更新日: 2022.09.06 国民年金

在職老齢年金制度の改正、誰にメリットがある?

執筆者 : 北山茂治

在職老齢年金制度の改正、誰にメリットがある?
令和4年4月に公的年金の大きな改正がありました。ほとんどが60歳代以降の方に関連する改正です。
 
60歳から65歳までの年金受給者の在職老齢年金制度も改正され、支給停止になる基準額が28万円から47万円になりました。
 
これにより、支給停止となる年金額が少なくなり、所得が増えて、ますます働きやすくなりました。詳しく見てみましょう。
北山茂治

執筆者:北山茂治(きたやま しげはる)

高度年金・将来設計コンサルタント

1級ファイナンシャルプランニング技能士、特定社会保険労務士、健康マスターエキスパート
大学卒業後、大手生命保険会社に入社し、全国各地を転々としてきました。2000年に1級ファイナンシャルプランニング技能士資格取得後は、FP知識を活用した営業手法を教育指導してきました。そして勤続40年を区切りに、「北山FP社会保険労務士事務所」を開業しました。

人生100年時代に、「気力・体力・財力3拍子揃った、元気シニアをたくさん輩出する」
そのお手伝いをすることが私のライフワークです。
ライフプランセミナーをはじめ年金・医療・介護そして相続に関するセミナー講師をしてきました。
そして元気シニア輩出のためにはその基盤となる企業が元気であることが何より大切だと考え、従業員がはつらつと働ける会社を作っていくために、労働関係の相談、就業規則や賃金退職金制度の構築、助成金の申請など、企業がますます繁栄するお手伝いをさせていただいています。

HP: https://www.kitayamafpsr.com

在職老齢年金とは

在職老齢年金制度とは、60歳を超えて会社に勤めている方のうち、老齢厚生年金をもらっている方で、会社からの給料が多いと、老齢厚生年金が減らされるか、まったくもらえなくなる制度です。
 
具体的には、年金月額(老齢厚生年金の1ヶ月分)と、給料と年間賞与の12分の1の合計額(総報酬月額相当額)が「支給停止となる基準額」を超えた部分の2分の1が1ヶ月の支給停止額になります。
 
この基準額は、従来は、60歳から65歳未満の方が28万円、65歳以上の方は47万円でした。これが令和4年4月1日からは、60歳から65歳未満の方も47万円となり、65歳以上の方と同じになりました。この基準額は低いほど支給停止される額が多くなります。つまり、もらえる年金額が減ることになります。
 
なお、支給停止された年金(老齢厚生年金)はあとでもらえるわけではなく、消えてしまいます。
 

改定前後の比較例

年金月額(特別支給の老齢厚生年金の1ヶ月分)が10万円の60歳から65歳未満の方が、給料と年間賞与の12分の1の合計額(総報酬月額相当額といいます。ここでは「給与等」とします)の増減でどれだけ年金月額が減らされるかを見てみましょう。
 
令和4年4月より前の改正前は、

<例1>給与等が18万円なら全額年金月額がもらえます。
<例2>給与等が30万円なら年金月額は4万円しかもらえません。
<例3>給与等が38万円なら年金月額はまったくもらえません。

令和4年4月の改正で支給停止になる基準額が28万円から47万円になることにより、次のようになりました。

<例1>給与等が18万円なら全額年金月額がもらえます。
<例2>給与等が30万円でも全額年金月額がもらえます。
<例3>給与等が38万円なら年金月額は9万5000円となります。

全額年金がもらえるのは、年金月額給料と給与等の合計が47万円までです(この例ですと、給与等が37万円までです)。全額年金月額がもらえなくなるのは、年金月額給料と給与等の合計が57万円以上です。
 

誰にメリットがある?

とてもよい制度改正ですが、60歳から65歳までの間に公的年金がもらえる方は「特別支給の老齢厚生年金」をもらえる方だけで、その方々は毎年少なくなっています。生年月日で見ると、男性は昭和36年4月1日までの方、女性は昭和41年4月1日までの方だけです。
 
具体的な例を見てみましょう。
 
男性の場合は、

<例1>
昭和33年4月2日生まれの方は、63歳から特別支給の老齢厚生年金がもらえるようになり、64歳からの1年間今回の改正の恩恵を受けます。
 
<例2>
昭和34年4月2日生まれの方は、64歳から特別支給の老齢厚生年金がもらえるようになり、64歳からの1年間今回の改正の恩恵を受けます。
 
<例3>
昭和35年4月2日生まれの方は、64歳から特別支給の老齢厚生年金がもらえるようになり、64歳からの1年間今回の改正の恩恵を受けます。
 
<例4>
昭和36年4月2日生まれの方は、65歳から本来の老齢厚生年金をもらうことになるので、今回の改正の恩恵を受けることはありません。

女性の場合は、

<例1>
昭和34年4月2日生まれの方は、61歳から特別支給の老齢厚生年金がもらえるようになり、63歳からの2年間今回の改正の恩恵を受けます。
 
<例2>
昭和35年4月2日生まれの方は、62歳から特別支給の老齢厚生年金がもらえるようになり、62歳からの3年間今回の改正の恩恵を受けます。
 
<例3>
昭和36年4月2日生まれの方は、62歳から特別支給の老齢厚生年金がもらえるようになり、62歳からの3年間今回の改正の恩恵を受けます。
 
<例4>
昭和37年4月2日生まれの方は、63歳から特別支給の老齢厚生年金がもらえるようになり、63歳からの2年間今回の改正の恩恵を受けます。
 
<例5>
昭和38年4月2日生まれの方は、63歳から特別支給の老齢厚生年金がもらえるようになり、63歳からの2年間今回の改正の恩恵を受けます。

どうやらこの制度改正は、女性のほうがメリットが多そうですね。
 
今回の制度改正を有効に活用して、少しでも長く働き、そして働きながら年金額を増やして、人生100年時代に備えましょう。
 

出典

日本年金機構 令和4年4月から65歳未満の方の在職老齢年金制度が見直されました
 
執筆者:北山茂治
高度年金・将来設計コンサルタント

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