更新日: 2022.11.30 国民年金

国民年金は支払った分の「2倍」戻ってくる可能性も! 「預金より得」のワケとは?

執筆者 : 西岡秀泰

国民年金は支払った分の「2倍」戻ってくる可能性も! 「預金より得」のワケとは?
国民年金に加入している方の中には、「国民年金は払うだけ損」「財政状況が厳しいから年金はもらえない」などと考える方もいるかもしれません。しかし、国民年金の支払いは本当に「払うだけ損」なのでしょうか?
 
本記事では、国民年金の保険料の支払額によって老齢年金の受給額がどのように変化するのか、シミュレーションを基に解説します。今後の保険料の支払いや、貯金に回したほうがお得かといったことを考える際の参考にしてみてください。
西岡秀泰

執筆者:西岡秀泰(にしおか ひでやす)

社会保険労務士・FP2級

国民年金の保険料

最初に、国民年金の保険料を支払い続けた場合、「総額」がいくらになるかについて見ていきましょう。
 
国民年金の支払いが義務付けられているのは、20歳から60歳までの40年間です。2004年の制度改正以来、保険料は2017年4月まで毎年引き上げられ、さらに2019年の保険料免除制度の拡大によって100円アップして現在は1万7000円となっています。
 
実際の保険料は、上記保険料をベースに名目賃金変動率に応じて毎年改定されます。2022年度の保険料は1万6590円です。約1万7000円の保険料を40年間支払ったと仮定すると、保険料の総額は約860万円(=1万7000円×480ヶ月)となります。
 
また、厚生年金の配偶者で第3号被保険者の人は、保険料の負担はありません。
 

国民年金の年金額

国民年金の年金額(老齢基礎年金額)は、保険料の納付月数に応じて次の通り計算することができます。
 
・老齢基礎年金額=77万7800円(2022年度)×保険料納付月数÷480ヶ月(40年)
 
保険料を40年間すべて支払った場合の年金額(満額)は、77万7800円(2022年度)です(実際の支払額、受取額は今後の制度改正動向などにより変動する可能性があります)。
 

国民年金の支払いと戻り

厚生労働省の調査によると、国民年金を受け取っている人の受給額の平均は月額5万6358円。確かに、老後の豊かな生活を送る上で決して十分な額とは言えません。しかし一方で、支払った保険料の総額と受け取る年金額をシミュレーションで比較してみると、国民年金が「損」な制度とは言えないことが分かります。
 
国民年金の保険料を40年間納付すると、保険料の総額は約860万円、年金額は77万7800円です。年金を65歳から10年・20年・25年受け取った場合、年金受給額と戻り率(=保険料支払額÷年金受給額)は次の通りになります。

●10年の場合:年金受給額は約778万円、戻り率は約90.5%
●20年の場合:年金受給額は約1556万円、戻り率は約180.9%
●25年の場合:年金受給額は約1945万円、戻り率は約226.1%

65歳時の平均余命は男性が約20年、女性が約25年なので、「平均余命」まで年金を受給すれば支払った保険料の2倍前後の年金を受け取れることになります。ただし、年金受給開始後、約11年以内に亡くなった場合には、受給額は保険料の総額を下回ります(実際の支払額、受取額は今後の制度改正動向などにより変動する可能性があります)。
 

国民年金のメリット

加えて、国民年金には次のようなメリットがあります。

●国民年金は「終身年金」なので、長生きするほど多くの年金がもらえる(長生きによる老後資金不足を補える)
●国民年金は物価が上がれば年金額もアップするため、「インフレ対応になる」
●死亡したときや所定の障害状態になったときに、「遺族年金」や「障害年金」が支払われることがある

 

銀行預金だけでは資産価値目減りの心配も

銀行預金には、預けた額面がほぼ確実に守られ、自由に引き出すことができるというメリットがありますが、低金利が今後も継続すれば貯金だけでお金を増やすことは難しいでしょう。また、インフレになると蓄えたお金の価値が「目減り」します。
 
「年金制度は信用できないから預貯金で老後資金を準備する」というのも考え方ではありますが、上記シミュレーションを踏まえれば、老後生活への準備としては国民年金のほうが適しているといえるのではないでしょうか。年金の役割と機能を正しく理解し、人生100年時代の老後生活に向けた着実な計画を立てるように心がけましょう。
 

出典

日本年金機構 国民年金保険料の額は、どのようにして決まるのか?
厚生労働省 厚生年金保険・国民年金事業の概況(令和2年度)
 
執筆者:西岡秀泰
社会保険労務士・FP2級

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