【年金相談】大学生の時の年金が未払いです。年金の受取額にどのような影響がありますか?(2)

配信日: 2022.08.17

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【年金相談】大学生の時の年金が未払いです。年金の受取額にどのような影響がありますか?(2)
35歳・会社員で「学生納付特例制度」の申請をした期間について、追納はしていなかったAさん。(1)では、未追納分があるために老齢基礎年金が満額に足りなくなることを取り上げましたが、今回はその足りない分の年金の増やし方について解説します。
井内義典

執筆者:井内義典(いのうち よしのり)

1級ファイナンシャル・プランニング技能士、CFP(R)認定者、特定社会保険労務士、1級DCプランナー

専門は公的年金で、活動拠点は横浜。これまで公的年金についてのFP個別相談、金融機関での相談などに従事してきたほか、社労士向け・FP向け・地方自治体職員向けの教育研修や、専門誌等での執筆も行ってきています。

日本年金学会会員、㈱服部年金企画講師、FP相談ねっと認定FP(https://fpsdn.net/fp/yinouchi/)。

老齢基礎年金を満額にするためには?

(1)で取り上げたとおり、老齢基礎年金は保険料納付済期間が40年(480月)あれば満額(2022年度:年額77万7800円)となります。学生時代の保険料を納めていなかったため満額に足りない場合、満額にするためには、60歳以降国民年金に任意加入する方法があります。
 
学生時代の国民年金第1号被保険者のように国民年金保険料(2022年度:月額1万6590円)を納付する方法です。60歳から65歳までの間で任意加入が可能となりますので、この期間中に40年に足りない月数分の国民年金保険料を納めると満額にすることができます(【図表1】)。
 

 

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60歳以降厚生年金に入ると基礎年金相当を増やせる

しかし、今の時代は60歳以降も引き続き会社に勤務していることもあるでしょう。60歳以降会社員として厚生年金に加入している場合は、国民年金の任意加入はできません。その場合は厚生年金保険料を負担しますが、老齢基礎年金は増やすことができません。厚生年金の加入による国民年金第2号被保険者期間で老齢基礎年金の計算対象となるのは20歳から60歳までだからです。
 
ただし、代わりに老齢厚生年金から経過的加算額という老齢基礎年金に相当する部分を増やすことができます(【図表2】)。Aさんの経過的加算額は、「1621円×厚生年金加入月数(上限480月)」(ア)から「77万7800円×20歳以上60歳未満の厚生年金加入月数/480月」(イ)を差し引いて計算します。
 
60歳以降に厚生年金に加入すると、(ア)が増える一方、(イ)が増えないことにより、経過的加算額が増額することになります。1ヶ月加入につき1621円増える計算で、(ア)の上限が480月となっているところから、最大で厚生年金としての被保険者期間(加入期間)が480月に達するまで増やせます。
 
22歳で大学を卒業して、62歳までちょうど40年厚生年金に加入すれば、老齢基礎年金と経過的加算額で合わせて77万8080円(2022年度の場合)受給できる計算となり、これが満額の老齢基礎年金に近い額です。もちろん、厚生年金加入によって、60歳前と同様、老齢厚生年金(報酬比例部分)も増やすことができます(こちらについては月数の上限はありません)。
 

 

追納していない場合は60歳になってから補える

学生時代の国民年金保険料について10年以内に追納していない以上は、今から過去にさかのぼって納付はできません。足りなかった分は60歳以降になってから補うことができ、Aさんの場合は25年後です。
 
足りない分の年金を増やすためには、60歳を迎えた際に納付記録や受給見込額を確認したうえで、任意加入など手続きをしたり、会社勤務を継続したりすることが必要となるでしょう。もちろん、25年後はかなり先のことであり、年金制度の改正が将来あるかもしれませんので、その動向も見ながら年金の増やし方を考えることになるでしょう。
 
執筆者:井内義典
1級ファイナンシャル・プランニング技能士、CFP(R)認定者、特定社会保険労務士、1級DCプランナー

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