更新日: 2022.11.28 その他年金

年金生活の夫婦が別居や離婚した場合、年金はどうなるの?

執筆者 : 菊原浩司

年金生活の夫婦が別居や離婚した場合、年金はどうなるの?
定年退職後はそれまでとは違った生活スタイルとなります。もし、その変化が望ましくないものであった場合、配偶者との別居や離婚といった言葉が頭をよぎることもあるかもしれません。
 
しかし、ご自身の年金収入が少ないと別居・離婚後の生活に不安が生じます。一部の公的年金は、離婚の際、財産分与の対象となりますが、具体的にはどうなるのでしょうか?
菊原浩司

執筆者:菊原浩司(きくはらこうじ)

FPオフィス Conserve&Investment代表

2級ファイナンシャルプランニング技能士、管理業務主任者、第一種証券外務員、ビジネス法務リーダー、ビジネス会計検定2級
製造業の品質・コスト・納期管理業務を経験し、Plan(計画)→ Do(実行)→ Check(評価)→ Act(改善)のPDCAサイクルを重視したコンサルタント業務を行っています。
特に人生で最も高額な買い物である不動産と各種保険は人生の資金計画に大きな影響を与えます。
資金計画やリスク管理の乱れは最終的に老後貧困・老後破たんとして表れます。
独立系ファイナンシャルプランナーとして顧客利益を最優先し、資金計画改善のお手伝いをしていきます。

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夫婦共有財産となる年金制度は?

原則として、婚姻生活中に築いた財産は夫婦共有のものであり、年金についても財産分与の対象となります。しかし、全ての年金が対象となるわけではなく、国民年金(基礎年金)は対象外です。
 
これに対し、会社員などが加入して現役時代の給与や賞与といった報酬に比例して受給できる厚生年金や、国民年金しか加入していない自営業者などが年金収入の上乗せするために加入する国民年金基金や確定拠出年金などが、対象となります。
 
したがって、厚生年金や国民年金基金など特定の公的年金は、財産分与の対象として婚姻期間中に納めた分について年金分割を行うことができ、専業主婦などで国民年金しか加入していなかった方も、配偶者が受け取る厚生年金の一部を受け取ることが可能となっています。
 
もっとも、あくまでも婚姻期間中に納めた実績に応じて分割され、年金額の全額の半分を受け取ることができるわけではない点は注意が必要です。
 

公的年金の分割方法は?

財産分与の対象となる年金は、財産分与の際、分割対象となりますが、その分割方法には「合意分割制度」と「3号分割制度」の2つがあります。
 
まず、合意分割制度は、婚姻生活中に築いた公的年金を分割する制度で、50%を上限に夫婦の話し合いによって分割割合を決めることができます。話し合いで合意できないと裁判所の審判に委ねることになりますが、その場合の分割割合は基本的に50%ずつとされています。
 
また、合意分割制度では、年金額が高い方から低い方に分割が行われるため、必ずしも夫から妻に年金の分割が行われるわけではありません。夫婦それぞれで財産分与の対象となる公的年金に加入している場合は、自分が年金分割をして損をしてしまう場合もあるため注意しましょう。
 
次に、もうひとつの分割方法である、3号分割制度は2008年4月1日以降に専業主婦(主夫)だった場合に利用できる分割制度で、夫婦の合意なしで分割割合50%で自動的に分割されるため、条件に合致し早期に年金分割を済ませたい方は検討してみるとよいでしょう。
 

別居期間の年金の取り扱いや生活費は?

年金分割は単に別居しただけでは行うことはできず、合意分割も3号分割も離婚した翌日から2年以内に請求する必要があります。また、別居期間中も婚姻期間に含まれるため、長期間の別居を行った場合でも年金分割時に不利となることはありません。
 
しかし、離婚は夫婦双方の合意が必要となるため一方が離婚を拒めば年金分割も進めることができません。この場合でも夫婦には原則として相互扶助義務があるため、別居期間中の生活費は婚姻費として収入の多い方から支払いを受けることができます。
 

年金分割の受給権と自身の厚生年金を併せて受け取ることは可能?

通常、厚生年金は、加入者が亡くなると給付されなくなります。しかし、財産分与で受け取った年金分割の受給権は元配偶者が亡くなった場合でも影響を受けず受け取ることができ、ご自身の厚生年金も変わらずに併せて受けとることができます。
 

まとめ

厚生年金や国民年金基金など特定の公的年金制度の年金記録は、婚姻期間中に納めた分については財産分与の対象として年金分割を行うことができます。年金分割には合意分割と3号分割の2つがあり、それぞれ分割割合や分割手続に違いがありますが、離婚成立の翌日から2年以内に請求しないと権利を失ってしまうため注意しましょう。
 
年金分割の受給権は元配偶者が亡くなった場合でも変わらずに受け取ることができ、自身の年金額にも影響を及ぼしません。離婚を考えているが収入面の不安があるといった方は、年金分割を活用するとよいでしょう。
 
執筆者:菊原浩司
FPオフィス Conserve&Investment代表

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