更新日: 2022.07.04 その他年金

似て非なるもの!? 「加給年金」と「付加年金」の違いって何?

似て非なるもの!? 「加給年金」と「付加年金」の違いって何?
老齢年金の制度に「加給年金」と「付加年金」があります。この2つは一見して似たもののように思いがちですが、加給年金は厚生年金の制度、付加年金は国民年金の制度であり、まったく異なるものです。
 
そこで今回は、加給年金と付加年金の違いについて解説します。
辻章嗣

執筆者:辻章嗣(つじ のりつぐ)

ウィングFP相談室 代表
CFP(R)認定者、社会保険労務士

元航空自衛隊の戦闘機パイロット。在職中にCFP(R)、社会保険労務士の資格を取得。退官後は、保険会社で防衛省向けライフプラン・セミナー、社会保険労務士法人で介護離職防止セミナー等の講師を担当。現在は、独立系FP事務所「ウィングFP相談室」を開業し、「あなたの夢を実現し不安を軽減するための資金計画や家計の見直しをお手伝いする家計のホームドクター(R)」をモットーに個別相談やセミナー講師を務めている。
https://www.wing-fp.com/

厚生年金で扶養手当に相当する「加給年金」

「加給年金」は、厚生年金の被保険者期間が20年(注1)以上ある方が65歳に到達した時点(注2)で、その方に生計を維持されている一定の要件を満たした配偶者、または子がいるときに老齢厚生年金に加算される年金です(※1)。
 
(注1): 共済組合などの加入期間を除いた被保険者期間が、40歳(女性および坑内員・船員は35歳)以降で15~19年ある方も対象
 
(注2):65歳到達後に被保険者期間が20年(注1)以上となった場合は在職定時改定時、退職改定時(または70歳到達時)となる
 
なお、1級と2級の障害厚生年金にも配偶者の加給年金があります(※2)。
 

1. 加給年金の対象となる配偶者・子とは

加給年金の対象となるのは65歳未満の配偶者と、18歳到達年度の末日までの子、または1級・2級の障害状態にある20歳未満の子です。
 

2. 加算される年金額は

加算される年金額(令和4年度)は、下表のとおりです。
 
図表1

対象者 加給年金額 特別加算額(注3) 加給年金の合計額
配偶者 22万3800円 3万3100円
~16万5100円
25万6900円
~38万8900円
1人目・2人目の子 各22万3800円 各22万3800円
3人目以降の子 各7万4600円 各7万4600円

出典:日本年金機構 加給年金額と振替加算 を基に筆者作成
 
(注3):老齢厚生年金を受給している方の生年月日に応じて、配偶者の加給年金額に加算されます。例えば昭和18年4月2日以降生まれの場合、特別加算額は16万5100円、加給年金は合計38万8900円となります。
 

3. 加給年金が停止される条件とは

配偶者の加給年金は、配偶者が以下の年金を受け取る権利がある場合や受給している間は支給停止されます。
 

(1)老齢厚生年金(被保険者期間が20年以上、または共済組合などの加入期間を除いた期間が40歳以降、女性の場合は35歳以降で15年以上の場合に限る)、退職共済年金(組合員期間20年以上)を受け取る権利があるとき(注4)

(2)障害年金を受給している間

 
(注4):令和4年3月までは、対象となる老齢厚生年金や退職共済年金の受給権を有していても全額支給停止されている場合、加給年金が支給されていました。そのため経過措置として、令和4年3月時点で配偶者を対象とした加給年金が支給されている場合は、引き続き支給されることになっています。
 

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国民年金で老齢基礎年金に上乗せする「付加年金」

「付加年金」は、自営業の方など国民年金の第1号被保険者や、60歳以上で国民年金に任意加入している方が、定額の保険料に加えて付加保険料を納付することにより、将来受給する老齢基礎年金に上乗せされる年金です(※3)。
 

1. 付加保険料と付加年金の額は

付加保険料は定額の月額400円で、納付した月数に200円を掛けた額の付加年金が老齢基礎年金に上乗せされます。
 
付加年金の額=200円×付加保険料納付月数
 
例えば、毎月の国民年金保険料1万6590円(令和4年度)に400円の付加保険料を上乗せして、20~60歳までの40年間(480月)支払った場合、老齢基礎年金額77万7800円(令和4年度)に9万6000円の付加年金を受給することができるようになります。
 

毎月の保険料:1万6590円+400円=1万6990円
付加年金額(年額):200円×480月=9万6000円
受給できる年金額(年額):77万7800円+9万6000円=87万3800円

 

2. 付加年金の特徴は

付加年金は、老齢基礎年金と合わせて終身で受給することができます。老齢基礎年金には物価の変動に応じて年金額が改定される物価スライド制がありますが、付加年金は定額であるため物価の変動には対応しません。
 

3. 付加年金の申込方法と支払方法は

国民年金の第1号被保険者または任意加入被保険者であれば、お住まいの市区町村役場で申し込みの手続きをすることで、申し込み月分から付加保険料を納付できます。
 
付加保険料の納付期限は、翌月末日(休日・祝日の場合は翌営業日)ですが、納付期限を過ぎた場合でも期限から2年間は付加保険料を納めることが可能です。
 
なお、国民年金基金に加入している方は、付加保険料を納付することはできません。
 

まとめ

「加給年金」は、厚生年金受給者に対する扶養手当に相当する制度です。一方、「付加年金」は国民年金の第1号被保険者、任意加入被保険者を対象とした老齢基礎年金の上乗せ制度となっています。
 
年金にはさまざまな制度がありますので、疑問があれば日本年金機構のホームページで調べるか、お近くの年金事務所や市区町村役場に相談するとよいでしょう。
 

出典

(※1)日本年金機構 加給年金額と振替加算
(※2)日本年金機構 障害厚生年金の受給要件・請求時期・年金額

(※3)日本年金機構 付加年金

 
執筆者:辻章嗣
ウィングFP相談室 代表
CFP(R)認定者、社会保険労務士

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