更新日: 2022.09.28 その他年金
マクロ経済スライドって何? 私たちの年金にどう影響しているの?
将来受け取る年金給付額に大きな影響を与えるマクロ経済スライドについて解説していきます。
執筆者:菊原浩司(きくはらこうじ)
FPオフィス Conserve&Investment代表
2級ファイナンシャルプランニング技能士、管理業務主任者、第一種証券外務員、ビジネス法務リーダー、ビジネス会計検定2級
製造業の品質・コスト・納期管理業務を経験し、Plan(計画)→ Do(実行)→ Check(評価)→ Act(改善)のPDCAサイクルを重視したコンサルタント業務を行っています。
特に人生で最も高額な買い物である不動産と各種保険は人生の資金計画に大きな影響を与えます。
資金計画やリスク管理の乱れは最終的に老後貧困・老後破たんとして表れます。
独立系ファイナンシャルプランナーとして顧客利益を最優先し、資金計画改善のお手伝いをしていきます。
公的年金の給付額は変動する
将来の物価はインフレにより値上がりする可能性があるため、公的年金の給付額は一定の金額ではなく、年金給付額が現役世代の手取り収入額と比較してどの程度の割合を占めるのかといった所得代替率(年金を受け取り始める時点(65歳)における年金額が、現役世代の手取り収入額(ボーナス込み)と比較してどのくらいの割合か、を示すもの)などを基準とし一定の価値を保証するようになっています。
しかし、今後は少子高齢化が進み保険料を支払う現役世代が減少し、年金を受け取る65歳以上の高齢者が増加していくと見込まれており、長期間にわたり同じ価値水準を保証することが難しいと予想されています。
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公的年金を持続可能とするためにマクロ経済スライドが導入
少子高齢化による人口構成の変化を踏まえず、現状のままの年金給付水準を維持すると、年金財源が枯渇したタイミングで給付水準が大きく減少することになり、年金受給者の生活に大きな影響を及ぼしてしまいます。
そこで、公的年金の給付水準の激変を緩和しつつ長期間にわたり給付が可能となるよう、物価の変動・年金保険料を支払う現役世代の人数・年金受給者の人数を勘案し年金給付額を変更する「マクロ経済スライド」が2015年から導入されました。
マクロ経済スライドによる年金給付額への影響は?
本来、年金給付額は物価上昇により世代間で不公平が生じないよう、物価や賃金水準を反映した「価格スライド」によって一定の価値が維持されるようになっています。
しかし、マクロ経済スライドの導入により、価格スライドによる公的年金額の上昇率から「公的年金全体の被保険者数の平均的減少率」と「平均寿命の伸び率」を加えた「スライド調整率」が、価格スライドによる上昇率から差し引かれます。
このため、年金給付額は次のような式となり、仮に見かけ上、年金給付額が増加していても物価の上昇率に追随できていなければ実質的な年金給付額は減少していくことになります。
年金給付額 = 前年の年金給付額 × (物価または賃金の上昇率 - マクロ経済スライドによる調整率)
一方でマクロ経済スライドは常に実施されるわけではなく、価格スライドの上昇率がスライド調整率より小さかったり物価・賃金水準が下降したりした場合は行われないため、年金給付額の過大な減額が行われないよう配慮もなされています。
しかし、所得代替率は今後も低下を続け、今後の物価・賃金の上昇率にもよりますが2019年には61.7%あった所得代替率は2045年には51.9%~44.5%になると見込まれているため、自助による老後資金の準備が重要性を増していくと考えられます。
まとめ~マクロ経済スライドはいつまで実施される?~
マクロ経済スライドは、は少なくとも5年ごとに実施される財政検証により公的年金が長期的に持続可能となるまで続けられる予定です。
本制度は、公的年金を長期的に持続可能なものとするためのものですが、インフレなどによる貨幣価値の低下を正確に反映していないため実質的な年金給付額は減少し、今後の老後資金は公的年金で補える部分が減少することになるので、預貯金や資産運用などで計画的に備えを進めて行く必要があります。
執筆者:菊原浩司
FPオフィス Conserve&Investment代表