「年金前倒し受給」は本当にもったいないの? 60・65・70歳それぞれの年金受給額を比較
配信日: 2022.06.23
そこで今回は年金の受給方法について、自分に合った方法を選択するための解説をします。
高齢社会の現状は
令和3年度の日本の人口構成(12月確定値)は、15歳未満が1474万人(約12%)、15歳から64歳が7441万人(約59%)、65歳以上は3623万人(約29%)となり、総人口では1億2538万人となっています。(※1)
前年度に比べ、15歳未満の子供が26万人、15歳から64歳の働き手が62万人減った一方、65歳以上の高齢者は17万人増え、10人に3人弱が65歳以上の高齢者となっています。
こうした長寿社会を背景に、「働き方の問題」、「年金の問題」、「老後2000万円問題」などがクローズアップされてきました。今回はその中の年金について見ていきましょう。
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公的年金の種類と受給額は
公的年金には、「老齢基礎年金」と「老齢厚生年金」があります。「老齢基礎年金」は、40年(満額)掛けて受給額は約78万円ですので、「掛けた年数×2万円」でおおよその金額の目安が分かる計算になります。
一方、「老齢厚生年金」は、掛けた金額により受給額が変わりますので人それぞれとなります。厚生省の令和2年のデータで見てみると、公的年金受給者の「平均年金月額」は老齢厚生年金で14.6万円、老齢基礎年金で5.6万円となっています。(※2)
公的年金の繰上げ受給とは
公的年金(老齢基礎年金・老齢厚生年金)の受給は、原則65歳からですが、本人の希望により60歳から65歳までの期間で繰り上げて受け取ることができ、これを「繰上げ受給」と言います。
老齢基礎年金と老齢厚生年金は基本的には同時請求が必要です。また、老齢基礎年金のみの人の繰り上げは、原則全部繰り上げとなります。
受給期間を繰り上げると、受給額は減額されることになります。減額される年金額は、老齢基礎年金(振替加算は除く)および老齢厚生年金(加給年金は除く)に下記の減額率(令和4年4月改正以降の対象者の場合)を乗じて計算されます。
減額率は「0.4%×繰り上げ請求月から65歳に達する前月までの月数」で、仮に60歳から受給すると、最大24%(=0.4%×12月×5年)の減額となります。なお、受け取り請求した時点で年金は減額され、減額率は一生変わりません。
公的年金の繰下げ受給とは
また、公的年金(老齢基礎年金・老齢厚生年金)は、66歳から70歳までの間で繰り下げて受給することができ、これを「繰下げ受給」と言います。繰り下げた期間により年金額が増額されます。
なお、繰り下げについては、老齢基礎年金と老齢厚生年金は別々に繰り下げることができます。増額率は「0.7%×繰下げ受給を申請した翌月から70歳までの月数」で、70歳まで繰り下げた場合、最大42%(=0.7%×12月×5年)の増額となります。
また令和4年4月1日以降に70歳になる人は、75歳まで繰り下げることができるようになり、75歳での増額率は最大84%(=0.7%×12月10年)の増額となります。そして「繰下げ受給」の増額率は一生変わりません。
繰上げ受給・繰下げ受給の年金受給額比較は
年金受給額の比較を分かりやすくするために、具体例で比較してみましょう。
(条件1)会社員の夫「老齢厚生年金14.6万円」、専業主婦の妻「老齢基礎年金5.6万円」合計20万円を受給する夫婦とし、
(条件2)年金を受給する最終年齢を、平均寿命男性82歳・女性87歳の「平均85歳」とします。
このモデルケースで、「繰上げ受給」と「繰下げ受給」の受給額を単純計算し比較してみると、
(1)原則65歳で受給した場合の支給額は、
「20万円×12月×20年=4800万円」となります。
(2)60歳まで「繰上げ受給」した場合の支給額は、
「15.2万円×12月×25年=4560万円」となります。
(3)70歳まで「繰下げ受給」した場合の支給額は、
「28.4万円×12月×15年=5112万円」となります。
原則の65歳と比較してみると60歳まで繰上げ受給した場合は、240万円減、70歳まで繰下げ受給した場合の支給額は、312万円増となります。
ちなみに75歳まで繰り下げした場合で計算すると、「36.8万円×12月×10年=4416万円」となり、65歳での受給額との比較では384万円減になります。75歳まで繰り下げた場合、65歳での受給よりも受給額がプラスとなる分岐点は86歳時点となります。
したがって、年金を夫婦ともに85歳まで受給するという計算をした場合の受給額は、70歳までの繰り下げが一番高く、65歳、60歳、75歳の順となります。
まとめ
公的年金は老後を支える大切な資金になりますので、年金を受給する場合には、上記の受給額を参考にし、それぞれのライフスタイルに合わせて受給時期を考えましょう。
企業の定年も原則65歳となり、男女の平均寿命85歳までは20年あります。楽しい老後を過ごすために、金銭的なことも含め、健康に留意し、生きがいを見つけましょう。
出典
(※1)総務省統計局 人口推計(2021年(令和3年)10月1日現在)
(※2)令和2年度厚生年金保険・国民年金事業の概況(P8・P20)
執筆者:小久保輝司
幸プランナー 代表