国民年金の受給額を増やせる「付加年金」について分かりやすく解説
配信日: 2022.11.30
本記事では国民年金の第1号被保険者にとって、老後の生活資金準備の補助となりうる「付加年金」についてわかりやすく解説します。
執筆者:茂野博起(しげの ひろき)
AFP・2級ファイナンシャルプランニング技能士
付加年金とは
「付加年金」とは国民年金第1号被保険者が、国民年金保険料に別途400円上乗せ納付することで、上乗せ納付月数に応じた割増年金額を受給できる年金制度のことです。
付加年金に加入することで基礎年金の受給期間中は、永久的に割増の年金額を受給し続けることができます。付加年金は老齢基礎年金の受給額だけでは老後の生活が心細いと考える国民年金第1号被保険者が、真っ先に加入を検討すべき年金制度といえるでしょう。
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付加年金の加入対象者等の詳細
付加年金の加入条件等の詳細は図表1のとおりです。
図表1
付加年金の詳細 | |
加入対象者 | 国民年金の第1号被保険者・任意加入者 |
付加保険料(月額) | 400円 |
付加年金額 | 200円×付加保険料納付月数 |
申し込み先 | お住まいの市区町村役場 |
特 徴 | 定額のため物価スライドによる増減が無い終身年金 |
加入時の注意点 | 国民年金基金との併用は不可。 iDeCoの掛金上限額が1000円減少となる |
出典 日本年金機構 付加年金より筆者作成
図表1でもわかるように、付加年金はとてもシンプルに制度設計されています。付加保険料も少額であることから、手軽に加入できる年金制度として人気があります。
付加年金額算出の計算例
国民年金の第1号被保険者が20歳から60歳まで付加年金に加入していた場合、将来の年金の受給額は次のようになります。
1.付加年金受給額を含んだ年金受給額
200円×480月(40年)=9万6000円(年額)
この付加年金額が、老齢基礎年金に上乗せされます。
77万7800円(老齢基礎年金)+9万6000円(付加年金)=87万3800円(年額)
87万3800円が、付加年金受給額を含んだ年金受給額となります。
2.付加年金保険料の払込総額
400円×480月(40年)=19万2000円(総額)
付加年金受給額9万6000円(年額)と付加年金の払込総額19万2000円を比較すると、付加年金を約2年受け取れば払込額を回収できることがわかります。現在の老齢基礎年金の受給開始年齢が65歳であることから、繰り下げをしなかった場合における損益分岐点は67歳になります。
付加年金の加入のメリット・デメリット
国民年金加入者にとって付加年金は、老齢基礎年金の拡充手段としての有力な選択肢の一つであることはいうまでもありません。しかし付加年金にもメリットとデメリットの両面があります。
付加年金のメリット
付加年金加入のメリットは主に3点あります。
1.納付した付加保険料は比較的短期間で元が取れる
2.老齢基礎年金を繰下げ受給した場合、付加年金も同率で増額となる
3.付加年金保険料は社会保険料控除の対象となり、付加年金保険料全額が所得控除を受けられる
付加年金のデメリット
デメリットとして次のような点があるので注意が必要です。
1.65歳前に亡くなった場合、納付した付加保険料は戻らない
2.繰上げ支給を選択した場合、付加年金も同率で減額となる
3.国民年金基金との併用はできない
4.iDeCoの月額拠出上限額が1000円減り6万7000円となる
老後生活資金の準備にiDeCoを併用する人が増えてきました。iDeCoとの併用の際は掛金上限額が若干減少することを覚えておきましょう。
まとめ
国民年金の第1号被保険者は、厚生年金の被保険者と比較して、公的年金受給額が少ないのが一般的です。公的年金の受給額を少しでも増やす手段として付加年金への加入は、一定程度の効果が見込めます。
しかし一方で、国民年金の第1号被保険者が付加年金に加入するだけで老後の生活資金の不安をすべて解決できるものにはなりえません。付加年金はあくまでも補助的な年金として位置付け、別途確定拠出型年金や個人年金保険加入などの検討をし、老後資金の準備をしていくことをおすすめします。
出典
日本年金機構 付加年金
日本年金機構 老齢基礎年金の受給要件・支給開始時期・年金額
公益財団法人 生命保険文化センター 老齢年金の繰上げ・繰下げ受給について知りたい
執筆者:茂野博起
AFP・2級ファイナンシャルプランニング技能士