「学生納付特例制度」を利用すると、将来の年金額にどう影響する? 社会人になってから追納はあり?
配信日: 2022.12.27
その一方で、猶予された分を追納しない限り年金受給額が減ってしまうというデメリットもあります。
執筆者:FINANCIAL FIELD編集部(ふぁいなんしゃるふぃーるど へんしゅうぶ)
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目次
学生の国民年金保険料の納付猶予が可能になる「学生納付特例制度」
「学生納付特例制度」は、学生に限定した国民年金保険料の納付猶予を認める制度です。この制度を利用する条件は、前年の「学生本人の所得」が「128万円+扶養親族等の人数×38万円+社会保険料控除等」以下(令和3年度以降)であることです。
所得の条件はあくまで学生本人だけが対象で、家族の所得額は関係ありません。この制度を利用するメリットは、一定所得以下の学生は、年金保険料の負担をしないで済むことのほかに、納付猶予期間が「受給資格期間」として計算されることが挙げられます。
受給資格期間とは、年金保険料の「納付済み期間」、年金保険料の納付を免除もしくは猶予された「保険料免除期間」、過去の年金制度で国民年金が任意加入だった頃に未加入だったなどの「合算対象期間」を合わせた期間をいいます。年金を受け取るためには、この期間が10年以上なければなりません。
「学生納付特例制度」を利用して年金保険料の納付猶予を受けている期間は「保険料免除期間」に含まれ、年金保険料を払っていなくても受給資格期間として計算されるため、年金受給条件を満たしやすくなるのです。
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学生納付特例制度の利用期間が長いほど、年金受給額が少なくなる
保険料納付の負担を減らすことができ、将来の年金受給資格を得やすくなる学生納付特例制度ですが、デメリットもあります。学生納付特例制度を利用している期間は年金保険料を納めていないため、その分年金受給額が減ってしまうのです。
「免除制度」では、学生納付特例制度と同様、保険料の免除期間は受給資格期間として計算されるうえに、保険料の免除額に応じて免除された保険料の一部が年金額の計算に反映されますが、学生納付特例制度にはそれがありません。
このような制度上の違いから、同じ期間保険料を納めていない場合を比べると、免除制度を利用した人より学生納付特例制度を利用した人の方が、追納しない限り年金受給額が少なくなってしまいます。それならば学生納付特例制度ではなく、免除制度を利用すればいいと考える人もいるでしょう。ですが、残念ながら学生は免除制度を利用できないことになっています。
学生納付特例制度のメリットは「追納」できること
免除制度と違い、年金保険料を補填されるわけでもない学生納付特例制度を利用する意味があるのかと疑問をもつ人もいるでしょう。ですが、この制度は学生にとって有益なものです。
一般の人が使う免除制度や納付猶予制度では、保険料の納付義務者以外に、納付義務者の配偶者、免除制度の場合には世帯主も一定所得以下という条件を満たさなくてはなりません。一方、学生納付特例制度の所得条件は学生本人だけが対象なので利用しやすく、学生の保険料納付義務負担が軽減されます。
さらに、学生納付特例制度には「追納制度」というメリットがあります。追納制度とは、過去10年間の未納分保険料を後から納付することが可能になる制度です。もし、学生納付特例制度を利用せずに「滞納」のまま2年経過すると、後から保険料を納付したくてもできなくなってしまいます。
学生で年金保険料の納付が難しいと思う人は、滞納せず、学生納付特例制度を利用して追納が可能な状態にしておきましょう。将来自分で収入を得て保険料を納められるようになったら、できるだけ追納することで年金受給額を満額に近づけることができ、老後の備えになります。
今は納付できなくても、将来追納できるように学生納付特例制度を利用しよう
学生時代から自分の老後を考えるのは、遠い未来のことすぎて難しいかもしれません。ですが、予想もできない遠い未来のことだからこそ、今できることをやって備えることが大切です。
収入が少なく、自分で年金保険料を納付できない学生の方は、まず学生納付特例制度を申請しておきましょう。そして将来、自分で収入を得て年金保険料を追納することで、年金受給額を極力減らさないようにしましょう。未納分をすべて追納すれば、満額で老齢基礎年金を受給することも可能になります。
出典
日本年金機構 国民年金保険料の学生納付特例制度
日本年金機構 国民年金保険料の免除制度・納付猶予制度
日本年金機構 国民年金保険料の追納制度
執筆者 : FINANCIAL FIELD編集部
監修:高橋庸夫
ファイナンシャル・プランナー