更新日: 2022.11.16 その他年金

一人一年金の原則を調整する「年金の併給調整」をわかりやすく解説

執筆者 : 茂野博起

一人一年金の原則を調整する「年金の併給調整」をわかりやすく解説
公的年金には老齢年金だけでなく障害年金や遺族年金があり、加入者のあらゆる保障に対応しています。しかしその保障が重複したとき、公的年金の受給過多が生じかねず、加入者間の不公平が生じる恐れもあります。
 
その場合、基本的には「1人1年金の原則」にのっとり、どの年金を受給するかの選択権が与えられます。それが「年金の併給調整」です。本記事では年金の併給調整について、分かりやすく解説します。
茂野博起

執筆者:茂野博起(しげの ひろき)

AFP・2級ファイナンシャルプランニング技能士

1人1年金の原則と併給調整

公的年金は一部を除いて、1人が複数の年金を受給することはできません。それを「1人1年金の原則」といいます。複数の年金が重複することで、年金受給額が多くなり過ぎないように、加入者間の公平性を保つような調整が図られています。
 
図表1
 

 
出典 日本年金機構 年金の併給または選択
 
図表1のように、老齢基礎年金と厚生老齢年金など同じ受給事由であるものは、併給調整には該当しません。これは遺族基礎年金と遺族厚生年金、障害基礎年金と障害厚生年金にもあてはまります。これ以外の年金が重複した場合、一部の例外を除いて受給する年金の選択をして調整する必要性が生じます。
 

年金の併給調整の具体例と一覧表

基礎年金間の併給調整の一覧は次のとおりです。
 
図表2
 

 
出典 一般財団法人 年金住宅福祉協会 基礎年金間の調整
 
なお、厚生年金間の併給調整も基本的には基礎年金と同様になります。ただ65歳以上であれば、老齢厚生年金と遺族厚生年金が併給される場合がありますので確認が必要です。図表3は基礎年金と厚生年金の併給調整の一覧表です。
 
図表3
 

 
出典 一般財団法人 年金住宅福祉協会 公的年金の併給調整
 
これはあくまでも基礎的なケースであるため、個別具体的な相談は年金事務所などで行うことをおすすめします。
 

1人1年金の例外

1人1年金の原則ですが、前述したとおり一部例外があります。それは次の3つのケースです。
 

1.老齢給付と遺族給付

老齢基礎年金と遺族厚生年金は、65歳以降に併給できます。また老齢厚生年金と遺族厚生年金では、遺族厚生年金が老齢厚生年金よりも年金額が高い場合にその差額が受給できます。これも65歳からの併給になります。
 

2.老齢給付と障害給付

障害基礎年金の受給者が65歳以降に老齢基礎年金か老齢厚生年金を受給できるようになったとき、次の(1)か(2)もしくは(2)か(3)を選択できます。
 

(1)障害基礎年金+障害厚生年金
(2)老齢基礎年金+老齢厚生年金
(3)障害基礎年金+老齢厚生年金

 

3.障害給付と遺族給付

障害基礎(厚生)年金受給者が、遺族厚生年金の受給者になったとき、65歳以降であれば次の(1)、(2)いずれかを選択できます。
 

(1)障害基礎年金+障害厚生年金
(2)障害基礎年金+遺族厚生年金

 
これらの特例的な併給はすべて65歳からとなります。受給資格を得たら、その都度確認するといいでしょう。
 

公的年金と雇用保険の併給調整

年金の併給調整は公的年金間だけにとどまりません。下記のように、公的年金と雇用保険の受給要件がある場合も併給調整が生じます。
 
基本的に65歳までに受給する公的年金と雇用保険の失業給付は、同時に受給することはできません。また厚生年金の被保険者でもある年金受給者が、雇用保険の高齢者雇用継続給付金を受け取る場合は、在職老齢年金と公的年金の一部の受給ができなくなります。
 

まとめ

公的年金制度は複雑かつ難解であることからすべてを理解することは困難といえます。さらに複雑な年金の併給調整が絡むようなケースであればなおさらです。特例的に年金の併給が認められるケースがあることから、併給調整が必要かどうかについて年金事務所などに問い合わせることをおすすめします。
 

出典

日本年金機構 年金の併給または選択

日本年金機構 年金と雇用保険の失業給付との調整

一般財団法人 年金住宅福祉協会 “目で見る”年金講座【第25回】2つ以上の年金が受けられるようになったら?

 
執筆者:茂野博起
AFP・2級ファイナンシャルプランニング技能士

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