障害年金請求のつまずき(4)「病歴・就労状況等申立書が書けない」
配信日: 2022.10.11
執筆者:和田隆(わだ たかし)
ファイナンシャル・プランナー(AFP)、特定社会保険労務士、社会福祉士
新聞社を定年退職後、社会保険労務士事務所「かもめ社労士事務所」を開業しました。障害年金の請求支援を中心に取り組んでいます。NPO法人障害年金支援ネットワーク会員です。
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目次
気が重くなる人が少なくない
「病歴・就労状況等申立書」(以下、「申立書」と表記します)は、自分自身の言葉で病歴などを申告するための書類です。障害年金の請求に当たっては、診断書や受診状況等証明書と並んで重要な書類とされています。しかし、白紙の「申立書」を目の前にすると、まるで自分史の作成を求められているような気分になって、気が重くなる人が少なくないようです。そんな人へのアドバイスがあります。
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パソコンで作成すると楽にできる
【1】気を楽にして取り組もう
まず、いっぺんに仕上げようと思わないことです。数日かけるつもりで、少しずつ思い出しながら書いてみて、最後にまとめればよいのです。そのためには、手書きではなく、パソコンでの作成をお勧めします。
日本年金機構のホームページから自由に「申立書」のエクセルファイルがダウンロードできますから、これを入手し、パソコンで作成すると、書き直しが簡単ですし、文字の上手・下手を意識する必要もありません。気を楽にして作業ができると思います。
代筆してもらっても構わない
次に、「申立書」の作成は、請求人本人に限られてはいません。家族や友人、知人に代筆してもらうことが可能です。「申立書」の裏面の最下段に代筆者名を記入する欄が設けられていることからも、それが明らかです。文章の作成が苦手な人は、無理をする必要はありません。代筆を気軽にしてくれる人を探して、お願いするとよいでしょう。
請求人としては、書くべきことをいろいろと思い出し、代筆者に伝えればよいわけです。
傷病によっては、記入が少な目でもよい
そして、もう一点。「申立書」の重要度は、実は、障害年金を請求する傷病の種類によって異なります。病状を検査数値で表せる傷病は、ほとんど、その数値で障害等級が判断されます。「申立書」の役割は軽いわけです。このため、こうした傷病では「申立書」の内容も少な目で構いません。病状を数値で表せない精神疾患などでは、そうはいきませんが…。
3~5年で区切って書く
【2】効果的な書き方がある
表面の欄は、3~5年で区切って書きます(ただし、生来性の知的障害の場合など、まとめて書いてもよい場合もあります)。書き方としては、発病したときから現在までの経過を年代順に、また、期間が空かないようにします。障害認定日請求の場合は、障害認定日から3ヶ月以内(20歳前障害の場合は、前後各3ヶ月以内)が重要ですから、この期間は特別に1マスを当てて書くとよいでしょう。
エピソードを入れると伝わりやすい
表面の欄に書く内容は、病歴、就労状況、日常生活での支障、などです。具体的なエピソードを入れると、状況が伝わりやすくなります。例えば「食欲がなかった」と書くよりも「食欲がなく、清涼飲料水ばかり飲んでいた。体重が1ヶ月で2Kg減った」などと書く方が効果的でしょう。
日常生活での支障を書いていると、つい、金銭難や他の病気での苦労なども書きたくなりますが、それらは審査の対象外なので意味がありません。
診断書の足を引っ張らないように
【3】注意をしければならないこと
「申立書」を書く際に特に注意をしければならないことがあります。それは、診断書の内容との食い違いです。診断書で軽症に書かれている場合は、「申立書」で重症を訴えても、診断書の軽症のほうが採用されます。その一方で、診断書で重症と書かれていても、「申立書」で軽症のように書くと、「申立書」の軽症のほうが採用される傾向があります。
請求者が、障害年金を受給しやすくなるように重症を主張することはあっても、受給に不利になるのに軽症のように書くはずがない、という見方が働くのでしょう。「申立書」で診断書の足を引っ張らないようにしましょう。
「日常生活状況」の欄も注意
裏面の「日常生活状況」の欄も注意が必要です。「着替え」「洗面」など10項目で「自発的にできた」か「できなかったか」がたずねられています。この10項目も、精神疾患の診断書の場合と同様にひとり暮らしを想定して回答することが大切です。
例えば、親と同居している人が、テーブルに並べられた食事を独力で食べても「自発的にできた」ではありません。献立を考え、食材を入手し、調理して、食事の後片付けまでできて、初めて「自発的にできた」になります。家族と同居している人が、そうした注意点に気付かず、すべてに「自発的にできた」を選択して、それが理由で不支給になったケースが実際にあります。ご注意ください。
執筆者:和田隆
ファイナンシャル・プランナー(AFP)、特定社会保険労務士、社会福祉士