更新日: 2022.09.02 その他年金

【年収200~1000万円】年金はそれぞれいくらもらえて、どのくらい差があるの?

執筆者 : 小山英斗

【年収200~1000万円】年金はそれぞれいくらもらえて、どのくらい差があるの?
老後の家計の支えとして年金は大事な収入の1つであり、将来どのくらい年金がもらえるのかは気になるところでしょう。
 
年金は大別して公的年金制度と私的年金制度がありますが、ここでは老後に受け取れる公的年金と、そのおおよその年金額について解説していきます。
小山英斗

執筆者:小山英斗(こやま ひでと)

CFP(日本FP協会認定会員)

1級FP技能士(資産設計提案業務)
住宅ローンアドバイザー、住宅建築コーディネーター
未来が見えるね研究所 代表
座右の銘:虚静恬淡
好きなもの:旅行、建築、カフェ、散歩、今ここ

人生100年時代、これまでの「学校で出て社会人になり家庭や家を持って定年そして老後」という単線的な考え方がなくなっていき、これからは多様な選択肢がある中で自分のやりたい人生を生涯通じてどう実現させていくかがますます大事になってきます。

「未来が見えるね研究所」では、多くの人と多くの未来を一緒に描いていきたいと思います。
https://miraiken.amebaownd.com/

年金にはどのような種類がある?

年金には大きく分けて、働き方などによって必ず加入する公的年金制度と、個人の任意や勤務先で加入できる私的年金制度があります。
 

公的年金制度

日本の公的年金制度は2階建てといわれており、すべての人が加入する1階部分の国民年金と、会社員や公務員などが加入する2階部分の厚生年金があります。
 
【図表1】

制度 対象者
国民年金 日本国内に住む20歳以上60歳未満のすべての人
厚生年金 厚生年金保険の適用を受ける会社に勤務している加入要件を満たす人、公務員など

※日本年金機構 「公的年金制度の種類と加入する制度」より筆者作成
 
1階部分のみの加入となる自営業者などや専業主婦に比べ、会社員や公務員は1階部分と2階部分の両方の年金に加入することになるため、支払う保険料は多くなりますが、受け取れる年金額も多くなります。
 

私的年金制度

私的年金制度は、公的年金の3階部分として上乗せ給付を保障する制度で、個人や企業は複数ある制度の中からニーズにあった制度を任意で選択できます。私的年金への加入により、将来の年金の給付をさらに増やすことが可能です。
 
また、iDeCoや国民年金基金など、掛け金を社会保険料控除の対象としているものもあり、掛金分が所得から控除されることにより、所得税や住民税が軽減されます。
 
【図表2】

制度 概要
確定給付企業年金(DB) 企業が従業員と給付の内容をあらかじめ約束して、掛け金を積み立てて運用し、既定に基づいた給付額を支給します。
確定拠出年金(DC) 拠出した掛け金を加入者が自ら運用し、掛け金と運用益の合算額によって将来の給付額が変わってきます。制度には企業型(企業型DC)と個人型(iDeCo)があります。
国民年金基金 自営業者などの国民年金の第1号被保険者が、老後の所得保障の充実を図るために任意で加入する制度です。
厚生年金基金 企業の実情などに応じて、独自の上乗せ給付を行うことができる制度です(2014年4月1日以降、厚生年金基金の新規設立は認められていません)。

※厚生労働省 「私的年金制度の概要(企業年金、個人年金)」より筆者作成
 
なお、民間の保険会社などが提供している「個人年金保険」も、老後の備えを目的とした私的年金の1つです。加入する個人年金保険に「税制適格特約」が付加されている場合は、個人年金保険料控除により、所得税・住民税の軽減といった税制面での優遇を受けられます。
 

老後に受け取れる公的年金

老後に受け取れる公的年金のことを「老齢年金」と呼びます。原則、65歳以上になると受給できる老齢年金には、「老齢基礎年金」と「老齢厚生年金」の2つがあります。
 
老齢年金は、60歳から75歳の間で受給開始時期を早める「繰り上げ」や、受給開始を遅らせる「繰り下げ」を行うこともできますが、繰り上げると月数に応じて受給額が減額(1ヶ月当たり0.4%)となり、繰り下げた場合は増額(1ヶ月当たり0.7%)されます。
 

老齢基礎年金

老齢基礎年金は、受給資格期間(国民年金保険料の納付済期間と保険料免除期間などを合算した期間)が10年以上ある場合、20歳から60歳になるまでの40年間の保険料納付月数や厚生年金の加入期間などに応じて年金額が決まります。
 
40年間の国民年金保険料をすべて納めた場合に受け取れる満額の老齢基礎年金額は、年額77万7800円(2022年4月分から)となっています。
 

老齢厚生年金

老齢厚生年金は、老齢基礎年金を受け取れる人に厚生年金の加入期間がある場合、上乗せして受給できます。
 
老齢厚生年金の年金額は、厚生年金加入時の収入(標準報酬月額・標準賞与額)や加入期間に応じて計算され、支払っていた保険料により受給額は大きく異なってきます。
 

老齢年金の平均的な受給額は?

老齢年金は、加入していた年金制度や加入期間に納めた保険料などによって受給額が異なりますが、実際にはどのくらい給付されているのでしょうか?
 
1つの参考として、厚生労働省年金局が2021年12月に公表した「令和2年度 厚生年金保険・国民年金事業の概況」によれば、各年金保険の老齢年金の平均受給額(月額)は表3のようになっています。
 
【図表3】

国民年金(老齢基礎年金) 5万6358円
厚生年金(老齢基礎年金+老齢厚生年金) 14万6145円

※厚生労働省年金局 「令和2年度 厚生年金保険・国民年金事業の概況」より筆者作成
※老齢基礎年金の受給資格期間が25年以上ある人の場合
 

老齢厚生年金を年収別にシミュレーション

老齢基礎年金については収入に関係なく国民年金保険料が一律なので、年金額は保険料納付月数に応じたものになりますが、老齢厚生年金については加入期間だけでなく、収入に応じて納めた保険料で年金額が異なってきます。
 
そこで、65歳から受給できる老齢厚生年金について、加入期間中の平均年収別に年金額を試算してみます。
なお、ここではシミュレーションサイトを利用していますが、老齢厚生年金の計算式はやや複雑なので、試算の結果は正確な受給額を示すものではないことにご留意ください。

シミュレーション対象者の前提
年齢・性別 65歳・男性
就業開始年齢 22歳
就業終了年齢 60歳
平均年収 老齢厚生年金(月額)
200万円 3万6000円
400万円 7万2000円
600万円 10万8000円
800万円 14万4000円
1000万円 15万2000円

※三井住友銀行 「年金試算シミュレーション」を基に筆者作成(2022年8月時点)
 
厚生年金に加入していた人が実際に受け取る年金は、老齢基礎年金に老齢厚生年金が上乗せされて支給されることになります。
 
上記の試算では、年収800万円までは年金額も収入に比例して増えていますが、年収1000万円では増え方が少なくなっていることが分かります。
 
これは、厚生年金の保険料の算定に使われる標準報酬月額と標準賞与額には上限(標準報酬月額は65万円、標準賞与額は支給1回につき150万円で年3回以下)があるため、上限以上に収入が増えても一定の報酬額として保険料が決まるからです。
 

まとめ

公的年金でも老齢厚生年金については老齢基礎年金と異なり、厚生年金の加入期間の収入に応じて将来の年金額に差があります。
 
収入には増減もありますが、働いている間のおおよその平均年収を把握しておき、ねんきんネットなどで将来もらえる年金の見込額を試算しておくことは、老後に必要なお金を準備する際の目安にもなるでしょう。
 

出典

日本年金機構 公的年金制度の種類と加入する制度
厚生労働省 私的年金制度の概要(企業年金、個人年金)
日本年金機構 年金の繰上げ・繰下げ受給
日本年金機構 老齢年金
厚生労働省年金局 令和2年度 厚生年金保険・国民年金事業の概況
三井住友銀行 年金試算シミュレーション
日本年金機構 ねんきんネット
 
執筆者:小山英斗
CFP(日本FP協会認定会員)

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