更新日: 2022.06.17 その他年金

摂食障害やうつ病になった場合、障害年金は申請できる?

執筆者 : 遠藤功二

摂食障害やうつ病になった場合、障害年金は申請できる?
元気に働いていた人が突然、休職してしまうことがあります。その原因の1つに心の病も含まれますが、仕事に対するプレッシャーや人間関係などの悩みによって、心が病んでしまう方は少なくありません。
 
心の病は悪化すると精神の障害となり、仕事だけでなく日常生活にまで支障が出ることがあります。
 
日本の公的年金制度には、精神の障害と認定された方が受け取れる、障害年金という制度があります。
 
この記事では、心の病の中でも一般的に知られることが多い摂食障害や、うつ病になった際に障害年金が受け取れるのかどうかについて解説します。
遠藤功二

執筆者:遠藤功二(えんどう こうじ)

1級ファイナンシャルプランニング技能士(国家資格)CFP(R) MBA(経営学修士)

三菱UFJモルガン・スタンレー証券とオーストラリア・ニュージーランド銀行の勤務経験を生かし、お金の教室「FP君」を運営。
「お金のルールは学校では学べない」ということを危惧し、家庭で学べる金融教育サービスを展開。お金が理由で不幸になる人をなくすことを目指している。

心の病は長引くことがある?

厚生労働省が発表している「病院報告(令和4年1月分概数)」によると、精神病床における平均在院日数(入院から退院までの期間の平均)は299.8日となっており、一般病床の平均在院日数である17.2日よりも圧倒的に長くなっています。
 
会社員などの方であれば、病気やけがで連続した3日間を含む4日以上の、給与が支払われない休業をした場合、直近1年間の標準報酬月額を基に算定した金額が最大で1年6ヶ月、健康保険から傷病手当金として支給されます。
 
一方、個人事業主の方などが加入している国民健康保険には、傷病手当金がないので注意が必要です。
 
うつ病などで長期の治療を経ても十分に回復せず、日常生活や仕事に支障が生じる状況が続いた場合は、精神の障害がある方として障害年金を受給できる可能性があります。
 
障害年金には、障害基礎年金と障害厚生年金の2種類がありますが、以下でそれぞれの受給要件や年金額について確認していきます。
 

障害基礎年金の受給要件

障害基礎年金の受給要件として、国民年金加入期間のほか、20歳未満または日本在住の60歳以上65歳未満の方で年金制度に加入していない期間に、障害の原因となった病気やけがの初診日があることが必要です。
 
また障害基礎年金は、障害認定日に障害等級表の1級または2級に該当している方が対象です。
 
障害認定日とは、初診日から1年6ヶ月が過ぎた日、または1年6ヶ月以内に病気やけがが治った(症状が固定された)日のことをいいます。
 
保険料の納付についての要件もあり、初診日の前日時点に、初診日が含まれる月の2ヶ月前までの被保険者期間で、国民健康保険料の納付済期間と免除期間を合計した期間が3分の2以上を占めている必要があります。
 
ただし、2026年3月末までは、初診日が65歳未満であれば、初診日が含まれる月の2ヶ月前までの1年間で保険料の未納がなければ、保険料の納付要件は満たしたことになります。
 

障害厚生年金の受給要件

障害厚生年金の受給要件は、厚生年金保険の加入期間中に障害の原因となった病気やけがの初診日があることです。
 
保険料の納付要件は前述の障害基礎年金と同じですが、障害厚生年金では障害の状態について、障害認定日に障害等級表の1級から3級に該当している方が対象となります。
 
なお、初診日から5年以内に症状は治ってはいる(症状が固定されている)ものの、障害厚生年金の受給対象となる状態より軽い障害が残っており、障害等級表で定められた障害状態である場合には、障害手当金(一時金)が支給されます。
 

障害基礎年金の受給額

障害基礎年金の受給額(令和4年度)は以下のとおりです。
 

1級:97万2250円+子の加算額
2級:77万7800円+子の加算額

子の加算額:2人までは1人につき22万3800円、3人目から7万4600円
子の要件:18歳になった年度末までの方、および20歳未満で障害等級1級・2級に該当する方

 

障害厚生年の受給額

障害厚生年金の受給額(令和4年度)は以下のとおりです。

1級:報酬比例部分の年金額×1.25+配偶者加給年金額
2級:報酬比例部分の年金額+配偶者加給年金
3級:報酬比例部分の年金額(最低保障額 58万3400円)

障害手当金(一時金):報酬比例部分の年金額×2(最低保障額 116万6800円)
配偶者加給年金額:22万3800円(65歳未満の生計を維持する配偶者がいる場合に加算)

なお、障害厚生年金の1級・2級に該当する方は、障害基礎年金も合わせて受給できます。
 

障害年金の認定基準

日本年金機構の「国民年金・厚生年金保険 障害認定基準」には、精神の障害として「統合失調症、統合失調症型障害及び妄想性障害」「気分(感情)障害」「症状性を含む器質性精神障害」「てんかん」「知的障害」「発達障害」が記載されています。
 
障害の程度についておおまかにいうと、上記のうちで日常生活に常に援助が必要な状態を1級、日常生活に著しい制限を受ける状態を2級、労働に著しい制限を受ける状態を3級としています。3級に該当しない場合で労働に制限を受ける状態は、障害手当金の対象になる可能性があります。
 

摂食障害で障害年金は受け取れるのか

摂食障害は、前述した障害認定基準にその病名の記載がないため、障害年金支給の対象にはならないと考えられます。
 
しかし、摂食障害の原因として前述した障害があるケースでは、対象になる可能性があります。
 
障害年金の認定は線引きがあいまいなこともあるため、日本年金機構の「精神の障害に係る等級判定ガイドライン」を参考にするとともに、医師や社会保険労務士などの専門家に、自身の状態が障害年金の対象になるのか否かを相談する必要もあるでしょう。
 

うつ病で障害年金は受け取れるのか

厚生労働省のホームページによると、うつ病は気分障害の1つとされています。
 
気分障害は前述の障害認定基準に記載されているため、一定の条件を満たせば障害年金を受け取れる可能性があります。
 

まとめ

ここまで解説したとおり、精神障害のすべてが障害年金の対象になるとは限りません。また、自身が加入している年金制度や障害の程度によって、受給できる障害年金の種類と受給額が変わります。
 
制度の内容を把握し、受け取り損ねがないように気をつけましょう。
 

出典

厚生労働省 病院報告(令和4年1月分概数)
日本年金機構 国民年金・厚生年金保険 障害認定基準 8節/精神の障害
厚生労働省 みんなのメンタルヘルス総合サイト うつ病
厚生労働省 みんなのメンタルヘルス総合サイト 摂食障害
日本年金機構 障害年金ガイド 令和4年度版
日本年金機構 国民年金・厚生年金保険 精神の障害に係る等級判定ガイドライン
 
執筆者:遠藤功二
1級ファイナンシャルプランニング技能士(国家資格)CFP(R) MBA(経営学修士)

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