59歳、「生活保護」「年金の繰上げ受給」のどちらを選ぶべきか悩んでいます…どちらが良いのでしょうか?
配信日: 2022.12.23
生活保護費や年金受給額を挙げ、生活保護の受給要件を満たした人の60歳からの繰上げ受給と65歳以降の年金受給について比較、検証してみました。
執筆者:FINANCIAL FIELD編集部(ふぁいなんしゃるふぃーるど へんしゅうぶ)
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目次
生活保護費の金額はどのようにして決まる?
生活保護は生活に困窮している人を対象に、困窮の程度に応じて最低限度の生活を保障する目的で制定されています。支給される保護費は、「最低生活費」から収入を差し引いた金額で、収入が最低生活費を上回っている場合は支給されません。
最低生活費は、厚生労働大臣の定める基準で計算され、地域、年齢、世帯人員などによって異なりますが、都市部で高く、地方では低い傾向にあります。
今回のケースを「Aさん59歳」と仮定し、Aさんの住む地域の最低生活費を月額15万円とすると、Aさんに収入がない場合、Aさんが受け取れる生活保護費は月額15万円です。Aさんに毎月5万円の収入がある場合、生活保護費は月額10万円(15万円-5万円)となります。
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年金を受け取った場合の生活保護費は加算?それとも不足分の補填?
生活保護は、あらゆる手段を最低限度の生活の維持に充てた上で、不足分を補うものです。
従って、年金を受け取っている人が生活保護費を受け取る場合の金額は、年金に加算されるのではなく、最低生活費から年金やその他の収入を差し引いた不足分となります。年金受給の時期を繰り上げると65歳時を基準として1ヶ月当たり0.4%が減額されるため、60歳まで繰り上げると24%(0.4%×12ヶ月×5年)減額されることになります。
令和4年新規裁定者(67歳以下)の国民年金受給額は月額6万4816円なので、60歳まで繰り上げた場合の受給月額は4万9260円です。Aさんが60歳で繰上げ受給を開始し、最低生活費が15万円で収入が年金のみの場合、生活保護費は10万740円(15万円-4万9260円)となります。
一度減額された年金受給月額が増えることはない
年金の受給開始時期を繰り上げた場合、受給額は繰り上げた時期に応じて減額され、その後、増えることはありません。収入が増えて最低生活費を自分で賄えるようになり、生活保護の受給要件を外れた後も、年金受給額は減額されたままなのです。
最低生活費が15万円のAさんが、65歳で職を得て生活保護の受給要件を外れたケースで考えてみましょう。Aさんが60歳から年金の繰り上げ受給をしていた場合、60歳~64歳までの生活保護費は月額10万740円、年金受給月額は4万9260円です。
対して、繰上げ受給をせずに65歳まで生活保護を受けていた場合、60歳~64歳までの生活保護費は月額15万円、65歳からの年金受給月額は6万4816円です。最低生活費の金額や収入額などによって条件は異なりますが、65歳以降の生活を考えた上で年金の繰上げ受給を検討する必要があるでしょう。
年金の繰上げ受給は無理のない範囲で慎重に判断を
生活保護費は最低生活費から年金を含む収入を差し引いた差額で、年金に上乗せして支給されるものではないため、繰上げ受給をしたからといって生活保護費と合わせた支給額が増えるわけではありません。
一方で、年金受給の開始を60歳に繰り上げると、65歳から受給を開始した場合と比較して受給額が月額24%の減額になります。「年金を受け取りながら不足分を生活保護で補填(ほてん)する」「働きながら不足分を生活保護で補填する」「年金を受け取りながら働く」など、自分にとって無理のない老後の生活をイメージし、繰上げ受給について慎重に判断する必要があるでしょう。
出典
厚生労働省 生活保護制度
厚生労働省 令和4年度の年金額改定についてお知らせします~年金額は昨年度から 0.4%の引き下げです~
日本年金機構 年金の繰上げ受給
執筆者 : FINANCIAL FIELD編集部