更新日: 2022.11.29 その他年金
障害年金請求のつまずき(6)「診断書がそろわない」
執筆者:和田隆(わだ たかし)
ファイナンシャル・プランナー(AFP)、特定社会保険労務士、社会福祉士
新聞社を定年退職後、社会保険労務士事務所「かもめ社労士事務所」を開業しました。障害年金の請求支援を中心に取り組んでいます。NPO法人障害年金支援ネットワーク会員です。
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月末が近づいてくると、焦りますね
障害年金の請求で提出する診断書は、事後重症請求の場合は、現在の症状が分かるもの(請求日前3ヶ月以内の診断書)を、一方、障害認定日請求の場合は、障害認定日当時の症状が分かるもの(障害認定日以降3ヶ月以内の診断書。
ただし、20歳前障害の場合は、障害認定日前後各3ヶ月計6ヶ月以内の診断書)と現在の症状が分かるものの計2通です(ただし、障害認定日から1年以内の場合は、障害認定日当時の症状が分かるものだけで構いません)。
障害認定日請求で2通が必要な場合に、2通がなかなかそろわないことがあります。月末が近づいてくると、焦りますね。場合によっては、障害年金の受給総額が少なくなってしまう可能性があるからです。
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受給総額が1ヶ月分ずつ減っていく
どんな場合でしょうか。一つは、障害認定日が5年以上前の場合です。この場合、障害認定日で障害年金の受給が認められても、5年以上前の年金は受給できません。「時効」が適用されるからです。したがって、この場合、月が替わるごとに、障害年金の受給総額が1ヶ月分ずつ減っていくことになります。
もう一つは、障害認定日請求をしても、障害認定日の時点での障害年金の受給が認められず、結局、事後重症請求に変更される場合です。障害年金の受給が認められても、受給できる年金は請求月の翌月分以降のものですから、この場合も、月が替わるごとに、受給総額が1ヶ月分ずつ減ることになります。
診断書がそろわない場合の対処法は…
診断書がそろわない場合の対処法は、次のどちらかです。
【1】請求が翌月になっても、障害認定日請求をする
障害年金の請求が、ともかくも1回で済むのが、気分的にはうれしいところです。ただし、上記のように、請求月が翌月以降になると、受給総額がそれだけ減少する場合があることは覚悟しておかなければなりません。
また、いつまでたっても障害認定日当時の診断書を作成してもらえない場合に、障害年金の請求自体が面倒になってしまうことがあります。このために、請求を断念してしまうようだと、大きな損失です。
取りあえず、事後重症請求をすることも
【2】取りあえず、事後重症請求をする。障害認定日請求は追って考える
月末が迫っている場合は、取りあえず、事後重症請求をすることも検討してみましょう。利点は、障害年金の受給が認められた場合、上記のように、請求月の翌月分から受給できることです。受給総額に損失がありません。欠点は、事後重症請求が認められた後、改めて、障害認定日請求をしなければならないので、二度手間になることです。
追って障害認定日請求もしようと考えている場合は、最初の事後重症請求のときに、少し工夫しておきます。障害年金の請求書に、障害認定日請求をせずに事後重症請求をする理由を具体的に書く欄があるのですが、この欄には「障害認定日当時の診断書が入手できないため」と記入します。
日本年金機構が職員用に配布している「受付・点検事務の手引き」によると、記入例として「病院が廃業し診断書が添付できないため」「カルテが廃棄されて診断書が作成できないため」などが挙げられていますが、通常、診断書を入手できない理由まで書く必要はありません。こうしておけば、後日、改めて障害認定日請求をしても、矛盾が生じません。
大切なのはしっかりと早く受給すること
ここまで読まれた方は、「【2】取りあえず、事後重症請求をする」は手間がかかり、面倒だなと思われたかもしれません。しかし、大切なのは障害年金をしっかりと早く受給することです。その意味では、「【2】取りあえず、事後重症請求をする」の方に軍配が上がりそうです。
年金を受給していて気分が落ち着いている
その理由は、障害年金の受給総額に損失がないことだけではありません。既に事後重症請求で年金を受給していて気分が落ち着いていることでしょうし、2度目の請求手続きですから、前回の手続きをほとんどなぞるだけでできるからです。
自身で作成する「病歴・就労状況等申立書」は、前回の請求日以降の欄を追加するとともに、障害認定日当時の状況をより詳しく書くだけで、他は前回の申立書の内容を書き写せば事足ります。初診日を証明するための「受診状況等証明書」も再提出の必要はありません。
なお、事後重症請求で障害年金の受給が認められた後で、改めて障害認定日請求をする場合は、注意を要することがあります。仮に、事後重症請求で2級が認められていても、障害認定日請求で3級となると、職権改定が行われない限り、障害認定日以降ずっと3級とされることです。
これは、障害認定日請求で障害年金の受給が認められた場合は、事後重症請求での裁定が取り消されるためです。障害認定日当時の診断書を入手したときに、内容をよく読んで、障害認定日請求をするかどうか改めて検討することを忘れないでください。
執筆者:和田隆
ファイナンシャル・プランナー(AFP)、特定社会保険労務士、社会福祉士