更新日: 2022.08.16 国民年金

【年金相談】大学生の時の年金が未払いです。年金の受取額にどのような影響がありますか?(1)

執筆者 : 井内義典

【年金相談】大学生の時の年金が未払いです。年金の受取額にどのような影響がありますか?(1)
Aさんは35歳・会社員。「ねんきん定期便」を見て、大学生の時の年金が未払いになっていることに気がつきました。「学生納付特例制度」は利用していましたが、年金額にどのような影響があるのか心配とのこと。この点についてFPが全2回で解説します。
 
第1回目は、未払いだった場合の受給額への影響を取り上げます。
井内義典

執筆者:井内義典(いのうち よしのり)

1級ファイナンシャル・プランニング技能士、CFP(R)認定者、特定社会保険労務士、1級DCプランナー

専門は公的年金で、活動拠点は横浜。これまで公的年金についてのFP個別相談、金融機関での相談などに従事してきたほか、社労士向け・FP向け・地方自治体職員向けの教育研修や、専門誌等での執筆も行ってきています。

日本年金学会会員、㈱服部年金企画講師、FP相談ねっと認定FP(https://fpsdn.net/fp/yinouchi/)。

学生が受けられる学生納付特例

20歳になれば学生でも国民年金に加入する義務があり、国民年金第1号被保険者になります。そうなると、国民年金保険料(2022年度:月額1万6590円)を納付しなくてはなりませんが、学生で収入が少ない場合は学生納付特例制度による納付猶予が認められます。実際Aさんも学生納付特例の申請をしていました。
 
しかし、その納付猶予を受けた保険料は追納制度により10年以内に納付することもできるところ、Aさんの場合はその分について未払いになっているとのこと。このように追納しなかったままだとどうなるのでしょうか。
 

学生納付特例制度の意味

学生納付特例の申請をしている期間については保険料免除期間に算入され、老齢基礎年金の受給にあたって必要な10年(120月)の資格期間に含まれます。
 
また、障害年金や遺族年金の受給の際に問われる保険料納付要件についても、受給のために必要な保険料免除期間に算入されます(※障害年金の場合は初診日の前日、遺族年金の場合は死亡日の前日までに申請していることが条件)。学生納付特例の申請をしておらず、保険料が未納のままだった場合はこれらに算入されません。
 
国民年金制度の障害基礎年金や遺族基礎年金の額については定額(それぞれ【図表1】のとおり)で、学生納付特例で追納していない期間があることによって年金の減額はされません。そのため、当該申請は受給のためには大きな意味があるといえます。
 

 

追納していない期間分の老齢基礎年金は0円

一方、65歳からの老齢基礎年金は40年(480月)の保険料納付済期間があれば満額(2022年度:年間77万7800円)で受け取れます(【図表2】)。20歳から60歳までで、国民年金第1号被保険者で国民年金保険料を納付した期間(追納も含む)、厚生年金に加入して第2号被保険者となった期間、第2号被保険者の被扶養配偶者である第3号被保険者の期間は保険料納付済期間となります。
 
しかし、学生納付特例を受けて追納をしていなかった期間については、老齢基礎年金の額に1円も反映されません(【図表2】)。第1号被保険者で国民年金保険料の免除(法定免除、申請免除)を受けていた場合の保険料免除期間は、一部老齢基礎年金の額に反映(3分の1~8分の7)されますが、学生納付特例の期間(追納なし)はこれに含まれないことになっています。
 

 
そのため、大学卒業から60歳まで厚生年金に加入し、国民年金第2号被保険者となっても、このままでは20歳から60歳までで40年(480月)の保険料納付済期間がなく、満額にはなりません。77万7800円を480で割ると、約1620円です。
 
言い換えると、1ヶ月の納付済期間があれば年間1620円程度の年金が増える計算となります。約1620円に追納なしの月数を掛けると、満額よりいくら少なくなるかが算出されます。
 
このように、学生納付特例を受けて追納をしていないと、65歳になった時の老齢基礎年金の額が満額より少なくなってしまいます。しかし、その足りない分の年金を増やすことはできます。その点については次回取り上げることにします。
 
執筆者:井内義典
1級ファイナンシャル・プランニング技能士、CFP(R)認定者、特定社会保険労務士、1級DCプランナー

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