離婚後の厚生年金はどうなるの? 「厚生年金の分割制度」とは

配信日: 2022.10.19

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離婚後の厚生年金はどうなるの? 「厚生年金の分割制度」とは
一家の大黒柱として働き続けている方は、厚生年金が老後生活設計の経済的基盤になるものとして期待していることでしょう。
 
ところがもし離婚をした場合、そのプランは変更しなくてはなりません。その要因となるものが「厚生年金の分割制度」です。
茂野博起

執筆者:茂野博起(しげの ひろき)

AFP・2級ファイナンシャルプランニング技能士

厚生年金の分割制度で離婚後に厚生年金は分割される

厚生年金の分割制度は夫婦が離婚をした場合、専業主婦(夫)である配偶者は老後の年金収入が手薄になる可能性が高まります。厚生年金の分割制度はそれを拡充する目的で制度化されました。
 
分割対象は第二号被保険者の被保険者期間の年金記録をもとに分割されます。年金の第二号被保険者とは主に会社員、国家公務員そして地方公務員などが該当します。
 

厚生年金の分割の種類

厚生年金の分割制度は図表1の2つに分類されます。
 
【図表1】

分割方法 合意分割 三号分割
離婚時適用時期 2007年4月1日以降に成立した離婚 2008年5月1日以降に成立した離婚
分割割合の決定 ・当事者双方で分割割合を決める
・家庭裁判所で分割割合を決める
50%で分割
対象期間 婚姻期間中の厚生年金の被保険者期間 2008年4月1日以降離婚するまでの間における第三号被保険者期間に対応する厚生年金の期間
分割割合の上限 上限50% 一律50%
請求期間 離婚時より2年

出典:日本年金機構 離婚時の年金分割 より著者作成
 
離婚時における厚生年金の分割は三号分割が基準となりますが、合意分割により50%以下の分割割合も可能です。
 

合意分割制度

2007年4月1日以降の離婚時に適用される厚生年金の分割方法です。話し合いや裁判所の調停や審判で双方の合意にもとづいて分割割合を決定します。
 

三号分割制度

2008年4月1日以降に離婚をした場合に適用できる厚生年金の分割方法です。相手方の厚生年金の報酬標準の50%を分割する制度です。合意分割か三号分割かの選択は可能ですが、実務上は三号分割になるのが現状です。
 
それは裁判となった場合でも分割割合の50%が保証されていることから、三号分割に落ち着くからです。三号分割における分割割合の50%は、厚生年金の分割を受ける相手側の権利として認識する必要があります。
 

年金分割の計算例

年金分割の計算をするには「年金分割のための情報通知書」が必要です(取得方法は後述します)。計算方法は請求者の立場により異なります。
 

専業主婦(夫)の場合

計算におけるポイントは、配偶者の対象期間標準報酬総額を合算することです。本記事では例として、夫と専業主婦の妻を例としています。

夫の対象期間標準報酬総額:1億円
妻の対象期間標準報酬総額:0円
按分割合:50%

1.夫と妻の対象期間標準報酬総額を合算
1億円+0円=1億円
 
2.夫婦それぞれの対象期間標準報酬総額に分割割合を乗じて算出
夫:1億円×50%=5000万円
妻:1億円×50%=5000万円
 
3.分割後の老齢年金額を算出
夫:5000万円×5.481/1000=27万4050円
妻:5000万円×5.481/1000=27万4050円
 
※5.481/1000は1946年4月2日以降生まれの乗率
 
このケースの対象期間標準報酬総額が0円でしたが、離婚時の年金分割で5000万円増加したことになります。
 

共働きの場合

共働きのケースも専業主婦のケース同様、対象期間標準報酬総額を合算するのがポイントになります。
 
1.夫と妻の対象期間標準報酬総額を合算
1億円+5000万円=1億5000万円
 
2.夫婦それぞれの対象期間標準報酬総額に分割割合を乗じて算出
夫:1億5000万円×50%=7500万円
妻:1億5000万円×50%=7500万円
 
3.分割後の老齢年金額を算出
夫:7500万円×5.481/1000=41万1075円
妻:7500万円×5.481/1000=41万1075円
 
※5.481/1000は1946年4月2日以降生まれの乗率
 
このケースは妻の対象期間標準報酬総額は5000万円でしたが7500万円に増加したことになります。
 

夫が自営業者の場合

年金分割は厚生年金独自の制度です。自営業者は国民年金のため年金分割の制度はありません。
 

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離婚後の厚生年金分割の請求方法

年金分割の請求を申し出るには、以下のように順番があります。

1.「年金分割のための情報提供請求書」を年金事務所へ提出
「年金分割のための情報提供請求書」は日本年金機構HPからダウンロード可能
 
2.マイナンバーまたは既存金番号を明らかにできる書類、婚姻期間を証明できる種類(住民票等)を添付し、必要事項を記載した「年金分割のための情報提供請求書」を提出
 
3.受理されると「年金分割のための情報通知書」が郵送されてくる
 
4.年金分割の改定請求手続きをする

 

合意分割の場合

合意分割の改定請求手続きで必要になる書類は下記のとおりです。

・基礎年金番号またはマイナンバーを明らかにする書類
・婚姻期間を明らかにする書類
・請求1ヶ月前の夫婦の生存を証明できる書類
・事実上の離婚状態にある場合はその事情を証明できる書類

手続き終了後、日本年金機構から「標準報酬改定通知書」が郵送されます。
 

三号分割

三号分割の改定請求手続きで必要になる書類は下記のとおりです。

・基礎年金番号またはマイナンバーを明らかにする書類
・婚姻期間等を明らかにする書類
・請求日前1ヶ月以内に作成された2人の生存を証明できる書類
・年金分割の割合を明らかにする書類

手続き終了後、日本年金機構から「標準報酬改定通知書」が郵送されます。どちらの分割方法も離婚後2年以内の請求要件がありますので、請求者は注意が必要です。
 

離婚における厚生年金の分割は老後のライフプランの変更を余儀なくされる


 
離婚時における厚生年金の分割制度には二種類あります。2年以内に相手側の請求があれば、厚生年金受給額は減額されることになります。年金受給額が減額されれば、思い描いていた老後のライフプランにズレが生じてくることはいうまでもありません。
 
厚生年金は夫婦で築き上げた共同財産と解釈されます。共同財産であったものであれば離婚時は当然分割されるべきものと認識し、老後のライフプランの練り直しを検討する必要がでてくることを覚えておきましょう。
 

出典

日本年金機構 離婚時の年金分割
 
執筆者:茂野博起
AFP・2級ファイナンシャルプランニング技能士

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