【再確認!】受け取り開始を遅らせて「増やせる年金」「増えない年金」について
配信日: 2022.11.30
本記事では、年金の制度ごとに繰下げ受給による年金増額の可否について整理します。定年後のライフプランを作り上げる際の参考にしてみてください。
執筆者:福嶋淳裕(ふくしま あつひろ)
日本証券アナリスト協会認定アナリスト CMA、日本ファイナンシャル・プランナーズ協会認定 CFP(R)、1級ファイナンシャル・プランニング技能士、日本商工会議所認定 1級DCプランナー(企業年金総合プランナー)
リタイアメントプランニング、老後資金形成を得意分野として活動中の独立系FPです。東証一部上場企業にて、企業年金基金、ライフプランセミナー、DC継続教育の実務経験もあります。
公的年金制度
国民全員が加入する「国民年金」、会社員・公務員などが加入する「厚生年金保険」の繰り下げ可否については次のとおりです(本記事では老齢年金に焦点を当てています)。
国民年金
老齢基礎年金
老齢基礎年金は受給時期を繰り下げることで年金額を増やすことができます。また、後述する老齢厚生年金とは別々に繰り下げができます。
振替加算
老齢基礎年金は、繰り下げても「振替加算」を増やすことができません。また、繰り下げている期間中の振替加算は後から受け取ることができません(1966年4月2日以後の生まれの妻(夫)は振替加算の対象外)。
なお、振替加算については「ねんきん定期便に記載されない」ので注意しましょう。
振替加算とは、夫(妻)が受けている「老齢厚生年金」や「障害厚生年金」に加算されている加給年金額の対象者になっている妻(夫)が65歳になると、それまで夫(妻)に支給されていた加給年金額が打ち切られ、妻(夫)が老齢基礎年金を受けられる場合に、一定の基準により妻(夫)自身の老齢基礎年金の額に加算されることをいいます。
厚生年金保険
老齢厚生年金
老齢厚生年金は老齢基礎年金と同様に、繰り下げによって年金額を増やすことができます。老齢基礎年金とは別々に繰り下げできます。
職歴によっては、日本年金機構や共済組合などから複数の老齢厚生年金・退職共済年金を受け取ることができる場合もあります。この場合は、すべての老齢厚生年金が同時に繰り下げとなるよう手続きする必要がある点に気を付けましょう。
特別支給の老齢厚生年金
特別支給の老齢厚生年金に、繰下げ制度はありません。
加給年金
加給年金は、老齢厚生年金を繰り下げても受給額を増やすことができません。 また、繰り下げている期間中の加給年金を後から受け取ることもできません。
加給年金は夫婦の生年月日や生計維持関係などにより受け取れるかどうかが異なります。「ねんきん定期便に記載されない部分」なので、しっかり確認するようにしましょう。
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私的年金制度
公的年金制度と別に任意で加入する私的年金制度について、繰り下げによる受給増額の可否は以下のとおりです。
厚生年金基金
厚生年金基金は手続きによって繰り下げし、将来の受給額を増やすことができます。ただし、老齢厚生年金の繰り下げに連動させる必要があります。
確定給付企業年金(DB)
確定給付企業年金においては、繰下げ制度の有無は規約により異なります。勤めている企業・勤めていた企業、加入している企業年金基金、または過去に加入していた企業年金基金などに問い合わせてみてください。
確定拠出年金(企業型DC、個人型DC[iDeCo])
確定拠出年金には、繰り下げという概念がなく、75歳に達するまでに年金の受け取り開始を運営管理機関に加入者が請求します(年金の受け取りが完了するまでの間、年金額の原資である年金資産は本人の運用指図および各種手数料によって増減していきます)。
企業年金連合会
基本年金
企業年金連合会の基本年金は手続きによって繰り下げすることができます。ただ、老齢厚生年金の繰り下げに連動させる必要があります。
代行年金
代行年金も繰り下げができます。こちらも、老齢厚生年金の繰り下げに連動させる必要があります。
通算企業年金
通算企業年金に繰下げ制度はありません。
国民年金基金
国民年金基金にも繰下げ制度はありません。
まとめ
繰り下げによって将来受け取ることができる年金を増やすことができるかは、年金制度を構成する各制度によって異なります。
各年金の受給開始時期を繰り下げるべきかどうかは、世帯状況や加入歴によって違うため一概にはいえませんが、より豊かな老後生活を送るため、本記事で紹介したポイントを踏まえ、加給年金の有無などを考慮したうえで繰り下げパターンの最適な組み合わせを慎重に検討するようにしましょう。
出典
日本年金機構 年金の繰下げ受給
日本年金機構 加給年金額と振替加算
企業年金連合会 繰上げ受給、繰下げ受給
企業年金連合会 連合会の「基本年金・代行年金」の繰下げ支給
企業年金連合会 これから退職時に連合会へ年金資産の移換を考えている方=通算企業年金
国民年金基金連合会 手続きに関してのよくあるご質問(給付)
執筆者:福嶋淳裕
CMA、CFP(R)、1級ファイナンシャル・プランニング技能士、1級DCプランナー