更新日: 2022.11.18 その他年金

「学生時代に納付猶予された年金」追納のメリット・デメリットについて解説

「学生時代に納付猶予された年金」追納のメリット・デメリットについて解説
日本国内に住むすべての人は、20歳になった時から国民年金の被保険者となり、国民年金保険料の納付が義務付けられています。
 
しかし、大学生などは学生時代に保険料を納付することは負担が大きいため、在学中の保険料の納付が猶予される「学生納付特例制度」を利用する人が多いです。
 
この制度を利用して納付が猶予された保険料は、一定の期間内であれば追納することができますが、追納した方がいいのでしょうか? 今回は、追納のメリットとデメリットについて解説します。
柳沢俊宏

執筆者:柳沢俊宏(やなぎざわ としひろ)

1級ファイナンシャル・プランニング技能士、ワイゼットFPオフィス代表

保険料の追納ができる期間

学生納付特例とは、国民年金の被保険者に義務付けられている保険料の納付が、対象校に在学している間猶予される制度です。申請して学生納付特例制度の承認を受けた期間から10年以内であれば保険料をさかのぼって納める「追納」ができます。
 
追納する場合の保険料は、承認を受けた当時の保険料額に経過期間に応じた加算額が上乗せされますが、承認を受けた期間の翌年度から起算して、2年以内であれば加算額の上乗せはありません。追納する場合は、2年以内に行うことがお得といえます。
 

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追納のメリット

それでは、追納のメリットについて見ていきましょう。
 

老齢基礎年金の額を増やすことができる

老齢基礎年金を受給するためには、原則として10年以上の「受給資格期間」が必要です。学生納付特例制度の承認を受けた期間は、保険料を納めていなくてもこの受給資格期間に含まれます。
 
一方で、老齢基礎年金の額の計算の対象となる期間には含まれません。追納をすることで、この期間が納付済期間となり、将来もらえる老齢基礎年金の額を満額に近づけることができるのです。つまり、「老齢基礎年金の額を増やす」というメリットがあります。
 

社会保険料控除を受けることができる

追納した保険料の額については、その全額が支払った年分の社会保険料控除として所得控除を受けることができます。「所得控除」とは、課税される所得から差し引くことができるもので、税率を掛ける前の所得が減額されるため、その分税負担が少なくなります。追納を行うことで、一般的に、所得税・住民税が軽減されるというメリットがあります。
 

追納のデメリット

一方、追納のデメリットはどんなものがあるのでしょうか?
 

新社会人には負担が大きい

大学などを卒業し社会人になったばかりの時期は収入は十分ではないことが一般的です。そのような少ない収入から、学生納付特例制度の承認を受けた期間の保険料を一括で納付することは負担が大きいでしょう。
 
また、社会人になったばかりの頃はさまざまな経験をするための自己投資も大事なことです。追納をすることで、自己投資のための資金を圧迫してしまうというデメリットがあります。
 

所得がなければ社会保険料控除を受けられない

大学などを卒業した後、すぐに就職する人ばかりではありませんね。しばらく、親元で生活する人もいるでしょう。そのような場合は、親御さんの扶養に入っていて一定以上の所得がないため、追納を行っても社会保険料控除が節税につながらないというデメリットがあります。
 
ただ、生計を一にしている子どもの保険料を支払った場合はその支払った人が社会保険料控除を受けることができるので、親元で生活している場合は、親御さんに追納を負担してもらう方法もあります。
 

メリット・デメリットを理解して追納を考えよう

将来の老齢基礎年金の額を増やすためには、追納をすることがおすすめです。しかし、その人が置かれた状況やライフスタイルによって、追納にはメリット・デメリットがあります。自身の置かれた状況を踏まえて、無理のない範囲で、追納するかどうかを考えてみてください。
 

出典

日本年金機構 国民年金保険料の学生納付特例制度

日本年金機構 学生納付特例対象校一覧

国税庁 タックスアンサーNo.1130社会保険料控除

 
執筆者:柳沢俊宏
1級ファイナンシャル・プランニング技能士、ワイゼットFPオフィス代表

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