更新日: 2022.12.10 その他年金
年金の「繰下げ受給」は実際お得? メリット・デメリットを解説!
一方で、この制度にはデメリットもあります。本記事では、年金の繰下げ受給のメリット・デメリットを解説します。これから年金を受給する方は、ぜひ参考にしてください。
執筆者:谷口まり恵(たにぐち まりえ)
一級ファイナンシャルプランニング技能士
年金の繰下げ受給のメリット
年金の繰下げ受給とは、老齢基礎年金や老齢厚生年金を65歳で受け取らずに、66歳以降に受け取る制度です。75歳までの間であれば、自分の好きなタイミングまで受給開始を延ばせます。繰り下げた月数に応じて年金額が増額されますが、その増額率は一生涯変わりません。
増額率は以下の計算式で算出されます。
増額率=0.7%×65歳に達した月から繰下げ申出月の前月までの月数
例えば、5年遅らせ70歳で受給を開始した場合は、0.7%×60ヶ月=42%と計算できます。メガバンクの5年定期預金の金利が年率0.002%であることを考えると、年金の増額率を魅力的に感じる方も少なくないはずです。
なお、増額率は最大で84%です。75歳を過ぎて受給開始の手続きをしても、増額率は増えません。また、65歳になる前に遺族給付や障害給付を受け取る権利がある人は、繰下げ受給ができない点に注意しましょう。
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繰下げ受給のデメリット
繰下げ受給のデメリットは、主に以下の項目があげられます。
・社会保険料・税金の負担が増える
・加給年金は増額されない
・長生きしないと受取総額が少なくなるケースがある
社会保険料・税金の負担が増える
年金を繰下げ受給すると、社会保険料や税金に影響する場合があります。なぜなら、65歳から年金を受け取る場合に比べて年金額が増える分、年金から天引きされる社会保険料や所得税・住民税の負担も増えるからです。
年金の額面が増えても、手取りの金額が同じ割合だけ増えるわけではありません。将来受け取る年金額から負担する社会保険料の目安をあらかじめ計算しておくと安心です。国民健康保険料の料率は自治体によって異なるので、各市区町村のウェブサイトなどで確認しておきましょう。
加給年金は増額されない
繰下げ受給をしても、加給年金は増額されません。加給年金とは、厚生年金に20年以上加入している人が、65歳時点で生計を維持している子どもや配偶者がいる場合に加算されるものです(配偶者と子どもの年齢制限あり)。
例えば、対象の配偶者がいる場合の加給年金は年間22万3800円で、年金受給者の生年月日によってはさらに3万3100円~16万5100円の特別加算があります。
なお、配偶者を対象とする加給年金は、配偶者が65歳になると支給が停止されます。配偶者が加給年金の対象となる場合は、繰下げ受給をするか繰下げ受給をせずに加給年金を受け取るか、じっくり検討する必要があるでしょう。
長生きしないと受取総額が少なくなるケースがある
繰下げ受給後に万が一のことがあると、65歳から年金を受け取った場合に比べて年金総額が少なくなる可能性があります。受け取る年金額が年間200万円の人が、72歳で亡くなるケースを例にとって計算してみましょう。
・繰下げ受給をせず、65歳から年金を受け取る場合
受取総額は、200万円×7年=1400万円です。
・年金を繰り下げて70歳から受け取る場合
年金増額分 200万円×(0.7%×60ヶ月)=84万円
年間年金額 200万円+84万円=284万円
受取総額は、284万円×2年=568万円です。
両者の受取総額を比較すると、合計で832万円の差があります。つまり受給開始のタイミングによっては、繰下げ受給をしないほうが受取総額が多くなる可能性もあるといえます。
繰下げ受給の判断は慎重に
年金の繰下げ受給は年金額が増えるメリットがある一方で、社会保険料や税金の負担が増えるなどのデメリットもあります。年金は一度受け取り始めると、途中で受け取り方法の変更はできません。
そのため、受給開始時期を決める際は、メリット・デメリットを考慮した上でじっくり検討する時間が必要です。自分一人で判断できない場合は、年金事務所の窓口やファイナンシャルプランナーなどの専門家に相談することをおすすめします。
出典
日本年金機構 年金の繰下げ受給
三菱UFJ銀行 円預金金利
みずほ銀行 円預金金利
日本年金機構 加給年金額と振替加算
執筆者:谷口まり恵
一級ファイナンシャルプランニング技能士