【年金減額】給付額は「賃金や物価の変動などで改定」なのに、物価上昇の今どうして「減額」になるの?

配信日: 2022.08.30

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【年金減額】給付額は「賃金や物価の変動などで改定」なのに、物価上昇の今どうして「減額」になるの?
近年類を見ない物価高で、多くの物やサービスの価格が急上昇している反面、年金の支給額は、わずかではありますが減少となりました。
 
世間の流れと相反するような年金の支給額の変更に、多くの方が疑問を持たれているはずです。
 
そこで今回は、物価高の今、なぜ年金支給額が減額されたのか解説します。
柘植輝

執筆者:柘植輝(つげ ひかる)

行政書士
 
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2級ファイナンシャルプランナー
大学在学中から行政書士、2級FP技能士、宅建士の資格を活かして活動を始める。
現在では行政書士・ファイナンシャルプランナーとして活躍する傍ら、フリーライターとして精力的に活動中。広範な知識をもとに市民法務から企業法務まで幅広く手掛ける。

令和4年度の年金額は昨年度比0.4%減に

毎年、物価の状況などを基に変更される年金の支給額ですが、令和4年度は前年度と比較して0.4%の引き下げとなりました。
 
これにより、老齢基礎年金(国民年金)の支給月額は満額で6万5075円から6万4816円と、259円の減額となっています。また、老齢厚生年金(厚生年金に加入していた夫と専業主婦の妻で、夫婦2人分の老齢基礎年金を含む標準的な年金額)は月額22万496円から21万9593円と、実に903円も減額となりました。
 

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物価上昇にもかかわらず年金額が減った理由

令和4年は毎月のように、多くの物やサービスの価格が値上がりしています。
 
電気やガスといったライフラインのほか、食料品など生活必需品が値上がりし、多くの家庭で支出が増えているはずです。この物価高は落ち着くどころか、今後の値上げが既に発表されているものや、さらなる値上げが予想されているものもあります。
 
こうした状況での年金額の減額は、多くの方が疑問に思うことでしょう。しかし、年金額の改定のタイミングに関しては理由があり、物価や賃金の変動について遅れて年金に反映されるためです。
 
簡単に説明すると、物価や賃金の変動はリアルタイムではなく、一定の期間で区切った変動率を反映させて年金額が改定されるようになっています。令和4年度の年金額に対して適用されるのは令和3年の物価の変動率となり、おおよそ1年遅れで反映されることになります。
 
令和4年に入ってから始まった本格的な値上げラッシュより以前の物価変動の数値が反映されているため、物価高の現状と乖離(かいり)があるものの、改定のルール上、年金が減額となったというわけです。
 

賃金による変動はどうなっているのか

年金は物価だけではなく、現役世代の負担と年金受給者の給付の公平性を保つために賃金の変動とも連動しています。
 
こちらも物価のように前年以前の賃金を基に計算されますが、令和4年度の算定に使用されるのは平成30年度から令和2年度の平均で計算された数値になっています。
 
令和4年度の年金額の改定に反映される物価の変動率はマイナス0.2%、賃金による変動率はマイナス0.4%となり、両方の変動率がマイナスの場合は低い方の数値に合わせるため、最終的に年金額は0.4%減となったわけです。
 
なお、年金支給額を調整する仕組みには、賃金や物価の改定率を調整して年金の給付額の変動を緩やかにしていく「マクロ経済スライド」もありますが、こちらは物価も賃金もマイナスであったので適用されていません。
 

年金についてどう考えていくべきか

このように年金額は、物価や賃金の変動によって改定されるもので、必ずしも前年どおりの支給額が保証されているわけではありません。
 
「国民年金保険」「厚生年金保険」というように、年金については積み立てた金額が保証されるものではなく、あくまでも老後の収入減少のリスクに備えるための保険だと考えるべきです。
 
また、万が一の際には遺族年金や障害年金の支給も受けられることを考えると、年金は自身の状況や時勢によって変動する保険と割り切るのがいいかもしれません。
 

物価高の中で年金が減額となったのは前年度の物価変動を反映としているため


 
物価の高騰が続く中、令和4年度の年金額が減額されたのは、リアルタイムの状況を反映しているからではなく、前年以前の物価や賃金を参考としているからです。今後、年金制度の大きな変更がない場合でも、増額することもあれば、減額することもあります。
 
年金は老後リスクに備えた1つの保険と考え、支給額に多少の増減があったとしても対応できるよう、自身で将来に向けた貯蓄や資産形成も行うようにしましょう。
 

出典

厚生労働省 令和4年度の年金額改定についてお知らせします
日本年金機構 令和4年4月分からの年金額は前年度からどのように改定されたのですか。
 
執筆者:柘植輝
行政書士

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