「年金の受給額」はなぜ変動するの? その理由について解説

配信日: 2022.12.03

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「年金の受給額」はなぜ変動するの? その理由について解説
日本年金機構の発表によると、2019年4月の老齢基礎年金は満額で約6万5000円でしたが、2022年4月は約6万4800円でした。同様に、厚生年金の標準的な年金額も2019年4月が約22万円に対して、2022年4月は約21万9000円と減少しています。
 
年金の受給額は、なぜ変動するのでしょうか。本記事では、年金額が変動する要因について解説します。
川辺拓也

執筆者:川辺拓也(かわべ たくや)

2級ファイナンシャルプランナー

年金受給額の決め方

年金受給額は「物価・賃金変動率」と「マクロ経済スライド調整率」をもとに、毎年4月に改定を行います。年金制度は、少子高齢化の影響で、今後も現役世代の負担が増える見通しです。
 
「物価・賃金変動率」は、現役世代の負担を減らし、年金制度を維持するために物価や賃金の変動率を調整します。マクロ経済スライドは、年金給付と保険料収入の均衡が崩れ、将来負担が重くならないように、自動的に給付水準を調整する仕組みです。
 
図表1

出典:厚生労働省 いっしょに検証! 公的年金~年金の仕組みと将来~
 
マクロ経済スライドは、一般的に図表2にある条件で調整を行います。
 
図表2

出典:厚生労働省 いっしょに検証! 公的年金~年金の仕組みと将来~
 
現行の年金額を決める際、67歳以下(新規裁定者)と68歳以上(既裁定者)で、改定率の計算方法が異なります。

●67歳以下:改定率=前年度改定率×名目手取り賃金変動率×マクロ経済スライド調整率
●68歳以上:改定率=前年度改定率×物価変動率×マクロ経済スライド調整率

67歳以下は、改定率に賃金変動率、68歳以上は物価変動率が用いられます。ただし、68歳以上でも賃金の変動率を用いる例外があるので注意しましょう。

●ケース1:物価も賃金もプラスだが、賃金が物価ほど伸びていない場合
●ケース2:物価はプラスだが、賃金がマイナスの場合
●ケース3:物価も賃金もマイナスだが、賃金のマイナスが大きい場合

2022年4月の年金受給額は、2021年と比べて0.4%引き下げとなりました。物価変動率がマイナス0.2%に対し、賃金変動率がマイナス0.4%と落ち込みが大きかったため、賃金変動率が採用されました。
 
このように、物価と賃金の変動状況によって、年金受給額は調整されます。
 

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年金制度はまた変わる?

政府は5年に1回、年金制度の在り方や財源について「財政検証」を行っています。直近の財政検証は、2019年に行われたので、次は2024年となる見通しです。2024年の財政検証で、年金制度を大きく変える2つの議案をまとめるのではないかと示唆されています。

●国民年金の納付期間を45年間へ延長
●厚生年金の財源を国民年金に回す

国民年金の納付期間は、現行制度で20歳から59歳までの40年間ですが、2024年の財政検証で納付期間が5年間延長される見通しです。
 
国民年金の保険料は、毎月約1万6600円なので納付期間が5年間延長になると約100万円の負担増となります。また、厚生年金の一部が財源に回るということは、会社員の年金受給額にも影響を及ぼすのではないかと不安が広がっている状況です。
 

年金制度の見直しは避けられないので自助努力は必須

年金受給額が変動する理由について解説しました。年金受給額は、将来の現役世代の負担が重くならないように、物価や賃金の変動率をもとに受給額を調整する方法を採用しています。
 
5年に1回の財政検証で、年金の財源や制度を見直す必要があるか検討しますが、2024年の財政検証では改正に向かう可能性が高い状況です。どのような年金制度になるかは分かりませんが、年金だけをあてにした生活は、今後できなくなると考える方が賢明でしょう。自分自身で生活できるように、自助努力も必要です。
 

出典

厚生労働省 社会保障審議会(年金部会) 第1回 2022年10月25日 資料
厚生労働省 将来の公的年金の財政見通し(財政検証)
厚生労働省 いっしょに検証!公的年金~年金の仕組みと将来~
日本年金機構 年金額はどのようなルールで改定されるのですか。
日本年金機構 令和2年4月分からの年金額等について
日本年金機構 令和4年4月分からの年金額等について
日本年金機構 国民年金の保険料はいくらですか。
 
執筆者:川辺拓也
2級ファイナンシャルプランナー

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