更新日: 2022.12.22 その他年金

「繰上げ受給」は損なんですか? 60歳から年金を受け取る場合に覚えておきたい「3つのポイント」を解説!

「繰上げ受給」は損なんですか? 60歳から年金を受け取る場合に覚えておきたい「3つのポイント」を解説!
年金は本人が希望すれば60歳から繰り上げて受け取ることが可能です。前倒しを希望しているけれど、受け取りは原則65歳からのため、周囲から「繰上げ受給は損」と言われて不安になっている人もいるかもしれません。60歳からの繰上げ受給は本当に損なのでしょうか。
 
本記事では、60歳から年金を受け取る場合に覚えておきたい3つのポイントについて解説します。
FINANCIAL FIELD編集部

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60歳から繰上げ受給すると24%も減額

繰上げ受給をする人が必ず知っておくべきなのが、年金の受け取りを65歳から早めれば早めるほど減額される点です。昭和37年4月2日以降生まれの人では、ひと月当たりの減額率は0.4%です。すなわち、原則として65歳から受け取れる年金を60歳からに前倒しする場合には、0.4×60ヶ月で24%も減額されてしまうのです。
 
一例として、20歳から60歳までの40年間の保険料をすべて納めて、65歳から満額もらえる人がどのくらい減ってしまうのか試算してみましょう。令和4年度の老齢基礎年金の満額は、年額77万7800円です。
 
つまり、60歳からの繰上げによって、77万7800円×(100%-24%)=59万1128円となり、5年間で約19万円も減ってしまうことになります。参考までに1年間は我慢して61歳からの支給とした場合の減額率は19.2%、2年間耐えて62歳からとした場合の減額率は14.4%です。
 

減額割合は一生変わらず老齢厚生年金も減額

繰上げ請求をした後は、その請求を取り消すことはできません。そして、減額された年金額が生涯続きます。加えて、覚えておきたいのが、原則として老齢基礎年金と老齢厚生年金は同時に繰上げ請求しなくてはならない点です。
 
つまり、会社員として厚生年金保険に加入していた人が60歳から繰上げ受給した場合には、老齢基礎年金だけでなく老齢厚生年金も生涯にわたって24%も減額されてしまうのです。一方で、年金の繰下げ受給に関しては、老齢基礎年金と老齢厚生年金とは別々に行えますが、繰上げ受給と繰下げ受給は必ずしも同じルールになっていないことも押さえておきましょう。
 

繰上げ受給に関する減額以外のデメリット

繰上げ受給のデメリットは減額だけではありません。繰上げ受給をすることで、その他の年金を受け取れなくなる可能性があります。まず、遺族厚生年金や遺族共済年金などの受給権が発生しても65歳になるまでは繰上げ受給年金との併給は受けられず、いずれかの年金を選択しなくてはなりません。
 
また、繰上げ請求した日以降、65歳前に寡婦になったとしても寡婦年金の受給権は得られません。同様に、障害基礎(厚生)年金を請求することもできなくなります。本人や配偶者に治療中の病気や持病がある人は特に注意が必要なポイントだといえるでしょう。さらに、繰上げ請求後には国民年金の任意加入や追納もできなくなります。
 

繰上げ受給が得か損かはその人次第

繰上げ受給が損と言われることが多いのは、「減額」「老齢厚生年金も一緒に繰上げ受給しなくてはならない」「その他の年金との併給はできない」という3つの理由からです。
 
ただし、病気があって長生きに不安がある人や、60歳以降で収入がゼロになる見込みの人では話が変わってくるでしょう。一度繰上げが開始された後に請求を取り消すことはできません。自分にとって繰上げ受給が損か得かをよく検討してから手続きを行うようにしましょう。
 

出典

日本年金機構 年金の繰上げ受給

日本年金機構 老齢年金ガイド令和4年度版

 
執筆者 : FINANCIAL FIELD編集部

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