があります。それぞれの要件をみていきましょう。
■遺族基礎年金
子がいる妻で、亡くなった夫によって生計を維持されていたことが受給要件となります。ここでの「子」とは、以下のいずれかに該当する子どもです。
・18歳到達年度の3月31日までにある未婚の子
・20歳未満で障害年金の障害等級1級または2級の状態にある子
また、「生計を維持されていた」というのは原則、以下の条件を満たす場合です。
・亡くなった人と生計を同じくしていた(同居していること。別居していても仕送りを受けている、健康保険の被扶養者である場合などは認められる)
・前年の収入が850万円未満である、または所得が655万5000円未満であること
■遺族厚生年金
亡くなった夫によって生計を維持されていた妻であれば受給することができます。「生計を維持されていた」という条件は遺族基礎年金と同様ですが、子がいない30歳未満の妻の場合、受給できる期間は5年間のみとなります。
妻が遺族年金の給付を受けられなくなる条件
遺族年金の給付を受けている妻が、以下のいずれかに該当したときは、遺族年金を受け取る権利がなくなります。
(1)本人が死亡した
(2)婚姻した(内縁関係を含む)
(3)直系血族または直系姻族以外の人の養子となった
(4)遺族基礎年金の受給権を有している子が以下のいずれかに該当した
・死亡した
・婚姻した(内縁関係を含む)
・受給権者以外の人の養子になった
・亡くなった人との養子縁組を解消(離縁)した
・妻と生計を同じくしなくなった
・18歳になった年度の3月31日に到達した(障害等級1級・2級に該当する障害の状態にあるときは20歳に到達した)
・18歳になった年度の3月31日後、20歳未満で障害等級1級・2級の障害の状態に該当しなくなった
(1)本人が死亡した
(2)婚姻した(内縁関係を含む)
(3)直系血族または直系姻族以外の人の養子となった
(4)夫が亡くなったときに30歳未満で子のいない妻が、遺族厚生年金を受け取る権利を得てから5年を経過した
(5)遺族基礎年金・遺族厚生年金を受け取っていた妻が、30歳に到達する前に遺族基礎年金を受け取る権利がなくなり、その権利がなくなってから5年を経過した
遺族年金の受給権を失権した場合、遺族基礎年金は該当した日から14日以内、遺族厚生年金は10日以内に年金事務所、または街角の年金相談センターへの届け出が必要となります。
実家に戻ったり、旧姓に戻した場合はどうなる?
妻が夫の死亡後に実家へ戻った場合でも、遺族年金の給付は受けられるのでしょうか?
この点について、給付を受けられなくなる条件に住所の変更は該当しないため、妻が実家に戻っても遺族年金の給付は受け続けることができます。
では、夫の死亡後に旧姓に戻した場合はどうでしょうか?
こちらについても、実家の元の戸籍に戻る「復籍」をして旧姓に戻った場合でも遺族年金の受給権は失権しないため、妻は遺族年金の給付を引き続き受けられます。
妻が亡くなった場合の夫に対する遺族年金の給付
ここまでは夫に万が一のことがあった場合、残された妻に対する遺族年金の給付に関して説明してきましたが、妻に万が一のことがあった場合にも、夫に対して遺族年金の給付が行われることがあります。
遺族年金の受給対象となる遺族の範囲には「配偶者」とあるように、妻を亡くした夫にも同様の受給要件が当てはまります。配偶者には、婚姻の届け出はしていなくても、事実上の婚姻関係と同様の事情にある内縁の配偶者も含まれます。
ただし、遺族厚生年金の受給対象者が夫の場合は、妻の死亡時に55歳以上の人に限られるなど、夫独自の条件があるので注意が必要です。
また、遺族厚生年金では受給額についても、40歳から65歳未満で生計を同じくしている子がいない妻など要件に該当する場合、一定の年額が加算される中高齢寡婦加算といった、妻だけが対象となるものもあります。
まとめ
公的年金には遺族年金以外にも老齢年金や障害年金がありますが、それらが被保険者本人に給付されることに対して、遺族年金は亡くなった被保険者の遺族が給付を受けます。
亡くなった人の年金の加入状況などのほか、遺族年金の受給要件は配偶者や子、父母や孫といった受給対象者となる遺族ごとに異なってきますので、しっかり確認しておきしましょう。
出典
日本年金機構 遺族年金ガイド 令和4年度版
執筆者:小山英斗
CFP(日本FP協会認定会員)