定年退職後、「年金受給資格なし」を宣告されるケースってあり得る?
配信日: 2022.11.30
ここでは年金の受給資格期間のほか、受給資格がないと判断されるケースや、その場合の対処方法について説明します。
執筆者:柘植輝(つげ ひかる)
行政書士
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2級ファイナンシャルプランナー
大学在学中から行政書士、2級FP技能士、宅建士の資格を活かして活動を始める。
現在では行政書士・ファイナンシャルプランナーとして活躍する傍ら、フリーライターとして精力的に活動中。広範な知識をもとに市民法務から企業法務まで幅広く手掛ける。
老齢年金の受給資格期間とは?
老齢年金を受け取るためには、国民年金の保険料を納付した期間や厚生年金などの加入期間を含めた保険料納付済み期間と、国民年金の保険料免除期間などを合算した受給資格期間が10年以上必要とされています。
つまり、受給資格期間が10年未満の場合は、受給開始年齢となっても老齢基礎年金や老齢厚生年金を受け取れないということです。
会社員などは原則、厚生年金に加入することになり、給与から保険料が天引きされるため、保険料が未納となることはありません。また、厚生年金の加入期間は国民年金にも加入していることになります。
厚生年金の加入期間にもよりますが、会社員として定年まで働いた場合、大抵のケースでは年金保険料を10年以上納めていることになるため、定年退職後、受給資格期間に満たないという理由で年金が受け取れないということは少ないでしょう。
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年金の受給資格なしと判断されるのはどんな場合?
前述したとおり基本的に10年以上、会社員として厚生年金に加入して働いていれば、受給資格がないため年金が受け取れないということはありません。ただし、以下のようなケースでは受給資格期間を満たしていない場合や、例外的に年金が受け取れない状況となっていることもあります。
無職や自営業などで長期間の保険料の未納がある
転職して自営業で働いていたり、失業などで無職だったりする期間は、国民年金に加入して自身で保険料を支払います。この際、保険料が未納となっていた期間が長かった方は、10年以上の受給資格期間を満たさず、年金を受け取れない可能性もあります。
なお、経済的な理由によって国民年金保険料が支払えない場合でも、免除や納付猶予の申請を行い、適用を受けていた期間については年金の受給資格期間に算入されます。
勤務先が個人事業主で厚生年金に加入していなかった
勤務先が個人事業主で社会保険が適用されず、厚生年金に加入できない場合は、自営業などや無職の方と同様に国民年金に加入して保険料を支払う必要があります。
例えば、転職時に勤務先が国民年金への切り替えを行うだろうと思い込んで手続きをしないでいると、年金保険料の未納期間が発生してしまうことがあります。
転職が多く、未統合となっている年金記録がある
短期間で転職することが多く、そのたびに年金手帳が発行されていた場合などでは、年金記録が統合されておらず、受給資格期間を満たしていないと判断されることもあります。
年金記録は受給資格や年金額の基となり、漏れや誤りがある場合は年金を正しく受給できなくなりますが、令和3年9月時点では約1783万件の持ち主不明の年金記録が存在しています。
保険料は支払っていても、年金の受給資格がないと判断されたときは、ねんきん定期便やねんきんネットで「未加入」となっている期間を確認したり、未統合の年金記録がないか最寄りの年金事務所に相談したりしてみてください。
受給資格期間を満たしていないときは?
年金の受給資格期間を満たしていないときは、60歳以降で国民年金に任意加入したり、定年後に再就職して厚生年金に加入したりすることで、10年以上の受給資格期間を満たせる場合があります。
ただし、受給資格期間に満たないケースで国民年金に任意加入できるのは70歳までとなっているほか、保険料を追納できるのは前10年以内の納付免除期間などとされているため、早めに対応することが必要です。
厚生年金については、70歳を過ぎても要件を満たすことで高齢任意加入被保険者として、年金を受けられる加入期間となるまで任意で加入できるようになっています。
年金の受給資格なしとならないように年金記録の確認を
会社員として長年勤務していれば、定年退職後に「年金受給資格なし」となることはほとんどありませんが、長期にわたる保険料の未納により10年以上の受給資格期間を満たしていない場合は年金を受け取ることができません。
また、年金記録に漏れなどが発生しているケースでは、年金の受給資格がないと判断されてしまう可能性もあります。
定年退職後、年金が受給できないと知って慌てることがないように、年金の加入履歴や保険料の納付状況がどうなっているか、現役時代のうちに確認しておくことをおすすめします。
出典
日本年金機構 必要な資格期間が25年から10年に短縮されました
執筆者:柘植輝
行政書士