「国民年金基金」は誰のためのどんな制度? メリット・デメリットも解説
配信日: 2022.06.29
国民年金基金は「国民年金」とも「厚生年金基金」とも違うものです。誰のためのどんな制度なのか、どんなメリットやデメリットがあるのか解説します。
執筆者:馬場愛梨(ばばえり)
ばばえりFP事務所 代表
自身が過去に「貧困女子」状態でつらい思いをしたことから、お金について猛勉強。銀行・保険・不動産などお金にまつわる業界での勤務を経て、独立。
過去の自分のような、お金や仕事で悩みを抱えつつ毎日がんばる人の良き相談相手となれるよう日々邁進中。むずかしいと思われて避けられがち、でも大切なお金の話を、ゆるくほぐしてお伝えする仕事をしています。平成元年生まれの大阪人。
国民年金基金は自営業者やフリーランスのための制度
国民年金基金は、自分でお金を払って積み立てておくことで、将来もらえる年金が増える制度の名称です。
加入の義務がある「国民年金」と違い、「国民年金基金」は加入するかどうか自分の意思で選べます。
国民年金基金に加入できるのは、おも主に自営業者やフリーランスなど「国民年金の第1号被保険者」の人です。
国民年金の第1号被保険者にあたる人は、会社員や公務員など「厚生年金」に加入している人に比べて、将来受け取れる年金が少なくなりがちです。国民年金基金は、その差を埋めるための制度として創設されました。
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国民年金基金のメリット
国民年金基金に加入すると、以下のようなメリットがあります。
■将来受け取れる年金が増える
国民年金基金では、一定額の積み立てを続けると、老後にそれに応じた金額を受け取ることができます。
老後に受け取れる金額は加入時点で確定していて、一生涯ずっと受け取り続けることができます。予測がしやすく、将来の資金計画を練りやすいでしょう。
例えば現在30歳の男性が国民年金基金で「A型」というタイプを選んで積み立てをする場合、毎月約1万円の積み立てを60歳まで続けると、65歳からは年間約24万円を受け取れます(※1)。
だいたい平均寿命(男性は81歳)より長生きすれば、受け取る金額の方が多くなる計算です(2022年6月現在)。
生きている限りずっと受け取れるので、長生きすればするほど金銭的なメリットが大きくなります。
ちなみに、年金を受け取る前や保証期間中に亡くなってしまったときは、遺族が「遺族一時金」を受け取れます。
■税金が安くなる
国民年金基金では、掛け金(積み立てるお金)の全額が「社会保険料控除」の対象です。つまり掛け金が多ければ多いほど、所得税や住民税の負担が軽くなるということです。
掛け金の金額は変更できますので、「売り上げが多くて税金が高くなりそうなときは多めに設定する」などして、節税に役立てることもできます。
例えば課税所得が約400万円の人が国民年金基金で年間30万円積み立てた場合、所得税と住民税が約9万円安くなります(※2)。
国民年金基金のデメリット
デメリットについても確認しておきましょう。
■一度始めたら途中でやめられない
国民年金基金は、一度加入したら途中で脱退できません。60歳もしくは65歳から年金として受け取るまでは、自分が積み立てたお金でも自由に引き出せない点に要注意です。
■インフレに弱い
国民年金基金は、受け取れる金額があらかじめ決まっています。運用結果次第で目減りする可能性がないことは、「安全」と捉えればメリットになりますが、「増えない」と捉えればデメリットにもなります。
もし老後までに大幅なインフレが起きてお金の価値が低くなってしまっていたら、「せっかく長年お金を自由に引き出せない状態でがんばって積み立ててきたのに、これだけしか受け取れない……。」と報われない気持ちになるかもしれません。
■iDeCo(イデコ:個人型確定拠出年金)の枠が減る
国民年金基金は、掛け金の上限が月6万8000円と決められています。ただ、これはiDeCoと合算したうえでの上限です。
例えば、国民年金基金で月6万円ずつ積み立てる場合、iDeCoでは月8000円しか積み立てられないということです。
国民年金基金に取り組んだ分、iDeCoの枠が減ってしまうため、「iDeCoにも取り組みたい」と考えているなら、バランスを考えて配分する必要があります。
まとめ
国民年金基金は、収入が不安定になりがちな自営業者やフリーランスなどが、老後の安心を手に入れるための制度です。
自営業者やフリーランスが節税しながら年金を増やせる制度としては、国民年金基金のほかにもiDeCoや小規模企業共済などもあります。
それぞれ一長一短がありますので、自分の希望や価値観にあわせて組み合わせるなどして、うまく利用していきましょう。
出典
(※1)国民年金基金 年金額シミュレーション
(※2)国民年金基金 加入によるメリット
国民年金基金 ホームページ
厚生労働省 国民年金基金制度
執筆者:馬場愛梨
ばばえりFP事務所 代表