更新日: 2022.09.20 年金

【年金相談】30歳という若さで夫が亡くなりました。妻である私は遺族年金を受け取ることはできるのでしょうか

執筆者 : 林智慮

【年金相談】30歳という若さで夫が亡くなりました。妻である私は遺族年金を受け取ることはできるのでしょうか
Aさん夫婦はともに30歳の会社員、未就学の子どもが1人います。先日、交通事故で夫が他界しました。
 
悲しみに暮れながらも、さまざまな手続きに追われ、困惑状態のAさん。年金手続きも進めていくにあたり、年金の加入期間が短く、遺族年金がどのくらい支給されるのかも不安でなりません。
 
林智慮

執筆者:林智慮(はやし ちりよ)

CFP(R)認定者

確定拠出年金相談ねっと認定FP
大学(工学部)卒業後、橋梁設計の会社で設計業務に携わる。結婚で専業主婦となるが夫の独立を機に経理・総務に転身。事業と家庭のファイナンシャル・プランナーとなる。コーチング資格も習得し、金銭面だけでなく心の面からも「幸せに生きる」サポートをしている。4人の子の母。保険や金融商品を売らない独立系ファイナンシャル・プランナー。

遺族年金を受け取れる? 受け取れない?

遺(のこ)された家族を支えるための遺族年金。遺族年金には、国民年金加入者の遺族基礎年金と厚生年金加入者の遺族厚生年金がありますが、受け取れるのは死亡された方に生計を維持されていた遺族です。
 
ここで、生計を維持されているとされる遺族の収入要件は、前年の収入が850万円未満(所得が655万円5000円未満)であることとされています。ご主人を亡くされたときのAさんの年収は約280万円。受給要件を満たしています。
 
Aさんのご主人は厚生年金に加入中に亡くなられましたので、遺族厚生年金の支給要件を満たしています。遺族厚生年金を受け取る順は、(1)妻、(2)子、(3)夫、(4)父母、(5)孫、(6)祖父母で、妻子が遺族の場合は妻が受け取ります。
 
未就学のお子さまがいらっしゃることから、遺族基礎年金も支給されます。遺族基礎年金は、(1)子のある妻、(2)子、が受け取れます。
 
ただ、死亡日の前日において、保険料納付済み期間が加入期間の3分の2を満たす必要があります。Aさんご夫妻は、学生のころには学生納付特例制度を利用しましたが、追納をしていません。
 
しかし、学生納付特例の期間も遺族基礎年金の受給資格期間にカウントされるので、保険料納付済み期間の要件は満たしています(令和8年3月末日までは、死亡日の月の前々月までの直近1年間に保険料の未納がなければよいとされています)。
 
受給できることは分かりましたが、加入期間も短いうえに、学生納付特例の追納をしていなかったことで、遺族年金がいくらになるかが心配です。
 

加入期間が短くても25年加入したとされる遺族厚生年金

厚生年金加入中に亡くなられた場合は、亡くなられた方に生計を維持されていた遺族に、遺族厚生年金が支給されます。
 
妻が30歳未満で子どもがいない場合は、5年の期間限定ですが、30歳でお子さまがいらっしゃるAさんの場合は、どなたかと再婚されるか(内縁も含む)、直系血族や直系姻族以外の養子にならない限り、生涯受け取れます(自分の老齢年金との調整あり)。
 
遺族厚生年金の年金額は、亡くなった方の老齢年金の報酬比例分の4分の3となります。加入期間が短いことを心配されていらっしゃいましたが、その必要はありません。
 
厚生年金加入期間中や、厚生年金加入期間中に初診日がある死亡の場合、加入期間が300月(25年)未満の場合は、300月加入したとみなして計算されます。
 
例えば、平均標準報酬月額26万円の場合でみてみましょう。老齢厚生年金額に相当する金額は
 
26万円×5.481/1000×300月≒43万円
 
となり、遺族厚生年金は×3/4で約32万円となります。
 

遺族基礎年金は子どもへ

お子さまがいらっしゃるので、国民年金から遺族基礎年金も受け取れます。厚生年金に加入している会社員は、国民年金第2号被保険者であり、国民年金に加入しています。
 
そして、国民年金の被保険者である間に死亡したことは、遺族基礎年金の受給要件の1つです。加入の長さは関係ありません。受給できるのは、亡くなられた方に生計を維持されていた、(1)子のある配偶者、(2)子、です。よって、Aさんが受け取ります。
 
お子さまは1人なので、77万7800+22万3800円(子の加算額 1人分)=100万1600円の遺族基礎年金を受け取ります。ただし、遺族基礎年金を受け取れるのは、お子さまが18歳以降の最初の3月31日(年度末)まで(もし万が一お子さまに一定の障害がある場合は20歳まで)です。
 
つまり、お子さまが高校を卒業するまでは、遺族厚生年金と遺族基礎年金の合計、約132万円(月約11万円)の遺族年金を受け取れます。しかも、遺族年金は非課税です。受け取っても収入とされません。
 

遺族基礎年金が停止しても中高齢寡婦加算

子どもが18歳の3月31日(障害がある場合は20歳)を過ぎると、遺族基礎年金は受給できなくなります。しかし、以降、妻が受け取る遺族厚生年金には、自分の年金の受給資格がえられる58万3400円が加算されます(中高齢寡婦加算)。妻が65歳まで続きます。
 
よって、子どもが18歳以降の遺族年金額は、32万円+58万円=約90万円 受け取れます。妻が65歳になると、妻自身の年金の受給権が発生します。
 
その場合、遺族厚生年金のうち、妻の老齢厚生年金分の金額が停止になります。「遺族厚生年金>妻の老齢厚生年金」の場合は、差額を遺族厚生年金として受け取れます。
 
遺族厚生年金は、再婚など資格喪失要件に該当しなければ、一生涯にわたり妻であるAさんの生活を支え続けます。家族を失い、大きな悲しみを抱えているでしょう。手続き等で迷われたら、無理せず年金事務所等に相談してサポートを受けましょう。
 

出典

日本年金機構 Q 国民年金に加入中の夫が亡くなりましたが、妻の私は年金を受けられますか。
日本年金機構 Q 厚生年金保険に加入している夫が亡くなりましたが、妻の私は年金を受けられますか。
日本年金機構 遺族基礎年金(受給要件・対象者・年金額)
日本年金機構 遺族厚生年金(受給要件・対象者・年金額)
国税庁 1.平均給与
日本年金機構 令和2年9月分(10月納付分)からの厚生年金保険料額表(令和4年度版)
厚生労働省 令和3年賃金構造基本統計調査 結果の概況より(3)学歴別にみた賃金
 
執筆者:林智慮
CFP(R)認定者

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